第87話エルフちゃんのお話:順調な冒険、次の目的地

 レティシアside


「ウォーターショットっ!」


 私の放った水の球がオークの頭を貫く…


「…いい感じじゃない?」

「そうね、もう少しアレンジできたら最高だけど充分上出来じゃないかしら」

「もっとしっかり褒めてあげなよ、貴女の弟子でしょうが」

「そうは言われても…これが私の性格だし」


 私を守る様に立つフェアちゃんともう一人の右手を義手にした女性…実はフェアちゃんと話し合った結果、もう一人ほど仲間が欲しいと言う時に銀猫亭で出会った修行中と言う美しい女性だ。


 なんとなく何処かで見た気もしなくはないが…多分気のせいか他人の空似だと思う。

 この女性はルミナさんと言う名前で凄い魔法が上手なのだ。フェアちゃんとはどうやら既知の仲だったらしい…


 でもバッタリ銀猫亭で会った瞬間に戦闘体制に移行したから凄いびっくりした。ライバル…にしては両方とも凄い殺す気の顔をしてたし、以前はどう言う関係だったのだろうか?


 落ち着いてルミナさんとフェアちゃんが二人っきりで話し合った結果、私達のパーティーに入る事になったのだ。そのついでにフェアちゃんの提案で私の魔法を見てもらう事になったのだ。


 ルミナさんの出す魔法の炎は蒼くて美しいし凄い火力で……こんな凄い魔法を使える人に教えて貰えるのは非常に嬉しいけど、私に何か返せるだろうか…?ゼノさんの鱗はゼノさんからの貰い物だからなんとなく渡すのは気が引けるし…


「そうね…コントロールもしっかり出来てるし、威力も申し分ない。もう次のステップに行っても良いかもしれないわね」

「はいっ!ありがとうございます」

「うん、良い返事ね」


「ねぇ、もうそろそろ街に戻らない?依頼もさっきの一体で終わった所だし」


 今回受けた依頼はオークの討伐。私が倒したオーク以外にも周りにはオークの死体が散らばっている。

 その大半は焼かれて灰になってたり、顔がめり込んだりしているが。


「そうね…もうそろそろ帰りましょうか。あっ、それと帰ってからちょっと話があるわ。ちょっとある情報を掴んでどうしてもある場所に行ってみたくてね…」

「ある場所?貴女が仕事以外で国を出ようとするなんて珍しいね」

「ちょっとね…どうしても再度挑みたい相手が私には居て、それ関連よ」

「あぁ、あの…知らないわよ?滅んでも」


 義手を見つめながら言うルミナさんを見ながら挑みたい相手?と思う。ルミナさんほど凄い人が負けた相手なのかもしれない…どんな人なんだろうか?


 そんな雰囲気で街へと戻り、銀猫亭に戻ってスゥちゃんとシィちゃんに出迎えてもらってから銀猫亭の部屋にて私達はルミナさんの提案を聞くのだった。


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「…クリム聖国?」

「それって確か聖女がいる国だよね、どうしてそこに行きたいの?」

「何故かクリム聖国で騒がれてるのよ、罪銀龍って存在が」


 罪銀龍?聖銀龍じゃなくて罪銀龍?聞いた事無いけどどんな存在なのだろうか…聖銀龍の対になる存在なのかな?


「罪銀龍…今はそう呼ばれてるんだ。それで、罪銀龍について調べたいからこのパーティを抜けたいって話?」

「そう言う事よ。抜けるのは申し訳ないけど、どうしても気になってね」


 クリム聖国…聖女様が統治してる国であり、神聖な国って聞いた事がある。王国や帝国ほど大きくは無いけど、中堅国ぐらいの国力は持ってるって聞いた事がある。


 にしてもどうせなら私達も一緒に行けば良いんじゃ?


「あの、別にフェアちゃんが良ければクリム聖国に付いていっても良いですよ?」

「んー…そっか、別に私も王国に居続ける気もそこまで無いしなぁ…よし、ルミナ!私達も付いてくよ!」


「いやでも、下手したら罪銀龍と敵対するかもしれないわよ?」

「そうなったらそうなったらよ、敵対しちゃったらどうしようもないけどね」

「そもそも罪銀龍って言う存在を知らないので…だから私は好奇心に任せますっ!」


 どんな国なんだろうか、クリム聖国…それに罪銀龍って存在もちょっと気になる。龍ならゼノさんなんだけど…ゼノさんより凄い存在なのかな?


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 そんな感じで今後行く場所が決まった日から数日後、私達はクリム聖国行きの馬車に乗って聖国へと向かっている。


「フェアちゃん、元気無いけど大丈夫です?」

「ん?あぁいや、実はこの道って元々私が住んでた場所に行く道でもあってね…ほら、あの消えちゃった私の故郷」


 フェアちゃんから凄い悲しげな雰囲気が伝わってくる。そっか、この道がフェアちゃんの故郷に…


 同じ事で良いのか分からないけど、私はフェアちゃんを抱きしめて、ゆっくりと優しく撫でる。

 同じパーティーの、それもすごく親しくなった女の子…フィアちゃんにはあんまり悲しい顔をしてほしくないのだ。


 死者への想いが大切とか言うかもしれないけど、やっぱりフェアちゃんには笑顔と元気が会うのだ。



 馬車の中は沈黙に包まれている。私はフェアちゃんを抱きしめて撫でており、ルミナさんは目を瞑って沈黙を貫いている。


 ルミナさんはフェアちゃんの故郷の話となると決まって無言になる…やはり何か関係あるのかも?


 そんな事がありながらも魔物を討伐したりしながら何日もかけてクリム聖国へと進んでいく。

 クリム聖国でどんな出会いが待ってるか…楽しみだな〜。

 あと罪銀龍ってどんな存在なんだろう?

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