第89話 レッツ観光っ!

「にしても随分とまた姿変わりましたね…雰囲気と輪郭が似てたから良かったですけどそれすらも変わってたら気付かないところでしたよ」

「…ねぇ、レティ?この人と知り合いなの…?」

「はいっ!この方はゼノさんっ!私がセレスの街に住んでた時に知り合った方ですね」

「そう、セレスの街なら…私の知らない実力者が居てもおかしくないのかしら…?いや、にしてもこの雰囲気はまるで白聖を前にしたかの様な…」


「レティがしてくれたが一応自己紹介を…俺はゼノ、ちょっと特殊な出自なだけの龍人と思ってもらって良い。レティにはセレスの街でちょっとお世話になった間柄だ」


 そう説明した所で警戒してた二人はある程度警戒を解き、俺とレティに近いてくる。


「私はフェア、訳あって…と言うかレティに助けられてから一緒にレリアとパーティを組んでる。よろしくね」

「私はルミナ…一応レティの魔法の師匠をしてるわ。それと私情で罪銀龍を追ってるわ…よろしく」

「おぅ、よろしく」


 そう挨拶を済ませてから、流れに身を任せてたら俺も一緒の馬車に乗る事になった。一応行き先は同じ聖国だし良いのだが…馬が怯えてたせいで気配を消すことになってしまった。


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「へぇ、セレスティア森林のスランピードが起きるちょっと前くらいに知り合ったんだ」

「はい。街の外でゼノさんが一人で寝てたものでして…気になって声を掛けたんです」

「一人でって…そんな自殺行為みたいな事をしてたのね。いや、ゼノさんなら大丈夫なのかしら?」


 実際あの時は別に問題はなかった。あの時の進化具合であってもそこら辺をうろついているゴブリンは瞬殺出来たのだ。


「一応何とかは出来たが…実はあんまりセレスの町の周辺を知らなかったもんだから声を掛けられたことでレティに助けられたのは変わらい事実なんだ」

「知らない場所で…?もしかして訳アリだったりするの?」

「んー、まぁそれは秘密かな」


 流石に言えない…自分が龍だってことは言えない。なにせすぐそばには実際に対面したルミナが居るのだ…下手したら敵対する可能性すらある。

 それに罪銀龍ってのももしかした俺かもしれないのだ、いつぞやに出会った大罪教の法皇とか言ってた女性がそれっぽいことを喋ってた気がしなくもないのだ。


「あっ、もうそろそろクリム聖国に着くらしいですね。ゼノさんはこれからどうします?何かやる事があってここに?」

「いや、此処には観光がてらに来たからね。元々適当に回るつもりだったからここら辺で馬車を降りるかな…ありがとうな、馬車に乗せてくれて」

「いえいえ、また会ったらお話ししましょうね〜」


 そうしてちょっとの間だけ雑談してレティと別れる。元々ただの偶然だったし、そこまで深く関わるつもりもなかった…それに、レティにも良き仲間が出来たらしいし。


 にしてもやはりルミナは生きていたか…正直しっかりと殺せた感覚はあったけど、生きてるかなぁとは思っていた。おそらくなんらかの方法で緊急避難的なのをしたのだろうか。


「まっ、そんな事考えても仕方がないか…と言うかなんか銀猫亭に久しぶりに寄りたくなってきたな」


 出来れば年月が過ぎる感覚が長命種感覚になる前にもう一度銀猫亭には行っておきたい。人を殺す事に躊躇が無くなったり、実際に龍の巣を作って見たりとどんどんと思考回路も今の身体である龍になっているのだ。


 もし長命種特有の長年を数ヶ月程度に思うようになってしまったら、もしかしたらシィやスゥがご老人になってる特に会いに行く可能性もあり得るのだ。

 それに店主のソルが寿命で…いや、考えるのを辞めておこう。できるだけ早めに銀猫亭に…と言うか王都に行く事は決定であるが。


「そんな事より観光だな!いやぁ、久しぶりに賑わいのある場所に来たなぁ」


 検問を過ぎてからクリム聖国の街へと入っていく。

 クリム聖国の街は全て七つの区画に別れており、それぞれ特色があるのだ。

 て事でまずは美味しいものが食べたい為に食事所や屋台が多く並ぶ【グラ区】へと足を運ぶ。


 グラ区へと着いたのだが、至る所から美味しそうな食事の匂いがしてくる。

 にしても思った以上に食べ物が多い…屋台定番の串焼きや、この世界にあるとは思ってなかった米料理まで置いてある。


 流石に気になったので米を白米のままで購入し、串焼き肉と一緒に食べる。


「あぁ、懐かしいな米…久しく、本当に久しく食べてなかった味だ」


 念願の龍に慣れたとは言えど、やはり少しは前世が恋しくなると言う物だ。そう言えば前世の名前、なんだっただろうか…名前に氷が付いてた記憶があるんだが。


 まぁ前世は前世だ、終わった世界の話をしても仕方があるまい。

 もし前世の地球に帰れたとしても龍なんて未確認生命体は下手したら駆除対象になるだろう。もし人型になっても戸籍が無い。


 ………米一つで随分と前世について考えてしまった。恐ろしきかな、日本人の定番主食。今度ソウルフードの再現がてらにおにぎりを作ってみるのも良いかもしれない。


 おっと?あそこの店には正にマンガ肉その物があるじゃないか!あれを綺麗に焼けたら「上手に焼けました〜」って言えそうな気がする。

 即座に生肉のまま買って火属性魔法を使ってこんがりと焼いて仕上げる。


 そしてそのまま齧り付くっ!うむ、やはり美味い。龍型の時は基本生食、焼けたものは大体火属性魔法で焦げたものばかりなのだ。やはり肉は適度に焼いてこそだと思う。ミディアム?レア?ウェルダン?ごめん、ちょっとそこら辺は詳しく無い。


 そんな感じで久しぶりの人の街を楽しんでいく。

 珍しい龍人の姿を取ってるからよく目を向けられるが、別にどうでも良い。もはや人の目を気にする精神力をしてないのだから…

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