第120話フェンリルの落とした物

 全方位から迫ってくる魔法の数々…懐かしい、機械人形に宿っていたエレメントゴーストもこんな事をしてきた気がする。


『ゴアアアアァァァァァァァァァアアアア』


 咆哮とともに崩壊の力を全身から放出させ、魔法も全てを蹴散らす。身体に負荷のダメージが掛かるが…まぁ崩壊耐性のレベルを上げるためだと思えば問題無い。


 魔法を蹴散らしたすぐ後に俺は駆け出し、フェンリルに向かって翼脚を振り下ろす。ただ、予備動作がデカいから容易に避けられる…そして避けたところで俺の翼脚を引っ掻いてくる。


 …そりゃあダメージは少ないよな。ステータス差があるのだから。

 地面に叩き付けた翼脚はそのまま地面を抉り、埋まる…だが埋まった翼脚を力任せに引き抜くついでにフェンリルに翼脚をぶち当てるとフェンリルはかなりの距離を吹っ飛んでいった。


『クゥウ………ワォォォォオオンッ!』


 そんな咆哮をフェンリルは放つと、どんどんと身体が透けていって見えなくなる。


 …透明化か。霊体化ではない、純粋な透明化だ。良い選択肢だと思う、見えなくして空中を移動すれば足跡も付かずに移動ができるし、体臭も風を操ればこちらに届かない。


 完璧な奇襲を出来ると言えよう………


 こちらが別の方法で姿を認識出来なければの話だが。


 前脚と後脚で立つ伏せ姿勢になり、自由になった翼脚で背後の上空から襲い掛かってきたフェンリルを掴み、そのまま地面へと叩き付ける。


 言っておくが既にここは怠惰の霧が立ち込めている。姿を消した程度でこちらが認識出来なくなるなんて事はない…こちらに認識されなくするにはそれこそ実体を無くさなかればいけない。

 …霊力が扱える俺にとっては霊体になったとしても丸見えなのだが。


 抵抗とばかりに翼脚を引っ掻いてくるフェンリルをしっかりと掴み、身体を半回転させながら地面に擦り付けた後に空中へと放り投げる。


 そして翼脚をしっかりと地面につけ、六本脚体制で身体を固定してからフェンリルに狙いを定める…


『すまんが…流石に頻繁に起こる環境変化はこりごりなんでな』


 溜め込んだ崩壊の力に氷属性を混ぜ、一気にブレスとして放出する。

 その崩壊ブレスの破壊力は先程空中から叩き落とすために使った崩壊ブレスとは比にならない…その証拠に反動で口の中や喉はボロボロになるし、六本脚で支えている身体もブレスを放っている間はジリジリと少しずつ後退している、


 様々な属性の壁で身を守っていたフェンリルは抵抗虚しく崩壊のブレスに飲み込まれ、消し飛んでいく。それが死生判別スキルで判明したのでブレスを終了する。


 反動によって傷ついた口内や喉を回復していると、コトンとちょうどフェンリルが消し飛んだあたりの真下にある地面の所に何かが落ちた。


『なんだこれ?』


 見た目は透明な結晶。クォーツ水晶に見た目が似ている。分かるのは膨大な崩壊の力を秘めており、その崩壊の力が全て俺の中に入れば即暴走するだろう…


 透明で見た目は綺麗だが、実態はやばい物でしかない。放っておくことすら危なそうでどうしようかと悩みながらとりあえず鑑定してみる。


【無属性崩壊結晶】

 どの属性にも染まっていない崩壊のエネルギーが集結し、結晶化した物質。

 崩壊の力を引き寄せる体質をした魔物の中で生成され、完全に形成された事で外を漂う崩壊のエネルギーに影響を与えていた。



 明らかにこれが環境変化の原因じゃないか…

 もしこれが他の生物の手に渡ればまた環境変化が起こる可能性有りだ…これ、どうするべきだろうか?




 ………流石に無視をする訳にはいかないか。


 この鑑定結果には実は続きがある。と言うか鑑定結果ではないと思うが、とりあえず続きがあるのだ。

 続きにはこう書かれている。


『*世界の理からの提案。

 無属性崩壊結晶を体内に取り込む事を推奨致します。

 現状、貴方が取り込む以外の対処法はありません』


 えぇ…?この明らかにやばそうな結晶を食えと…この、エッグイほどに崩壊の力を秘めた結晶を食えと…⁉︎


 とんでもねぇ提案をしてきやがるぜ…世界の理さんは。

 まぁ、こりゃ悩む。だってこんな危険物質を取り込むんだよ?そりゃ本来ならごめん被りたい…多分操作を手に入れた時の崩壊の力の共振ほど酷くはないだろうけど、明らかに何かが起こる可能性が大だ。


 とは言え世界の理の提案を突っぱねる事はしにくい。何せ神格者ではない俺に【判決の理『原罪』】だの、【永久魔力炉心】だのを付与してくれたあの世界の理さんだ…強くなれるスキルを与えてくれた世界の理の提案おねがいを聞かないと言うのもなんか違う…


 ………よし、決めた。


『食うか、これ』


 一旦体内にある崩壊の力を全て放出し、崩壊結晶を咥える…これを飲み込むのか、


『うん、なんとかなるだろ…なってくれて。多少の暴走程度なら耐えるから…!』


 ゴクン…と一気に体内に崩壊結晶を取り込み、来るであろう暴走に備える。


 …

 ……

 ………

 …………?


 あれ?何も起こらない…


 --------------------

 世界の理


 無属性の純粋なる崩壊エネルギーを解析中………


 解析終了致しました。


 これにより崩壊のエネルギーの解析が完了いたしました。順次スキルと耐性の生成/有効化が開始されます。


 スキル:崩壊制御術…アクティベート

 耐性:崩壊耐性…アクティベート(lv上限:lv100)

 耐性:崩壊無効…生成完了、アクティベート


 対象:ゼノ・シオンの崩壊耐性が上限を大幅に超えている事を確認、崩壊無効へと進化します。


 ———淵源種より提案を確認。

 崩壊制御術に新規スキルを統合。

 スキル名:【崩壊保持:限界突破】



 ………崩壊のエネルギーの解析に御協力ありがとうございました。

 神格化条件の達成を確にn———淵源種より拒否されました。


 世界の理よりゼノ・シオンへのメッセージを生成。

『———…貴方の神格化を心待ちにしております』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【質問のコーナー】

Q.

最初のほうに言っていた氷系統が好きな理由ってなぜですか?


A.

深層の氷などの見た目で透き通る様な青色があるじゃないですか?あの色合いが本当に好きなんですよね。

元々寒色系が好きなのもありますが、それ以上にあの透き通る様な青…氷河の青(グレシャーブルー)に魅了されたのが大きな理由ですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る