第59話「ん、貴方はまだまだ弱い」

「それじゃ、いくよ」


 そう言うと同時にリアの姿が消える…が、左から恐怖が迫り来る感覚がしたのでそれに従って右側へと避ける。


 身体スレスレに刃が通り過ぎてそのまま抵抗が全く感じれない様に地面を切り裂く。

 とんでもない切り味だ、俺の身体なんて簡単に切断出来そうである。


「まだまだ行くよ、死なないでね」


 俺の目の前へと来て左手の爪武器を振り下ろしてくるのでそこを大太刀で防ぐ。なんとか大太刀ならば対抗出来るらしい…自身の素材とスキルてんこ盛りにした武器でなんとか対抗出来るってのはなかなかおかしく感じるが…


 防ぎはしたが間髪入れずに右手の爪武器も迫ってくるので罪氷と装甲を融合させた氷装甲を生み出して受け止める。


 流石に罪氷は容易く切れるわけでは無いし、衝撃で壊すには装甲が硬いが為に爪武器は受け止め切れた。だが装甲に深く爪武器が刺さってる為一回しか受け止めきれないから使い切りだと思う。


「んぅ、良い大罪の使い方。罪力が無ければもう死んでる」


 褒めてくれるが喜ぶ余裕なんざ全くない。リアから鋭い蹴りが放たれるのが見えたので大きく後ろへと飛ぶ…のだがあまりにも蹴りが早すぎて軽く腹を蹴られる。


 そう、軽い蹴りのはずだったがとんでもない衝撃と共に遥か後方へと飛んでいく。

 もし後ろへと飛んでいなかったら腹に穴が空いてた可能性もあり得る…


「マジで…死ねる、リアって存在の相手は普通に死ぬ…でも逃げれない…!」


 あのとんでもない速度だと逃げるなんて不可能だろう。ましてや逃げてしまえば瀕死にされて帝国の前に放り投げられるだろう。

 そんなのは嫌なので怠惰の権能で超速再生を施す。大罪の蝕みが無くなり、気怠さは付与されないため戦闘に支障は無い。


 俺が地面に着いて超速再生を施した数秒後にリアの姿が至近距離に現れたので少しでも抵抗の為に大太刀を振り下ろす。


 だがリアは片方の爪武器の、三本ある刃の2本をクロスさせて大太刀を受け止めて残ったもう一本で上の部分を塞いで大太刀を抜けない様にしたのだ。


「この武器は興味深い。貰っていい?」

「流石にそれは困るかな!」

「むぅ、まぁしょうがないか」


 動かせなくなった大太刀をスキルで収納してリアの足元から特大の氷柱を生やして貫こうとするがリアはそれを遥か上空へと飛んで回避する。


 だがまだ真上のためそのまま氷柱で貫こうとするがリアの爪に怠惰の霧が纏わりつくのが見えた時、走馬灯が見えるレベルで危機感を感じたので即座に後退する。



 そしてその判断は正しく、身体を空中で翻したリアは罪氷柱も地面も近場にある物諸共とんでもない轟音と共に爪武器で切り裂いて破壊をしたのだ。


 そしてその破壊痕はとんでもなく、氷柱は粉々になり地面は3本の大きな溝が出来ている。その溝は俺の龍型の姿で入っても余裕が出来そうな大きさだ。


「ん、楽しみすぎた。これ以上やると殺しちゃうかも」


 リアは爪武器を大剣へと戻してそれを背負う。そして右足をあげて思いっきり地面を踏み付ける…すると3本の大きな溝はどんどんと埋まっていき、たった十数秒で元の更地へとなった。


(マジで何者なんだよこの人…明らかに人類の域を超えてる…)


 俺がリアに対して恐れていても特に気にする様子も無くリアは近づいて来る。まだやるのかと大太刀を構えるが………


「ん、もういい。ある程度楽しめた。でもゼノ君はまだまだ弱い、君にはもっと———」


『グオオオオオォォォォォォォォオオオオオ』


 終わりの許可とついでに何かを言おうとしたリアだが、突如響く咆哮と共に言うのを止める。

 ちなみに咆哮は帝国側から聞こえた。


「…龍の恥晒しが出てきた。丁度いい、ゼノ君倒してみて」


 急にリアがそんな事言ってくる。にしても恥晒しとは?


「恥晒し?」

「龍に生まれながら人族ごときに育てられた龍の事。しかもアレは老齢進化でしか上位進化を果たせなかった落ちこぼれ、龍としての存在価値が無い」


 なんとも厳しい言い方だが実際そうなのだろう。遠目に見える四本足で佇む翼の無い龍を無を感じる瞳で見ている。


 俺も気になったので遠目に見える龍を鑑定してみる。


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【エルダーグランドドラゴン】

 lv308

 体力:3003/3201

 魔力:1402/1503

 攻撃力:1401

 防御力:4006

 魔法抵抗力:783


 スキル

 地属性魔法lv100

 植物魔法lv53

 龍技lv98


 耐性

 地属性耐性lv100 魔法耐性lv53 物理耐性lv89


 称号

 大地の老龍 帝国守護龍 地を護る者

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「アレが落ちこぼれ…?」

「スキルも少ないし物理耐久にしか能がない老いぼれの落ちこぼれ。戦い方を間違えなければゼノ君でも簡単に勝てるからアイツを倒してみて。拒否権は無い」


 拒否権は無いらしい。いやまぁ、今は逆らえると思っていない。だって瞬殺なんかより速く殺されるのが想像出来るからだ。命は惜しいし無謀な考えなんざ俺は持っていない。


 少なくともすぐそこに居るこのリアという存在は現状敵に回してしまえば俺は死んでしまうのが確定してしまうのだ。


「あっ、龍の姿でやって。人の姿でしか戦えないなんてそれこそ龍の恥」


 要求が増えたがそれは俺も思っていた事だ。人の姿だけで戦う龍なんてちょっと強い龍人だ。正直龍じゃないとは常々思っていた。


 黒龍の姿となり、翼を翼脚へと変化させて地龍へと向かう。


「ん、アレに負けたら私が直々に殺してあげる。あの程度に負けてちゃどうせ今後死ぬから」


 ………絶対勝たないといけなくなった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、冰鴉です。


 リアさんとの戦いはめっちゃ激しいですけど実はリアさんが怠惰の隠蔽を掛けてたので他の生物は戦ってる事すら気付いて無いのです。


 そして次回は老地龍戦!と言っても落ちこぼれ龍ですけどね。まぁ落ちこぼれと言っても【上位進化種】なのである程度は強いんですけどねぇ…

【上位進化種】って言葉はまた今後出てくるのでその時にでも詳細を書きます。


 ちなみにエルダーグランドドラゴン君は相性の関係で蒼炎魔法lv100のルミナでもなんとか殺せたりします(魔法に弱いから…)

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