第98話一方その頃【限界防衛】
【時間軸ちょい遡り】
リアとゼノが幸せな結婚生活を謳歌している一方で現実世界は…
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フェア(レティの仲間で帝国の生き残りの御方)side
「クッ…ハァッ!」
罪銀龍が放つ攻撃をなんとか逸らし、罪銀龍の目によく映るように動き続ける。
自身に芽生えた権能である【忍耐ノ権能】、それをフルに使い…尚且つ今まで培ってきた技術全てを生かしながら罪銀龍に対して大立ち回りをしているのだ。理由は私以外には耐えられない…だからこそ、常に私だけが狙われるようにするのだ。
今の一撃だけで半分以上減った体力が即座に回復され、防御力上昇などの補助魔法もどんどん重ねがけされていく。
何故…何故私の住んでた場所を滅ぼした存在を前にこんな事をしてるのか…それは簡単な事で、急に暴れ出した罪銀龍が聖国に攻撃しようとした連合軍を壊滅させるに飽き足らず、まさかの近くにあった聖国すらも破壊しようと動き出したからだ。
そんな存在を前に勿論避難しようと思った…思ったのだが、聖国の王でもあるセナ・シンシアが直々に頭を下げてきたのだ。まぁ、何度もあった事はあるし、私の実力を知ってたからの行動だ。
とは言え相手はあの罪銀龍、私だって命は惜しいが故に最初は断ってた。でも結局今、この場に立っている。
………私は元皇族だ。民を護るのは上に立つ者の役目。それに、もし聖国が潰されればあの美味しい料理だって、可愛いお洋服だって、綺麗な装飾だって…全て帝国の様に消えてしまうのだ。
そんな事、してはいけないしさせてはいけない。まだまだレティに着せたい服が沢山あるのだ、そんな服を消し炭にさせるなんて到底許容出来ないのだ。それに私は楽しむ為に生きると誓っている…ならそんな誓いを守る為にも立ち向かうべきだ…まぁ最悪、レティさえ護れればそれで良い。
故に今、私はこの場に立っている。
前方には罪銀龍…帝国で飼っていた地龍が子供に見えるような風格を醸し出しているが、その瞳は赤く…紅く染まっており、怒りによって理性を捨てた魔物の様だ。
何処ぞの馬鹿が逆鱗を弱点と思ったのだろう。確かに弱点なのかもしてないけど帝国で龍の世話をしてた身からすれば、アレはただの怒りを引き出すためだけのスイッチだ。むしろ暴れて手に負えなくなるから弱点とは思っていない。
後方には聖女と聖職者による回復と補助魔法部隊。この人達からの支援があるからこそ私はまだ立てている。無かった恐らく罪銀龍の攻撃一発で地面のシミと化すだろう…連合軍みたいに。
そして上空、そこには何度も戦場の…敵側として相対してきたルミナが滞空しており、少しでも体力を削る為にも常に魔法を放っている。あのルミナでさえも有効打は与えられない…あの本気(無表情)モードであっても。
レティはお留守番。聖女に変わって住民の避難誘導をしている。セレスの街と言う危険な森に隣接してた場所に住んでただけあって避難誘導の手際は素晴らしい。それに、あの子が持ってる権能も戦闘よりもああ言う人助けに向いてるのだ。
………あと、こんなにも危険な場所にレティを連れてきたくない。
それと聖国軍は来ていない。来ても邪魔なだけだ。
私達でも立つのがやっとなこの戦場、私達以下の戦力が幾ら居ようとも無駄だ。
ガギャ…ガガガガガ
迫り来る爪をなんとか自分の身体すら隠れる程の大盾で防ぐ…衝撃で数十メートルほど下がった。権能を使ってこれだなんてとんでもない…あの地龍の攻撃なら数メートル程度で抑えれたってのに。
反動で痺れて言う事が聞かなくなった身体に即座に回復魔法がかかり、動けるようになったので大盾を構え直す。この戦略は後方の魔力が切れた途端に全てが終わる…いくら権能があるとは言え、私じゃギリ一発耐えれない。
「…修練不足、なのかねっ!」
罪銀龍が口を開き、喉奥から全てを凍らす様なブレスを吐き出す。一応大盾で防いではいるが、全てが防げるわけでもなく身体の節々が凍っていく…が、再生の魔法で即座に回復がされる。
…忍耐の権能で強烈な痛覚が切れてるとはいえ、精神的にキツイ。いつまで続ければ良いのだろうか。
どれほど時間が経った?何分?何十分?分からないが、常に守り続けている。おそらく通常状態の罪銀龍相手じゃ秒も持たない…今の怒りによって単純な事しかしてないからこそ守れている。
単純な攻撃を防ぐだけでこの労力ってのはいささか信じたくないけどね。
なんとか耐えていたが、それも終わりを迎えた。
…補助魔法が切れたのだ。後方をチラッと見れば聖職者達が魔力切れで全員へばっている。立っているのは聖女だけ…流石は聖女の魂を持つ今代の正真正銘の聖女ちゃんだ。
少しでも時間を稼ぐために私のスキルをフルで使い、罪銀龍の爪撃を受ける…が、大盾は壊れて私は後方の…聖職者のいる方へと飛ばされる。
「あっはは…補助魔法って偉大だなぁ」
「何を言ってるんですかっ!早く治療を!」
「無駄だよ、セナさん。回復して動けるようになっても逃げれないし、盾無しの生身で攻撃を受ければそれだけで死んじゃう。回復する意味なんてないよ」
ドスン…ドスン…と、こちらに歩いてくる罪銀龍。種族の違う私ですらその顔には怒りの感情が写っている。激怒も激怒…大激怒だ。
なんとか時間を稼げたかなぁ…そう思いながら罪銀龍を見据える。レティから聞いた時は驚いた、この龍が普段は温厚なんだとか…この龍がセレスティアで起きたスタンピードを終わらせたとか。
良い存在らしいけど、私にとっては帝国を滅ぼした張本人(龍)だ。あそこで死んでた命なのだ、別に惜しくない…と言いたいけどやっぱり惜しいかも。
はぁ…帝国はこの罪銀龍に滅ぼされて、最後の皇族でもある私も罪銀龍に殺される。
…ねぇ、ルミナ。言った通りでしょう?敵対したら終わりだって。
生を諦めてボーッとしている時、私たちのいる場所に影がさした。
割と大きく展開してた私達全員が入る程の影…そんな相当大きいであろう物体が空から落ちてきて、私達と罪銀龍の間に降り立つ。
そして、私達は神話の存在を目にするのだった。
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