第60話落ちこぼれ龍は強力な魔法が使えればただのデカい的

 老地龍について考えながら近づいて行く。まぁ称号の通りに帝国に育てられた地属性の龍なのだろう。

 そして何故出てきたのかって所なのだが……


(まぁ、明らかに殺し過ぎたよなぁ)

 立ち向かってきた殆ど人間が死んでおり、残っている人間も絶望を顔に浮かばせながら兵器によって殺されていっている。


 さながら残党狩り…と言ったところだろうか。

 流石の帝国も見て見ぬ振りは出来ずに守護龍を出したと言った感じだろうか?もしくは守護龍で俺を弱らせて隷属化させるつもりなのだろうか。


 まぁ、自分自身でも思うが国を相手にするならば俺のスキルは天敵なんて言う言葉が優しく思えるほどの特攻を持っているのだ。見た感じ守り特化なこの老地龍が犠牲になって俺を捕まえれれば帝国にとっては美味しいと言った感じだろう。


『グォォ……ガァ!』


 老地龍にある程度近付くと、急に突進してきたので左に回避するとそのまま横に通り過ぎて行く…

 一応通りすがりに翼脚で殴ってみたのだがめっちゃ硬い。

 人基準で言うならば鋼の塊を殴っている感じだ。


(んー、硬いなぁ…ステータスを見た感じ物理がめっちゃ強そうなんだよな)


 タンクですと言わんばかりのステータスで魔法にめっぽう弱いのが見て取れるステータスなので罪氷の槍を老地龍に向かって飛ばすがアースウォールにて防がれる。


(ま、そりゃそうか。にしてもついさっきまでリアが攻撃してきてたからちょっと強さの落差が…)


 リアは罪化させた目でさえほぼほぼ追えない速度で攻撃を繰り出してくるのに対してこの目の前の地龍はかなり鈍い。


 そう言う防御特化な種族って事もあるのだろうがなんと言うか、緊張感が無い。


 一応警戒せずに老地龍の次の行動を観察していると急に地面からの触手のような土の塊が飛び出して俺に向かって飛んでくる。


(地属性魔法かな?にしても迫力はあるな)


 さながら質量で押し潰す感じだろうか。だがそう簡単にくらってやるつもりは無いので罪氷炎を纏い、前方に羽ばたいて風圧を生み出すと共に罪氷炎を風圧に乗せて放つ。


 そして罪氷炎が通り過ぎた場所は凍った土のオブジェクトが出来上がった。


(さてと、正直相手の手数は相当少なそうなんだよな。龍技も植物魔法も知ってるし地属性魔法も今見た。完全に理解したわけじゃないけど攻守をひっくり返す手札みたいなのは無さそう)


 確かに落ちこぼれって言われるに相応しそうなスキル量だ。もしかしたら氷属性竜種正統進化のみをし続けていたら俺もこんなスキル欄になっていたかもしれない。


(問題は防御力だな。兵器はほぼほぼ物理だし意味が無いだろうから大罪と魔法だな)


 罪氷炎フィールドを展開してから傲慢の権能にて老地龍の前方上へと瞬間移動してからそのまま落下の勢いと共に自身の質量を利用して翼脚で老地龍の頭を上から殴る……が、


(いやこいつ全く怯まねぇ!)


 そこら辺の生物なら地面に頭部をつける様な攻撃だが微動だにしなかった。まずは怯ませて隙を作ろうと思ったがどうやら魔法無しでは到底無理らしい。


 老地龍の口が開いてその奥底から黄土色の奔流が見え隠れしている。

 多分だがブレスだろう、そりゃ目の前に格好の的が居れば撃ちたくもなるだろう。


『グオオオォォォォォ』


 老地龍が土ブレスを吐くと同時に老地龍の真上へと瞬間移動してそのまま翼脚を罪氷で覆って老地龍の背中を切り付ける。


『グアアアアァァア……ガァ?』


 ブレス中の攻撃に驚いたからか老地龍からかなり困惑を感じる。どうやら俺よりも戦闘の経験が無さそうだ、流石人に育てられた龍。


 老地龍は俺を再度認識すると地属性魔法で大量の岩石を生み出して俺に放ってくる。

 落ちこぼれって印象が最初に付いたがそれでも俺よりレベルは上だし、スキルレベルも100だ。当たるとちょっと危なそうなので装甲の壁を生み出して防ぎ、そのまま装甲を老地龍の方へと殴り飛ばす。


