第78話第二フェーズ

 …うん、生きてる。


 まさかここまで大規模な爆発が起きるとは思わなかった。

 起きても砲撃の倍程度だと思っていたがそれを遥かに超える爆発が起きたのだ。

 例えるならビル一棟を解体するぐらいに爆発だと思っていたら核兵器レベルの爆発が来たって感じだ。


 ちなみになんとか罪氷と装甲で耐えているうちに霊体化が間に合った。もしこれが魔法由来の爆発か、霊体化が無かった場合はタダじゃ済まなかっただろう。


 そんな大爆発が何故起きたのかって話だが、それは簡単、機械人形の核であるエネルギー源を暴走させたからだ。


 実は格闘戦をしながら死式鑑定と機微技術を罪化させ、寛容の権能にて統合させた能力を使って機械人形の構造を調べていたのだ。

 ただ、これには自分の手で触れる必要があった為に武器を使わずに戦っていた。


 そしてある程度構造を把握した所であの胸元の小型砲台に手を突っ込み、エネルギー源を機微技術で暴走させたと言う事だ。

 小型砲台に手を突っ込んだのはそこが1番エネルギー源に近かったからである。


「さてと…やっぱりお前は倒せてないよな」


 飛んできた水の魔法を罪氷で防ぐ。水が飛んできたのは完全に壊れた機械人形の真上…そう、それは憑依が解かれたエレメントゴーストであった。

 機械人形は壊せても、霊体であるエレメントゴーストはダメージが無なのではと思っていたが案の定らしい。憑依してる身体と体力共有してれば楽だったんだけどな…


 機械人形の爆発を俺が霊体化で凌いだ様に、霊体であるエレメントゴーストも爆発のダメージをくらっていない。つまりはコイツとは全く体力が削れてない状態で戦わないといけないのだ。


 憑依が解かれて明らかになったエレメントゴーストの見た目は半透明のローブだ。中身が無く、半透明の黄色ローブだけが浮いてる感じだ。


 霊体相手に実体で戦うのはかなり戦いづらい。故に自分の霊体化する…するとエレメントゴーストが全力で魔法を放ってくる。


(初っ端から全力な事でっ!)


 地面から土の杭が飛び出し、正面から炎が迫り来て、左右からは水の渦が突っ込んでくる。背後には無数の氷の礫が渦巻いて近づいている。

 更には天井からは風の刃が飛んでくる…鑑定で見た全属性魔法を全力で使って戦うのがエレメントゴースト本体の戦い方らしい。


 即座に背後の氷の礫に突っ込んで迫り来る魔法の数々から距離を取り、相手を見据える。

 自分の得意属性が氷の為、ダメージはほぼない…が、炎と氷以外の魔法でどれだけ食らうか分からないのだ。


 土を触手の様にしてこちらの飛ばしてくるのでそれらを罪氷で抑え付け、エレメントゴーストに向かって罪氷炎を放つ。

 出来るだけ広範囲に広がる様に放った為にしっかりと当たったらしい。


 一応水の魔法で防ごうとしたらしいが、水を凍らせてそのままエレメントゴーストに直撃している。さすがは罪化した魔法、普通の魔法では防げないらしい。


(やっぱりまぁまぁ知能がある事で…)


 防げないと分かったからか的を絞らせないとばかりに動き回りながら魔法を放ってくる。

 だがその動きも無駄とばかりに背後へと傲慢の権能で移動し、そのまま罪氷を叩き込む。


(ダメージは…多少は削れるって感じか?やっぱり霊には霊化攻撃かなぁ)


 罪化と言えど、やっぱりダメージ効率はあんまりよろしくない…霊体相手だからこそ肉体に対するダメージが無くて弱りづらいのだろうか。


 水の蛇を出してこちらを襲わせ、後方から火球を大量に放ってくるエレメントゴーストに向けて霊力をそのまま攻撃として飛ばす。

 見た目で言えば透明な攻撃…少しだけ空間が揺らぐ様な見た目の攻撃が飛んでいく。


(やっぱり避けるよね…確実に当てないとな)


 様々な属性の魔法を全て罪化させた魔法で吹き飛ばし、エレメントゴーストへと近付いていく。

 勿論エレメントゴーストは逃げながら魔法を放ってくるので俺は魔法を放ちながら追いかける。


 物騒な追いかけっこをしながらじっくりと霊化攻撃を当てる隙を探す。

 ついでに展開するのを忘れてたので罪氷弾を放つ機銃も展開してエレメントゴーストを撃つようにする。


 流石にこの弾幕は避けきれない様で、着々とダメージを与えていっている。そしてそれを続けて数分ほど…遂に隙が見えたために霊化攻撃を当てる。


(⁉︎、霊化攻撃って霊体相手にノックバックを起こせるのか…!)


 霊化攻撃が当たる事でエレメントゴーストはさながら殴られた時の衝撃でのけぞるみたいに行動阻害がされた為、その隙を逃さずに霊化攻撃を放ち続ける。


 罪氷でもダメージは通っていたが、当たってもすり抜けるしピクリとも反応しないかったのだ…さながら効いてないとでも言う様にだ。


 だが霊化攻撃で怯んだのならばそこにひたすらに攻撃を続けるのみだ。

 抵抗とばかりに様々な属性が俺に降りかかってくるが関係無い。全て罪氷と装甲で防ぎ、ひたすらに霊化攻撃を放ち続ける。


 大体自分の魔力の2/3ほど減った頃だろうか?死生判別のスキルで生命反応が無くなったことが分かった。


 飛んでくる魔法も無くなったため、実体化して装甲も罪氷を撤去するとエレメントゴーストの死体(霊体だが)が現れた。


 …生きてる時と同じ姿で。


「これ…死んでるのか?滅茶苦茶生きてる様に見えるんだが」


 先ほどまで威勢よく全力で魔法を放ってた時と全く姿が変わらない。いや、若干薄くなってるだろうか?

 なるほど、こりゃ死生判別なんてスキルがあるわけだ…霊体相手じゃ戦闘後に死んでるか分からないレベルで見分けがつかない。


「うーん…倒したって事で良いんだよな?」


 やはりイマイチ倒した実感が湧かない…ただ、目の前のエレメントゴーストは一切動いていないし死んだって事で良いのだろう。


 エレメントゴーストから目を離し、部屋のとある一角を見る。


「次はここだよな…しかも不浄の魔力が若干漏れてるし」


 そこには一つの小部屋があり、部屋の中には台座とそこに飾られた魔道具。そして魔法陣らしき物があるのであった。


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