第57話わぁ〜人がいっぱい。蟻みたい

(さてと、帝都近くに来たけどこれからやる事の整理をしようか)


 これからやる事は帝国との戦争…的なのだ。

 俺が龍型で姿を表して咆哮によって存在を示す。

 そして敵国から出てくる敵対者をひたすらに殲滅するのだ。


 1夜にして五パーティも来るほどだ、相当な量の敵対者が来るだろう。


(良い時間帯だ、やろうか)


 今はちょうど昼時が過ぎた頃だ。昼飯を食べ終えて戦意旺盛な奴らが多いだろう。

 自身に掛けている怠惰の隠蔽を解いて、寛容の権能を使った超広範囲…帝国全体に聞こえるレベルの大咆哮をする。


『ゴアアアアァァァァアアアア!!!!!!』


 ちなみに権能のおかげで帝国全体に聞こえるレベルになってるだけなので帝都の人達が咆哮で鼓膜が破れたりはしない。

 ただうるさいだけである。


(どれだけの人数が来るかなぁ)


 人が来るまでに怠惰の霧を生み出し、錬成の準備をする。

 流石に人数が多そうなので殲滅戦感覚でやるつもりだ。スタンピードの時と同じ感覚だ。



 それから十数分後くらいだろうか?帝都方面からゾロゾロと人が来たのだ。

 その数は…王国第一師団を軽く超える数だ。数えるの面倒だから流石に数えないが。


 まぁ納得の数ではある。実力主義の帝国の中心地の帝都なんて実力に自身を持った奴らが集まる場所だ。帝都に居る大半の人間は俺を美味しい報酬とでも思っているのだろう。そんな考えは命取りだとその身に教えてあげなければ…その結果死んでもしょうがないだろう。



 王国は民衆に全く噂も無かったし国全体で敵対って感じでは無かったし討伐に来たのも1師団のみ。流石に無関係な人も多いしその後も無干渉って感じだったので特に敵対する気は無かったが帝国は別だ。


 帝国は全面的に敵対している。今後ちょっかいを掛けられても邪魔なだけなので大きな被害を出して今後敵対させない様にするつもりだ。

 流石に帝国ごと滅ぼすつもりは無いが不穏分子なんざ処分するに限る。


 一歩進む毎に能力を展開して行く…

 一歩目、罪氷のフィールドを展開。

 二歩目、罪炎のフィールドを展開。

 三歩目、同時に傲慢による弱体化を発動。

 四歩目、同時に傲慢による能力加算を発動。


 そして五歩目と同時に俺は人間の集団へと突っ込む。

 人との距離が肉薄可能な距離となった所で身体を回転させて尻尾による攻撃を行う。


 尻尾で大勢の人が吹き飛んだので空で自由に動けない人間に向かって炎ブレスで焼き払う。

 耐性がなければすぐ死ぬだろう…悲鳴虚しく焼死体となって降り注ぐ。


 一度人間達を睥睨した後…


『ゴアアアアァァァァアアアアア!!!』

 もう一度咆哮すると同時に戦闘機や戦車、機関銃を生み出す。


 自身の翼を翼脚へと変化させると同時に兵器を起動させ、殲滅行動を開始する。


 この帝国でルミナ以上の実力者は居るのだろうか…そんな事を考えながら———。


 -------------------


 色欲の権能にて人間を同士討ちさせている事数分、特に何事も無く人数は減って行っている。


 ちなみにあんまり魔力を使う様なスキルは使っていない。もし後々強敵が出てきたら魔力は必須になるので温存しているのだ。


 故に使えるのは罪の力なので飛んでくる魔法は色欲の権能で味方化させて人間の集まりに適当に当てている。

 他にも前の方にいる人間を味方化させて争わせたり、地面の一部を爪で抉り取って人間の方にぶん投げたりしている。


 そんな事をしていると、自ずと動きの良い人間が残るのは明白で、特段動きの良い奴を見つけた。


(あの子凄いな…あんな大きな武器を持ちながら軽やかに動いてる。機銃の弾も防ぐなり避けるなりしてるし…それに立ち回りも上手い。常に止まらないように動いてる)


 人が集まれば勿論動きは阻害される。だがその子はそんなの気にしないとばかりに軽やかに、そして止まる事なく動いている。


 その子は小学生と言えそうな体型ながらも重量級武器らしき物を持ちながら巧みに扱っている。銀髪ショートの気怠げなダウナーっ子って感じだがその青色の瞳から感じる雰囲気は猛者のそれ。


 その子の周りの人間を味方化させて銀髪っ子に敵対させると即座に気付いてその場から離脱、そして俺の方へと向かってくる。


(狙われたって気付いたから俺に攻撃をしてくるか…狙われてるのに逃げ続けても意味がないって事ね)


 俺の前足にその重量級武器っぽい物を振り下ろしてくるので前足を上げて、空振りしている所に思いっきり踏み付ける。


 …感触が無い、しっかりと避けているらしい。本当に軽やかに動くものだ。


 どうやら横に回避した様で、場所で言えば俺の真下に居るので一度後ろにジャンプする。案外龍って言うのは自身の真下への攻撃手段が無かったりするのだ。


「…ん、楽しそう」


 そう言葉を告げるとジャンプして俺の首目掛けて切り掛かってくる。


 瞳には是非とも戦ってみたいと言う好奇心が見えたが俺も倒されるつもりは全く無い。

 位置を調整して噛みつこうとするが噛み付ける直前に空中で銀髪っ子が急激な方向転換をした。


(足場に空中でも作ってる…?空中を蹴っているな)


 その飛び方には覚えがある。俺が空中に装甲を出してそれを蹴って空を移動するのと同じだ。

 銀髪っ子はその小さな身体を巧みに使って俺の背中へとしがみ付く。


「ん、私が騎手。やっちゃえドラゴン」

(なんだコイツ、俺を騎獣扱いか?)


 なんともユーモア溢れてらっしゃる。だが普通に何されるか分からないので背中に炎を纏わせて強制的に降ろさせる。


「……もうすぐで服が焼けるところだった」

(そりゃ焼こうとしてたからな)


 地面に居る銀髪っ子に向かって翼脚を振り下ろすが案の定避けられる。

 避けた所に向かって氷ブレスを吐くがそれもジャンプして回避、空中にいる銀髪っ子に向かって翼脚を振るうがそれも更に上にジャンプして回避して俺の頭の上へと降り立つ。


 ………視界が銀髪っ子で占領される。にしてもこの子可愛いなぁ、ちょっと前世での性癖に刺さるのだが。

「ん?困惑してる…知能高い?なら自己紹介。私はリア、平民だから姓は無い」

(うん自己紹介どうもありがとう?)


 なんか、帝国民って感じがしないのだがこの子…

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