第69話 エルフちゃんのお話:お仲間が出来ました!

レティ/レティシアside


ゆっくりとドアに近づいてきて扉が開かれる…そして姿を表したのは大体16〜18歳くらいの目に涙を浮かべていた女性だった。


金髪のミディアムストレートヘアーで琥珀色の目をしていてかなりスレンダーな体型…目に涙を浮かべて凄く辛そうな表情をしてるけどそれでも何処か気品を感じる様な子が出てきた。


「…貴女は誰?」

「あっ、隣の部屋に止まってるレティです。ちょっと泣いてるのが気になっちゃいまして」

「あぁ、聞こえてたんだ…ごめんね、こんな夜中にうるさかったよね」


この人はかなりナイーブになっちゃってるっぽい。表情からも、雰囲気からもとても悲哀を感じるのにそれを我慢して迷惑にならないようにしようとしてる…やっぱり寄り添ってあげたい。


「あの、私で良ければ話を聞きましょうか?」

「それは…人に聞いてもらってもどうにかなる問題じゃないの、無理矢理にでも踏ん切りを付けなきゃいけないし」

「それでもです、悲しい時はやっぱり温もりが大事ですから!えっと、お邪魔じゃなければお部屋に入っても良いですか?」

「貴女が悪い人じゃ無いってのはなんとなく分かるけど初対面の人を部屋に入れるのは…それに貴女に聞いてもらう理由が無——ムグッ!」

「理由なんて無くて良いんです…私がこうしたいからするだけなので」


このまま言ってても埒があかなさそうだったので目の前の女性を思いっきり抱きしめる。ちょっと体格差があってかなり前屈みにさせちゃってるけどそれでもお構いなしに胸で女性の頭を抱く。


女性を抱きしめながらゆっくりと頭を撫でる。よく悲しい時にお母さんにしてもらった様に、優しく安心感を伝えるように…


「あぁ、安心する…それに涙が溢れてきちゃう」

「良いんですよ、存分に泣いて…これは私がやりたくてやってる事ですから、存分に胸の中で泣いちゃってください」

「うぅ…グスッ…」


ちょっと他の宿泊客の迷惑になる事も考えて私に部屋の中へと女性を誘導して優しく撫で続ける。

悲しい時は我慢せずにちゃんと涙を流すのは大事なのだ、しっかりと涙を流した方が気分もスッキリするし。


それから女性が泣き止むまでずっと撫で続ける。時々背中をトントンとしたり、声を柔らかくして気分を落ち着かせるように声を掛ける。


そして女性が泣き止んで、私は女性と対面でお話をする事となった。


「ごめんね、自己紹介もせずにずっと胸を借りちゃって…おかげでかなり心が落ち着いたわ」

「いえいえ、私がやりたくてやっただけですから。悲しい雰囲気を凄い感じちゃって見逃せなかっただけですし」

「とんだお人よしね、貴女…じゃあ遅くなったけど自己紹介、私はフェア…今はもうただのフェアだよ」

「はい!フェアさんですね。私はレティって言います」


自己紹介をしたは良いが、何を話せば良いか迷う。

なにせ泣いてた理由を聞こうにも悲しい記憶を掘り返すと思ってそう聞けそうに無いのだ。

でもお互いの話題なんて泣いてた理由に関してぐらいだしなぁ、なんて思ってると、


「もうどうしようもない話なんだけど、聞いてくれる?」


と言われたので聞く姿勢に入るとゆっくりとフェアさんは自身に起きた事を話し始める。



その話は途轍もなく重く、何故あんなにも悲しさや消失感に満ちた雰囲気を出してたのかが分かった。


元々住んでた場所が消えてなくなってしまった事、

住んでた場所が消えると同時に仲の良かった人達がみんな消えてしまった事、

もう帰る場所すら無い事、

これからは1人で生きていくしかないと思ってる事などなど…


そんな話を聞いてどうせならと提案してみる。


「あの、過去の事については私はどうしようも出来ませんし、泣きたい時に胸を貸すぐらいしか出来ませんけど…でも1人で生きるのが辛いなら私と一緒に冒険者やりませんか?」

「元々冒険者をするつもりだったし、レティさんがすごく良い人なのは分かるから良いんだけど…なんでそこまでしてくれるの?」


なんでそこまでって…放っておけなかったって言うのが1番の理由なのは当然だ。一応王都に一緒にパーティを組んでくれる探しにきたからのってのもあるけど。


「放っておけなかったら、ですかね?」

「やっぱり相当なお人好しだね、レティさんは。分かった、一緒にパーティ組んじゃお!」

「あっ、一応パーティ探しに王都に来ましたから良いチャンスだな〜とか言う下心があったりするんですけど…」

「いいよそれでも。今悲しくないのはレティさんのお陰だし、それに慰めて貰った時のあの安心感は本物だし。アレは心の底から相手を想ってないと出ない安心感だからね、その程度の下心じゃマイナスにならないよ。わざわざ言わなきゃバレない事を言う所も好感が持てるしね!」


こうして王都に来て早々に一緒にパーティを組んでくれるお仲間さんが出来たのであった。


ちなみにその日はそのまま一緒のベットで寝たのだった。やっぱり喪失感とかはまだ残ってて人肌をちゃんと感じたかったらしい。



追記


後々パーティを組む上でお互いの実力の把握は大事って事で一応共有したんだけど…


フェアさん、すごく強かった。(それに忍耐の権能?ってのもあるっぽい。私の人徳の権能ってのと似た物なのかな)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき

はい、冰鴉です。


フェアちゃんの語源はフェアグニューゲン、ドイツ語で楽しみや娯楽って意味があるらしいですね。

ちなみにフェアツヴァイフルングって言葉もあるんですが…これは絶望感や自暴自棄って意味があるらしいです。

もしレティちゃんと会ってなかったら後者の意味合いを持つ子になってた可能性が…?


ついでに50万PV達成しました!今までラノベを読むくらいで、特に話の作り方を知らねぇ初心者だったのにここまで読まれるとは思ってなかったです、はい。(1000PV行けたら良いなぁ程度だったんですよ?)

今後もお気楽に気張らずに趣味感覚で執筆していきますので是非是非お楽しみくださいな。


て事で次回はゼノこと主人公視点に戻ります!

今後も時々挟むようにレティ視点がくると思いますのでよろしくお願いします。

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