第61話神格の一撃
「私はその武器が欲しい…けど対価が必要?」
(まぁそりゃ正直今後の相棒にでもしようと思ってるし欲しいと言われてもなぁ…てか会話するなら人型にならなきゃ)
「人型にはならなくていい、私が思考を読み取るから。それで、対価を渡せばその武器を貰えたりする?」
(作ろうと思えばまた作れるから対価にもよるかな?作る時結構精神的に痛いし…)
そう考えるとリアは俺の瞳を覗き込んでくる。かなり目が輝いているがこの【罪罰】はそんなに興味深いだろうか?
「ん、対価はゼノ君が今後強くなる為の道標。ゼノ君がこれ以上強くなるのは適した環境が必須だからかなり良い条件だと思う」
(確かに山岳で過ごしても強くなりそうにないし人間の資料じゃ適した強さの場所なんて分からないな…)
そう思うと滅茶苦茶良い対価だと思える。痛い思いをして錬成した…といえど同じ物が作れる大太刀と交換で強くなる為の必須環境を教えてくれるのだ。とんでもない強さを持っているリアならばそんな場所を知ってて当然だろう。
ただがむしゃらに強くなろうとしても敵が強すぎる所に行ってしまって死ぬ可能性が出来るだけだ。
(分かった。ちなみに武器は2本とも?それとも一本?)
「出来れば2本が良い。1本でも良いけど……あと対価を渡す為に人型になって」
そう言われたので人型になってからの【断罪】も収納から取り出す。そして俺の横に【断罪】と【罪罰】を置く。
…にしてもやはり【罪罰】はかなりデカい。人型で見ると余計にデカさを感じる。
「ほい、この2本で良いか?」
「ん、大丈夫。にしても本当に興味深い…何故武器にスキルが付いてる?これは創作バカに見せなきゃ」
「創作バカ?」
「今のゼノ君には関係ないこと。多分いつか会うけど」
リアは片手で【断罪】と【罪罰】を持ち上げてスキルで収納する。
片手で持てるのは流石と言うか…一応人型の俺でも持てるとは思うが幼女体型なリアが龍型用の大太刀を片手で持つのは異常な光景にしか見えない。
「ん、これで良し。コレは後で調べるとして…対価を渡す」
リアは俺に近づいてきて俺の右手を両手で掴む。
そして両手で掴んだところから怠惰の霧と黒と白の光が漏れ出る。
(一体何を———)
『神格者が理に命ずる。ゼノ・スノウライトに付与された【霊印】の情報公開を禁ずる』
(神格者…⁉︎)
とんでもない言葉がリアから出された。【神格者】…そして【理に命ずる】と言う言葉、あの時フィリアさんが放った言葉と同じだ。
「ん、これで良い。強くなりたいならこの印が示す場所に行くと良い。ゼノ君の力量に合わせて適切な場所に案内してくれる」
「…あぁ、ありがとう。それにしてもリアさんは一体何者なんだ?」
「ん?んー、フィリアの友人とでも思っといて。それと2本くれたおまけにこの厄介ごとを片付けといてあげる」
フィリアさんの友人だったらしい…まぁとんでもない強さを持ってるのにも納得の理由に思える。ちなみに右腕には半透明のリストバンドが付いている。どうやらこれが【霊印】らしい。
にしても厄介事とは?そう思ってリアが歩いて行く方を見るととんでもない数の人間が居た。いつの間に…
数で言えば数万は確実に居そうな気がする。明らかに王国の第一師団とは数は違う。
どうやら魔法で拡声しているらしく『第一皇子の我にこそ大罪と皇位は相応しい!』とか『帝国ならば大罪の龍すら支配してみせよ!これは俺が皇位を掴み取って世界を手にする一歩だ!』
とか聞こえてくる。
「ん、人間程度が世界を取れるわけがない。馬鹿馬鹿しい………ゼノ君、よく見てて。貴方の目指すべき実力の一端を見せてあげる」
そうリアが言うとリアが前方に手を向けると同時にこう言葉を続ける。
『生はいつか死ぬもの…抗いようのない事実であり、死した魂が輪廻に帰るは自然の摂理。そんな死を司る私が命ずる、ゼノ・スノウライトに敵対する者は輪廻に帰りなさい…!』
その言葉を発し終えると同時にまだ太陽が出ていて明るかった空が黒く染まり、そして周り全てがモノクロの世界へと変化する。
その中で色彩を持つのは俺とリアのみ、そしてモノクロになってしまった人間と遠目に見える帝都は全て、世界の全てが反転するかのような感覚に一瞬だけ襲われてから数秒の内に塵となって消えてしまった。
さながらそこには元から存在していなかったかの様に…
そしてリアを基点として段々と周囲が色彩を取り戻していく。
色彩が戻っていく中で俺はほぼほぼ理解出来ずに居た。
(今のは何…?帝国が消えた?いや、言葉的に魂の輪廻に帰った?死体も残さず?それにあのモノクロの世界は…死後の世界?)
「ん、惜しい。正確には死と生の狭間……もしもっと知りたいなら強くなって私と並べる実力を身に付けてみて。フィリアと一緒に歓迎する。それと一応ゼノ君に敵対意思を持ってない奴は生かしといた」
そう言ってリアは「またいつか」と一言残して消える。
怠惰の隠蔽…ではないだろうな。それにあの死と生と輪廻の技は怠惰の技じゃないのも分かる。罪の力を感じれなかった。
「あれが…神格者…俺はあの実力に辿り着けるのか?」
恐らくただ一つだけのスキルで空間全てを変えて大量の生命を強制的に死へと向かわせ、跡形も無く消し去った。
そしてモノクロの世界になった時、何か天地が落ちた様な感覚すらあった。正に神の如き所業、周りの環境諸共変化させて死を支配して問答無用で消し去る。
「ははっ……アレが…目指すべき所…俺の到達点…?」
居なくなってから数分ぐらい経っただろうか?数十分かもしれない…今更になって身体が震え出してくる。
あのリアと言う神格者と一時とは言え自分視点では敵対関係であった事。
なんの抵抗の意味が無い理不尽な死を迎えさせるあまりにも常軌を逸した能力。
それに似た力を自身の母龍のフィリアさんも持っている事…
そして何より、
………俺が一度死んでしまったと言う事を強く感じれてしまったから。
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【異世界の魂】の称号が【黄泉帰ル魂】へと変質します。
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