第101話霊印が示す大火山

(ここが霊印の示してた場所か)


 霊印に従ってたどり着いた場所はおそらく火山…それもどデカい活火山だ。…噴火しても今の俺なら耐えれるよな?


 て事でまずはこの火山について情報収集する為に近くにある街へと向かう。ここの街は火山から取れる豊富な鉱石資源や魔物素材を使った武具製作が活発に行われており、人間界ではより良い武具を求める冒険者が一度は来たい場所となっている。


 一応そんな情報から武器や防具を見てみたのだが…まぁ、うん。性能はぶっちゃけ集中錬成どころか即席錬成の武器の方が良い。なにせ俺の素材を使う以上、素材の質が違い過ぎるし集中錬成してしまえばスキルが付与出来るのだ。


 そんな感じで早々に武具に興味を無くした俺はさっさと情報集めに移る。

 まずは街のすぐ近くにある活火山…名をクレアーレ大火山と言われており、最深部には神の一柱が住んでいると言われてる。実際に四神教の神の一柱である創造鬼が確認されたとの事。


 おそらく、ここで俺がやるべき事は自力で最深部まで向かって、創造鬼と呼ばれる存在に会う事だと思う。入り口は一応情報として記されていたけど、採掘許可とかが無いと入れないっぽい。


(まぁ、そんなの要らないって言うか火口から入っても良いわけだしな)


 俺は氷の龍でもあるが、炎の龍でもあるのだ。暑さなんてなんのその、俺の周りを冷やしながら進んで行っても良い。でも今回は普通の人間の知られている場所から行くつもりだ。


 入り口は人の街から少し離れた所にある山の麓、整備されているようで坂や階段があり、入り口ら辺では検問所と素材買取所みたいなのがある。


(霊体化…いや、怠惰の権能でいいか)


 怠惰の権能で自身を隠蔽し、そのまま入り口を潜っていく。ルール破りなのは許して欲しい…人の行動範囲内で素材を取るつもりはないから。


 て事でどんどんと火山の中を進んでいく。時々鉱石を採取してる人達を見かけるが、割と多種多様の人達がいる事が分かる。普通に人族が働いているし、力自慢な獣人も採掘している。


 また、家族を養うためか…それとも小遣い稼ぎか、少女が頑張って採掘している姿も見えた。姿格好的におそらく前者。そっと寛容の権能を使い、超速自己回復(体力)の効果をお裾分けしておく。


 これぐらいしか出来ないが、多少なりとも効果があると嬉しい。多分だが疲労にも効くし、もし風邪気味だったら寛容の権能の効果で少しは和らぐだろう。


 そんな事がありながらもどんどん深くへと潜っていく。奥へと潜っていくごとに人は少なくなっていき、それに反比例する様に露出する鉱石も多くなっていく。所々鉱石を鑑定しながら進んでいるが、何気に聞いた事ない物も出てくるし、ファンタジー特有の鉱石とかも出てきている。


(ちょっと気になるし…奥に行ったら少し採取してみるか?)


 人の活動範囲内の鉱石は取らないつもりだが、活動範囲外の鉱石なら取るつもり満々だ。だって魔鉄鉱とか竜涙とか気になる物があるんだもの。


(んー、魔物は爬虫類系が多め…溶岩近くまで行ったら魚類も出てきそうだな)


 砂漠は虫ばっかりだったが、火山は爬虫類が多めらしい。定番の火を吹くトカゲことサラマンダーや、地面に潜るトカゲに、鉱石を背負う亀なども居る。


 虫たちと比べてしっかりと動物って感じがして癒される…とは言え自身を隠蔽してるから魔物も人からも全無視されてるが。いつか触れ合ってみたい物だ…帰りとかに触れ合えないかな?


(おっ、着いたか…ここが人の行ける限界範囲だな)


 そんな観光気分で歩いているうちに着いたのは滅茶苦茶広い空間、その中央に赤い龍が眠っている。


 討伐難易度Sの魔物であり、通称は【赤龍】。コイツがここに居るからこそ人はこれ以上先に進むことができず、俺が先程まで通ってきた道で採掘する事となっている。


 この赤龍の強さはステータスの数値のみで言うならば俺が氷炭相愛龍だった事に近い。厳密に言うなら更に攻撃と防御に特化した物理型の龍と言う違いがあるが、まぁそんなもんだ。今の俺ならば討伐は容易い。


(…けどなぁ、コイツを討伐しても良いものかどうか)


 なんと言うか、こいつは前世のゲームで言うダンジョンボスみたいな感じがするのだ。コイツを倒せなければこの先に行っても死ぬだけだぞと言うかの様な。つまりは俺が倒して赤龍が居なくなり、採掘者がこの先へと行ってしまえばその採掘者には死が待ってると言う事だ。


(…狩らない方が良いか)


 そう判断したのは先程述べた理由もあるのだが、それ以上に赤龍を討伐したところで全くもって旨みがないのだ。

 赤龍とは言われてるが、竜種分類で言えば火龍に当たるのがこの龍だ。まぁ、つまりは俺自身の素材がこの赤龍素材の上位互換と言う事になる。


 て事で赤龍の横をそのまま通過して奥へと進んでいく。ちなみに今は人型…龍人の姿を取っているのだが、人視点で見るとやっぱり龍って巨体なんだなぁって思う。俺も竜種族である以上、同種族ではあるのだがこう言う他の龍を見ると何か自分とは違う気がする…俺が元人間だからこその感じ方なのだろうか?


 …そう言えば俺は突然変異個体なのだった。ならばちょっと違う種族っぽさを感じてもおかしく無いのかもしれない。


 そんなわりかしどうでも良い事を考えながらも火山の内部へと進んでいく。火山の内部は割と前世のゲームのダンジョンぽさを感じる。小部屋などの空間があり、それらを繋ぐ様に通路がある感じだ。馬鹿デカ規模のアリの巣感もある。


(これ…最深部に着くまでに凄い迷いそうだなぁ)


 火山のほぼ迷路と言っても差し支えない構造にオートマッピングとか、それに類似する様なスキルが欲しいと切実に思うのだった。

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