第108話越えられない壁 

 壁との衝突による衝撃のせいでポロポロと鱗が剥がれ落ちる身体を起こし、回復を施す。


 …滅茶苦茶油断してた。霊体化があるから逃げようと思えば幾らでも逃げれると思っていたが、そう言えば今対面してるリリアさんは神格者ではないと言っておきながらもリアやフィリアさん達と言った神格者と関わりがある鬼だ…霊体化に縋っていれば普通にフルボッコにされそうだと今更気付いた。


(…全力で戦えって事か)


 離れた所に立っているリリアさんの視線には「この程度か?」とでも言いたげな雰囲気が混じっている。

 なんとも手厳しい…これでも頑張って応戦してみたつもりではあったのだが。まぁ、恐らく持ってるスキルをガッツリ使ってぶつかりに来いって事だろう。


 …とりあえず現在戦ってる訓練場内部を全て覆うほどの怠惰の霧を生み出す。そして熱域支配と冷域支配を罪化させ、寛容の権能にて併用する事で気温の調整をせずに空間内を支配する。


 リリアさんも全力で来ると分かったのか、すぐに警戒体制を取る…仕掛けて来ないのはこちらに先手を譲るからだろうか?ならばじっくりと準備させてもらおうか。


 俺に周りに大量の兵器を展開してリリアさんに照準を合わせた所で待機、兵器には全て壊滅術・集を付与している。そして壊滅術・波を付与した氷魔技でほぼ前が見えないほどの大雪を出した所でリリアさんに傲慢の権能によるステータス低下を付与した所で一気に距離を詰めて取り出した大太刀で一閃する。


 大太刀が金属とぶつかった感覚がすると共に止められる…やはりこの程度は止めるらしい。詰められないように大きく後退してからリリアさんに向かって罪炎のブレスをぶつける。そしてブレスを放っているうちに兵器達を起動させてリリアさんに向かって攻撃命令を出す。


 今現在雪によって一切前が見えない状態になっている…いわゆるホワイトアウトに近い。そんな中でもリリアさんの位置を把握出来てるのは怠惰の権能による霧と空間支配のおかげだ。


 とは言え位置が把握出来ていてもどう戦えばが難しい。基本的に龍の姿だと肉弾戦か魔法で戦う事が多く、武器などは人型に比べて圧倒的に扱いづらい。そもそも最近の俺だとそもそも武器を扱うよりも自前の爪や、壊滅術を付与した技を使った方が強い事も多い。


 だが肉弾戦は恐らくリリアさんが最も得意とする戦い方であり、こちらが圧倒的に不利。そして魔法戦もとい遠距離戦をするならばこの龍の巨体はただただ的が大きくなるだけ…


(仕方ない…人型で行くか)


 龍の姿のまま戦いたかったが、利便性等を考えたら人型の方が便利だ。と言う事で龍人スタイルになり、大太刀を構えながら走り回る。


「視界を潰して空間支配で私の位置を特定してるのかぁ…確かに良い判断だね、遠距離からなら一方的に攻撃出来るし、近距離でも相手に悟られる事なく攻撃出来る…でもそれは相手が空間支配を出来ない場合に限る」


 走り回りながら罪氷を放っていると空間支配に干渉され、支配していた空間が一気に狭まる。空間支配のぶつかり合いだろうか?空間支配が出来る相手と戦った事が無かったから分からなかったが、こうなるのか…


(…きっついな、これが空間支配のぶつかり合いか?)


 支配している空間の境目で支配権が拮抗してるのを感じ取れており、これ以上空間を狭ませまいとスキルが働いている。そしてその抵抗をする為にはかなり空間支配に思考を割かねばならず、リリアさん自身への警戒が疎かになってしまう。


「うーん、支配の抵抗には流石に慣れてないか。いや、むしろこの段階で慣れてたら恐ろしいな」


 そんな言葉何響き渡ると同時にとんでもない速度の何かが飛んでくるのを感知し、避けようとするけど間に合わずに左腕が吹き飛ぶ。


 ………部位欠損をしたのは何気に初めてではないだろうか?集中武器錬成をした時を除いては。


 近付いてくるリリアさんの攻撃を大太刀で受け止めるが、片腕じゃあとても対抗出来ずにそのまま後ろへと弾き飛ばされるがその勢いを利用して滑空して空を飛ぶ。


 無くなった左腕を身体構築変化で生やして、再度両手で戦える様に…ただ、即座に腕一本を生やせる訳じゃないため、翼脚をアレンジして嫉妬の権能で無理矢理人の腕っぽく見せただけの腕だ。無いよりはマシとは思えるが…


 空間支配が出来なければこのホワイトアウトもただただ不利になるだけっぽそうなのでやめると、リリアさんの姿がハッキリと見える…大きな筒状のバズーカみたいな物を担いだリリアさんの姿が。


 その筒の内部が赤くなると同時に傲慢の権能で回避、そしてほんの数瞬後に俺が立って居た場所からちょっとズレた…俺の右腕があった部分に視認できない速度の弾が飛んでいった。


(あれで左腕を吹き飛ばされたのか…アレは流石に当たったら駄目だな)


 次のリリアさんの攻撃を警戒していると、リリアさんはニコッと笑ったあとに姿が消えると同時に背中にとんでもない衝撃が走ってそのまま地面に平伏される。


「おっけい、君の事は大体分かったから終わりにしようか。総評を出すならまだまだ実戦不足だねぇ、急速に成長したからか戦い方がまだまだ…もしかしてリア姉さんは私に鍛えさせようと…?んな面倒な…まぁ良いけども」


 そんな愚痴を言ってから首根っこを掴まれて動かされ、強制的に目を合わせられる。…薄々思ってたんだけど神格者って美形だよね。


「ねぇぜノっち、ちょっとの間私の助手をしてもらうよ?その代わり私が戦闘の仕方を教えてあげる。私は私が知らない作り方の道具を作れるアンタを助手に持てて、ゼノっちは強くなれる…お互い良い関係だと思わない?」


 そんな提案に俺は頷くしか出来なかった…だって断れないし断らせない雰囲気を醸し出してるんだもの…

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