第106話 扉の奥の鬼

『—————っ!』


俺のありったけの能力を全て注ぎ込んだ拳を堅牢な扉のぶつけた瞬間にとんでもない轟音と共に大地が揺れる。攻撃の反動で腕がミシミシと言うが、怠惰の権能で超速回復を施してるからそこまで重傷にならないだろう…ならないよね?


と言うかこの揺れは大丈夫なのだろうか…地上も揺れて地震とかになってないよね?上位種族の持ちうる力全てを叩きつけたけど…大丈夫だよな?


そんな心配をしてる間に揺れは収まっていく…攻防変換で変換した数値を戻して、叩きつけた拳を見てみる…うん、外見は問題無い。外見はね。


俺の外殻でギプスを錬成…と言うよりも腕を覆う様にして腕として機能するようにする。多分これで大丈夫、あとはスキルと権能の回復に任せよう。


「にしてもこれだけして人一人分入れるくらいしか開かないのか…なんつう硬さと重さよ」


一応若干殴った部分が凹んで入るが、結果として開いた隙間は人が1人入れる分くらい。おそらくだがここはあの機械人形のエネルギー源を五つ一斉爆発させれば開くのだろう…

それと言ってしまうとアレだが霊体化で通り抜けられる。それをしなかったのは自分の全力でどうなるか気になったわけだが…結果は片腕の損傷っと。やらない方が良かったか?


通るにしてもギリギリなので霊体化してスルッと抜けて扉の先へと進んでいく。熱域支配が扉の先に適応されてないことから分かってたが、扉の先はザ・適温。大体23度と言う人間が1番過ごしやすい気温となっている。


「…いや、なんでこの温度を維持できてるんだよ」


言っておくがここは火山の内部、しかも深層だ。並の生物なら熱で動けなくなるレベルの場所なのに何故こうも気温を維持できるか謎である。そう言う物として受け入れるしかないのは分かってはいるのだが。


「にしても明らかにあの廃都市文明と関係あるよなぁ…建築とかまさにそれだし」


周りの見た目は巨人用に作られた家と言った感じ。前世で巨人用の家を作ってくださいと言われて出てきそうな物と思えば良い。

とりあえず奥に進めば良さそうなので進んでいく。途中にある扉とかも開けてみるけど普通に生活スペースっぽい…洗面台とか風呂とかがあった。


そして辿り着くは一つの部屋…あの重厚な扉を潜った時からそばに浮いてた魔道具がこの扉の先に行けと言っている…この魔道具、あの扉と同じ素材が使われてるから壊すのは諦めたのだ…害はなさそうだし良いけども。


「…よし、行くか」


片手で扉を押すと呆気なく扉が開いて中の様子が目に入る。おそらく場所はリビング、そこにテーブルと椅子があり、椅子には巨人と思える様な女性が座っていた。


紅蓮の髪を持ち、セミロングの長さでポニーテールにしている。服装はズボンと上半身はサラシのみという大胆な姿をしており、その女性は腕を組み目を瞑っている。


そして人間とは明らかに違う六本腕をしており、額の部分からは一本のツノが生えている。その姿はいつぞやの人間界での資料を読んだ時に見た創造鬼そのもの………これがフィリアさんに並ぶ、四神の一柱…?


今までリアやフィリアさんと会っていたから分かるのだが、神格者とは何か違う気がする…圧倒的な強さは感じるが、何かが違う…なんだこれ?


「………入らないのか?アンタとは少し話をしてみたかったんだけどねぇ」

「あっ、はい…」


声に圧が…圧があるよ…フィリアさんの声は母性というか、安心感があったしリアは…よく分からん。リアの声はスッと耳に入ってく声だった…だけどこの女性の声は重たいと言うか…声に威厳みたいなのを乗せてる感じなのか?


さっさと部屋の中に入って俺のすぐ側を飛んでいた魔道具が対面の椅子を指す…座れって事らしい。座って対面してみるが…本当にデカい。3〜4メートルは確実にありそう…いや、龍型で見ればそこまでなんだろうけど龍人の姿をとってる今じゃ凄いデカく見える。子供時代に大人達が非常にデカく見えるアレ…そんな感覚だと思う。


「さてと、招かざる客…って言いたいけどリア姉から連絡来てたから招かざるってわけじゃあないんだよなぁ…とりあえずいらっしゃい」


リアが連絡を入れてたらしい。もし連絡を入れてなかったらどうなってたんだこれ。


「にしてもやるねぇ、あの人形を破壊したに飽き足らず自力で扉を開けるなんて…そこら辺の生物じゃビクともしない設計なんだけどね」


「おっと、まずは自己紹介だね。私の名前はリリア、【リリア・クレアーレ】だよ。リア姉から貰った名前さ…人間界では創造鬼って言われてるねぇ、よろしく頼むよ?罪銀龍ゼノ君?」

「あぁ、うん…よろしく」


目の前の女性…リリアさんの声から圧が抜けてく。俺を試す感じだったのだろうか?にしてもやはり創造鬼だったらしい。俺の事を知ってるのは明らかにリアやフィリアさん経由だろう。


「いやぁ、君とはずっと喋ってみたかったんだよねぇ。コレの製作者としての君にずっと話を聞きたくてね」


そう言ってリリアさんが取り出すは非常に懐かしい武器…いつぞやの帝国の老地龍の首を切り落とした大太刀だった。


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