 まぁ物理だから効かないだろうと思ってたが案の定簡単に受け止めて俺の方へと投げ返してくる。

 飛んできた装甲は収納してお返しに罪氷の槍を投擲する。


 どうせアースウォールで防がれるのは分かっているので後方上空へと瞬間移動してそこからまた罪氷の槍を投擲。


 それからはただただ罪氷の槍を瞬間移動しながら投擲し続ける。

 傲慢の権能の性質上、老地龍より高度が上の場所にしか瞬間移動出来ないがそれでも高度が上であれば前横背後斜めの何処にでも飛べるためアースウォールで守られていないところにどんどん投擲していく。


『グォォォ…ガァァァァァアアア』


 流石に罪氷の槍を受け続けるのが辛くなったのかドーム状に地属性の壁が出来上がり、攻撃が出来なくなる。


(んー、めんどくさいなこれ。ただただ硬いだけの奴ってのは分かったがまさか魔法で立て籠もるとは…まぁいいや、さっさと終わらせよう)


 正直に言うが実はステータスを見た時からすぐに終わらせれるのは気付いていたのだ。

 人間に育てられたからか動きも鈍くて硬い事だけが取り柄と分かったのでもうさっさと終わらせようと思う。


 まぁ、その硬さがあれば大抵の人間では傷すら付けれないのだろう…ただルミナならば簡単に殺せそうな気がするが。


(さてと、【龍型罪刀・罪罰】…これでさっさと終わらせるか)


 収納から取り出した一振りは事前に作ったもう一本の武器で人型の時と同じく大太刀だ。大太刀だがその違いは圧倒的に大きさが違うと言う事だ。

 それもそのはず、この罪罰は龍の姿で使う為の大太刀なのだから。


(この大太刀ならば魔法すら切れる。それに罪氷炎の刀身になってるから魔法攻撃になる…老地龍はこの刃に耐えれるのかねぇ)


 怠惰の索敵にて老地龍の姿はハッキリと分かるため、老地龍の首目掛けて龍型大太刀こと罪罰を振り下ろす。

 ドーム型の地属性魔法は手応えを感じず、豆腐でも切るかの様に刃が入り、その中に居る老地龍も簡単に切れる。


(うん…呆気ないな…確かにコレに負けてちゃ今後生きてても普通に死ねるだろうな)


 地属性のドーム状魔法が解除されて首が一刀両断された地龍の死体が現れる。

 一応硬さはピカイチなのでスキルで回収しておく…もしかしたら良い錬成武器になるかもしれない。


 呆気ない戦いにちょっと消化不良を感じているといつの間にか俺の頭に乗っていたリアがとある要求をしてきたのだった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、冰鴉です。


 本当は老地龍戦はもっと苦戦させるつもりだったんですけど…落ちこぼれ要素と人に育てられた要素とその前のリアさんとの戦いのせいで滅茶苦茶弱くなりましたね…


 人視点から見たら滅茶苦茶強いんですけどね?この龍。それこそルミナの蒼炎魔法とか言う特殊で強力な魔法じゃないと殺せないくらいに…

 ただ主人公はそれと同様の罪氷とか罪氷の別形態的な罪氷炎とかをバカスカ使いますから相性的にも主人公有利が過ぎるんですよね。

 極め付けにゃ大太刀の【罪罰】ですよね…あの武器って防御力も魔法抵抗も大罪抵抗もある程度無いと全然防げない武器なんであの老地龍にゃ太刀打ち出来ないんですよね。性能面で言うなら人型龍刀の【断罪】も同じですね、違いは大きさと見た目くらいです。


 結論で言うならば人間に育てられて人の世しか知らない老地龍はただの硬い案山子だったと言う事ですね。来世では頑張れよ!老地龍!(あっ、老地龍の転生体とか出てきませんからね?)

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