第81話ステータスの暴力ぅ…

 罪氷が老地龍に当たる…と即座に植物の蔦がこちらに飛んできたので避ける。

 追撃は無い…そして移動してみたが老地龍は罪氷の飛んできた方をジッと見ている。


(霊体の感知は出来ないのか?ならずっと霊力で炙ってれば倒せれるか?)


 いや、恐らく俺の魔力が持たないだろう。霊体化と攻撃に使う霊力、それと魔法を合わせるとしたら多分だがこの老地龍の未練値の半分を削ったくらいで魔力が枯渇するだろう。そもそも霊力耐性もあるから思った以上に削れない可能性が高い。


 そしてステータス的にほぼ確実に物理は効かないだろう…と言うか集中錬成で作った武器ですら通るか怪しいくらいだ。


 とりあえずは魔力を温存しながら倒す算段を立てるためにも実体化して滞空し続ける。

 地面に降りるのは愚策だと思う。なにせ地面は相手の領域なのは分かりきってるのだから。


 実体化してほんの数瞬後、地面から礫が飛んできて植物のツタが一斉に襲い掛かってくる。

 流石に実体ならばしっかりと認識して襲ってくるらしい。礫は装甲と自前の外殻で防ぎ、植物は先ほどと同じ様に焼き払う。


 さてと…色々検証して行こうじゃないか。


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 迫り来る瘴気の塊を霊体化で避けて、霊化攻撃を与える。

 他にも色々と攻撃して試しており、この攻撃であらかたどれくらい攻撃が通るかが分かった。


 まずは物理系、こちらはほぼ確実に通らない。なにせ相手が硬すぎる…攻撃しても未練値がギリギリ1削れるかぐらいが妥当なレベルだ。下手したらノーダメージかもしれない。


 次に魔法系、こちらはまぁまぁダメージが通る…やはり生前と同じ様に魔法抵抗が低めなのが幸いだった。ただ、強いて言うならステータス差がありすぎて1番効きそうな魔法でも若干通る程度なのだ。


 次に罪化、まずアンデッドは未練のみで動いてる様な物だ…罪感情の植え付けは無理だった。罪化した攻撃も魔法ならある程度通る…物理はほぼほぼ意味無かったが。やはり大罪抵抗を持ってるせいでこちらも通りが悪い。


 そして最後に霊化…これが意外なことに一番通らなかった。原因は老地龍が持つ霊力耐性のせいだ。

 そもそも俺自身が黄泉ノ龍になってからかなり日が浅いこともあって霊力のレベルが低いのだ…だからこそ耐性のせいで思った以上に削れない。

 そして霊力だから魔力消費も酷い…もしかしたら物理よりも相性が悪いのが霊力なのかもしれない。


(こりゃ相当長期戦になりそうだな…)


 ひたすらに迫り来る植物のツタと地属性の魔法と瘴気の塊を避けたり防いだりしながら罪氷や罪炎を放ち続ける。正直コイツとは魔法以外では戦えないのだ…集中錬成武器ならば魔法スキルを込めてるから当たるかもしれないが、あの硬さの前では多分先に武器の方が壊れてしまう。


(動きが単調で鈍い癖にひたすらに硬い…鉄壁のタンクだな)


 もしこれにヒーラーが居れば絶望的だっただろう…こんな不動要塞の名がつきそうなまでの硬さには辟易とする。


 そんな戦いをひたすらに続ける。下手したら日を何度も跨ぐかもしれないほどの時間を使ったかもしれない…その長い時間を使って遂に未練地を1000切らせた時に老地龍は新たな動きをし始めた。


『グオオオオォォォォォォォォォ!!!』


 そんな咆哮と共に大地から石レンガで出来たどデカい柱が乱立していく…その柱は俺の飛んでる高度より上まで伸びている。おそらく相手のスキルの要塞化だろう…やったのは地形の要塞化、意図的に要塞を…柱を生み出して遮蔽を作ったのだろう。


 そんな事をし始めた老地龍を警戒していると、老地龍の様子が急変し始める。

 老地龍の防御力の象徴である外殻に無数のヒビが入り、所々外殻がポロポロと剥がれ落ちてその内側にある肉が見え始めた。


 そしてそのヒビから淡い赤色の光が漏れ出る…そして奴の瞳が赤くなったと同時にとんでもない大咆哮が老地龍から発せられるのであった。


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『————————っ!!!!!!!』


 耳が壊れそうになるほどの大咆哮が墓地に響き渡る。本当に耳が壊れそうだったため、即座に怠惰の権能で聴覚を遮断しているのだが…それでも今、俺は動けないでいる。


 原因はいまだに続くこの大咆哮だ。音とは空気の振動なのだ、故にその振動に当てられて上手く飛べずに、今俺は地面に伏している。

 しかも咆哮のせいで地震が起きたみたいにもなっている。


 咆哮の被害はそれだけに留まらず、大咆哮の元凶である老地龍の周りの大地はひび割れており、更には老地龍自身が生み出した石レンガの柱でさえも老地龍の近くにあったやつは倒壊している。


 あの老地龍がやってるのは、例えるならば中身をコンクリートで埋めた高層ビルを大声だけで倒壊させてる様な物だ。…アレが本当に落ちこぼれ龍とか出来損ないとか言われてた存在なのだろうか。


 とまぁ、そんな事はどうでも良くて今は現状把握に徹する。今の俺は動けないだけで実質ノーダメージなのだ。老地龍は咆哮をし続けており、攻撃はこちらに飛んでこない…霊化すれば良いかもと思うだろうが、正直そこまでメリットはないと思う…攻撃を放っても結局振動で魔法が崩れるだけだろうし。


 という事で現状把握だ。

 まず俺は動けない。大咆哮による振動によってまともに飛べず、また大地も地震が如く揺れていて歩けない。


 次にあの様子が急変した老地龍…恐らくあれは老地龍が持つスキルである【アースランページ】。鑑定してみたら防御力と魔法抵抗をとんでもなく低下させ、物理と魔法耐性が無くなる代わりに、低下した分の数値を全て攻撃力に変換し、常に攻撃力バフが乗ると言う感じのスキルだった。


 つまり今の老地龍の攻撃を一発でもくらったらおそらくお陀仏になる…と言う事だ。とんでもない諸刃の剣、でも老地龍にとっては起死回生の一手でもある。…アンデッドだからそこまで考えてないかもだが。


 そして、このアースランページをあいつが使ってる時ならば集中錬成武器がおそらく非常に通る…だからこそ恐らく、これからやるべきなのはこの大咆哮が収まったあとに猛攻を仕掛けてくるであろうあの老地龍に一太刀入れる事…恐らくそれで未練値は全損する。


 やる事がはっきりした所で、ようやく大咆哮が収まる…そしてその数瞬後、俺の立ってる場所にどデカいクレーターが出来るのであった。

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