第65話スリップダメージって何気にエグい思ってます

 霊印の示す場所を見てみるとどうやら北東を示しているようだ。

 分かりやすく言うならばなくなった帝国をよりちょい東寄り…と言った感じだろうか。


 確か以前見た地図上ではこの方角は砂漠だった気がするが目的地は砂漠なのだろうか?とりあえず行ってみないと分からないだろうからさっさと出発しようと思う。



 巣を形成してる罪化された氷や炎を全て解除し、巣を無くしたところで俺は霊体化して外へと出る。


 ちなみにだが霊体化は半透明になるか、透明になるかを決めれるのだが今回は透明で行こうと思う。

 霊体化は物体のすり抜けも出来るし、完全に透明にもなれるため、大罪の権能よりも圧倒的に隠密行動がしやすい。


(ただやっぱり魔力消費が凄いなぁ)


 霊体化にも霊力は使う。自身の身体に霊力を満たして霊体へと変わっているのだ。

 そしてそれに使う魔力はおおよそ自然回復する魔力と同等…今は魔力超速回復があるから良いが、無ければ霊体化している時は完全に魔力回復が停止していただろう。


 ただスキルは色々試していきたいので、霊体化したまま砂漠へと向かう。

 山岳での道中で時々人を見かけたが多分帝国民だろう…国が消えたから王国へと行くつもりだろうか?


(残党狩りは…いいや。そんな事をするよりも強くなりたい)


 もう人に関しては何も思わなくなってきている。勿論レティとかシィ・スゥにソルと、好ましい人種族が居るのは分かっているのだが、その他大勢に関しては非常にどうでも良いと言った感じだ。

 死んでも生きてもどちらでもって言った感じでつくづく人の心では無くなってきてるかなぁとは感じている。


(人の死に何も思わなくなるって言うのもなぁ…つくづく心が人ではなく龍になったって感じだな)


 そんな事を考えながら魔物相手にスキルを試していく。

 そこら辺に居たオークの背後に立って実体化すると共に噛み殺したり、霊力を使った魔法や霊化を試してみたり…


 そして使ってみてある程度分かった気がする。


(霊力での攻撃ってスリップダメージ系が多い?)


 使ってみて分かったのだが、霊力単体で使うならばスリップダメージを付与したりしていて、霊化に関しては防御力の貫通+スリップダメージと言った感じだ。

 この山岳に住まう弱い魔物達に対して瞬殺じゃ無いことに違和感を覚えていたが、どうやら毒の性質に近いらしい。


(ただ毒と違うのは耐性がなけりゃ防ぎようが無いって事か)


 毒は身体に作用する物であって、吸い込んだり傷口に入ったりしなければ効果は無いのだが、霊力は魂と言うか…ステータスの体力に直接作用している感じだ。


 つまるところ霊力に関する耐性がなければ抵抗虚しくスリップダメージを受ける事になる。

 防御力も魔法抵抗も貫通するスリップダメージ…長期戦となる場合はこれほど頼りになる火力スキルはないだろう。


 ちなみにだが霊化したスキルでの攻撃は防御力貫通するのと、敵の身体すら貫通することが分かった。

 つまるところ、霊力と言うのは身体ではなく体力その物に直接攻撃するスキルと言う事だろう。


 故に俺から見て敵の後ろとかにいる敵にも当たったりするのだ。俺の大群に対する特攻がより上がったって感じだ。やろうと思えば人類を滅ぼせそう…流石にやらないが。


(にしてものどかだなぁ〜、魔物にも人にも認識されないし…)


 今の俺は霊体化で透明化しながら空を泳ぐように霊印の示す場所へと向かっているのだが、滅茶苦茶平和なのだ。


 透明だから認識されることも無いし、もし認識されても物理はすり抜けるためあんまり関係がない。

 一応霊体は魔法ならばダメージを喰らうらしいが、ここら辺は元帝国の領域だった事もあって魔物が弱い。


 魔法が使えても所詮スキルレベルが高くて10代後半だろうから全く痛くも無い。


 ちなみに俺が飛んでいる場所はひたすらに開けた草原が広がっている。

 本来は街やら整備された道があったのかもだが例のリアの技によって全て消えている。


 そう、帝都だけでなく街ごと消えているのだ。言わば帝国と言う【国ごと】消されていた。

 やはり神格者の力量は底知れない…


 そんな事を思いながら空を泳いで行く…

 霊印の示す場所はまだまだ先の様である。


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 数日間ほど飛んでいくうちに木々がまばらとなり、空気が乾燥して行くのは感じていたが…ボーッとしているうちに砂の大地へと踏み入れていたらしい。


(砂漠だな…めっちゃ砂漠。そうとしか言えんな)


 一面砂・砂・砂。視界を遮るように砂塵が吹いている砂漠である。

 天気は快晴、空気はカラッカラ。もし人の身体ならば乾燥と暑さで地獄を見ていただろう。


(まぁ俺は炎耐性も持ってるしそもそも熱操作で温度も操れるがな…乾燥に関しては氷が溶ければ水になるしな)


 どうせなら水属性の魔法も欲しくなってくるが無い物はしょうがない。大人しく氷属性の魔法で我慢している。


 砂漠に足を踏み入れていると気付いてから俺は実体化している。どうせなら見た事の無い魔物とかと戦ってみたいし、実体化してた方がこちらに気付いて襲いかかってきてくれるかもしれないからだ。


(どんな魔物が来るのかな〜)


 砂漠特有の魔物にウキウキしていると地面から振動が伝わってくる。


 どうやら地中を移動する魔物に捕捉されたっぽい。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、冰鴉です。


 主人公に弱い魔物が突っかかってくる現象に疑問を持ってる方も居るかもですが、実は書かれてないだけで怠惰の権能で強者特有のオーラを隠したり、傲慢の権能で雰囲気を偽ったりしているのです。


 なんでそんな事をしてるのかって言うと…まぁ、人の世の中で溶け込んでいる時の名残ですね。

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