第55話なんかいっぱい死体が転がってる…

 洞穴改築から数週間ほど、かなり快適な野生生活を送っている。


 この世界に適応したからか、それとも龍の身体に俺の精神が定着したからか分からないが特に寂しいとか思わなくなっている。多分だが龍自体、群れない習性を持ってる事が関係してそうだとは思う。


 幼龍の頃は数週間くらい経って人恋しくなったがいつの間にか人恋しさが消え去っているのだ。

 それと龍の本能からだろうか?宿に泊まったりするよりも凄く安心するのだ。

 この安心感はフィリアさんに抱きしめられた時と似ている…流石にドキドキはしないが。


 この野生生活では普通に野生の魔物みたいな生活をしている。

 朝に起きて食料の確保やらちょっと周辺の地理把握をしたりそこら辺に居るちょっと強めの魔物(俺からしたら錬成を使えば即終わる相手)に色々とスキルの組み合わせを試したりしながら過ごして、夜が近づくと巣に戻って眠りにつく。


 そんな生活を続けているある日、真夜中に敵対検知が引っかかったのと機銃の発射音がしたので起きたのだが……


(………人間じゃん、しかも死んでる)


 氷フィールドの外縁近くにて人の死体が複数あった。

 格好的には冒険者だろうか?動きやすい防具に戦士と盾役と僧侶とシーフと魔法使いっぽいバランスの取れてそうな編成の集団の死体が転がっている。


(うーん、何処の所属だこれ。敵性検知に引っかかったんだから明らかに俺を討伐しようとしてたよな?)


 プライム王国では黒龍どころか大罪の噂すら無かったしギルドの依頼にも無かった。

 ここ数週間で変わった可能性もあるがまさか第一師団長を殺したにも関わらず冒険者に依頼なんてするだろうか?言ってしまえばルミナ・アンブラルはSランク冒険者の域なのだ。


(うーん、分からんな。処分しとくか)


 適当に死体を纏めて炎ブレスで焼き払う。

 火葬と言えば聞こえは良いが実態は焼却処分に近い。

 なんとなく気分的に死体処理をしようと思って罪化錬成にて大きめの棺を一つ作り、そこに5人の骨だけとなった死体を入れて適当に離れた場所に埋める。


 ちなみにこの世界にもアンデットは存在する。

 死体が不浄の魔力が満ちている場所に放置されているとなるらしい。


 ちなみにこの場所は氷と炎の魔力に実ているがそれ以上に罪の力の影響が強くなっていて言うならば罪化地帯となっている。


 どの伝承にも書いてなかったからの存在しないとは思うが特殊な進化をした罪化アンデッドみたいな奴じゃないとこの地ではアンデッドでは生きれないだろう…アンデッドは不浄の魔力が核となっているため罪の力で消し飛ばせるのだ。


 そんな事があるのでこの埋めた死体がアンデッドになる事はない。と言う事で5人仲良くこの山岳で眠ってもらおう。


 見た感じ野郎5人だったので男5人一緒の墓で眠ってもらう。来世でも友になれると良いね…パーティって事以外の関係性を全く知らないけども。


(ん?また敵性検知?)


 巣に戻った所でまた機銃の音と共に敵性検知が反応した。

 検知した場所に向かうと今度は3人の死体があった。


 女性1人に男性2人…編成は戦士に魔法使いにシーフだろうか?


(ちょっと申し訳ないが、所属を確認させてもらうか)


 1夜に、それも短いスパンで人が来る…しかも討伐目的は全く分からないので荷物漁りをする。

 ………死体漁りではない。ただの確認だ、確認が終わったら纏めて処分するつもりだ。


 流石に龍型だと漁るなんて器用な事は出来ないので人型となって冒険者達の荷物を確認する。


(うーん、ギルド証はランクと名前と役割ぐらいしか書かれてないんだよな…スキルや耐性なんてありふれた物ばかりだし。と言うかコイツらってBランク冒険者なのか。にしてはプライム王国では見た事無い顔だな…別の国の奴か?)


 Bランクと言うのは結構数が少ない。何せ人外の枠組みのSランクを除けば上から2番目のランクだ、そりゃ多いわけがない。


 その後も荷物を漁ってみたが特に国の所属を表す物は無かった。

 まぁそりゃ当然とも思える。冒険者は国に縛られない職業だ。どの国に行っても良いし、身分証はギルド証で出来る。


 わざわざ国の所属を表す物を持つのは貴族とかくらいだろう。


 再度炎ブレスで処分して適当に埋める。

 関係性が分からないので男女別で分けておいた。ちょっとしたお気持ちである。



 そんな感じで夜を過ごす…その夜はその後に3個の冒険者パーティの死体が転がるのであった。


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(うーん、流石にどうなってるんだ?)


 目の前には複数の死体、数はパーティ3個分。普通に死体の小山である。


 あの後流石に寝たい事もあって自身の敵性検知を切って、氷洞窟の入り口を罪氷で閉じて寝たのだが…

 朝起きて死体がもう無いか権能で探したら今目の前にあるパーティ3個分の死体が転がっていたのだ。


(Aランクも混ざっているが…なんでこんな物を持って来てるんだ?)


 3パーティのうちの一つのパーティのリーダーらしき存在が持っていた魔道具があるのだ。

 そしてその持っていたパーティがAランク冒険者なのだが…


 持っていた魔道具を鑑定したらこう出たのだ。


【魔封じの枷(魔物)】

 レベル100以下の生物に付けることで魔力を封じる枷。

 また、レベル50以下の場合は更にステータス低下も加わる。

 魔物用素材で作られている。


(なんだこの魔道具、俺に使う気だったのか?)


 明らかに何かを捕獲したり対策をしたりするための魔道具だろう。

 レベル的には問題無さそうなので試しに腕に付けてみたのだが付けた瞬間にボロボロになって枷が崩れたのだ。何も阻害される感覚が無かったので俺には効かないのだと思う。


(流石にこれは調べてみるか)


 ちょっと無視するにはめんどくさそうな物も出て来たので少し調べることにする。


 錬成で偵察機を複数機創り上げ、それに怠惰の隠蔽を掛けて山岳の周辺を回る様に飛ばす。

 この擬似ステルス機ならばかなり広い範囲を索敵できるから多分見つけれるだろう。

 この山に向かっている人を見つけてその人が来た方向の街を調べれば良いだけだからだ。


 数週間振りの山岳以外の場所に目を向けながら自身の敵を探すのであった。

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