第54話 劇◯ビフォーアフター

 洞穴にて夜を過ごした後、まずは巣作りをする事にする。


 この世界での龍はその種族に合った気候の場所に巣を作るか、自身の力で環境そのものを変えるらしい。

 人で言う家に住む事と同じだ。元々建ててある家に住むか、新しく家を建てるかといった感じである。


 どうせならその習性に合わせて俺も環境を変えてみようと思う。

 ちなみに幼龍時代の頃はフォレストドラゴン自体、森の気候に適しているのもあるが、母龍であるフィリアさんの影響がかなり強い地だった為にあんまり自身の巣を作ると言う欲求が出なかった。


 親の地だと本能で分かってたのか…それとも無意識で強者の地に自分は相応しくないとも分かってたのかもしれない。


(さて、どんな巣にしようかな…どうせなら俺の特徴を色濃く出したいな)


 アイスドラゴンなら凍土、フォレストドラゴンなら森、シードラゴンやウォータードラゴンなら海などとどの龍にでも特色はある。


(俺の特徴は大罪と氷と炎と兵器か…とんでもない環境になりそうだがやってみるか)


 まずは自身の巣の中心となる洞穴を自身の得意属性である氷と俺の1番の特徴である大罪を混ぜて罪氷に覆われた氷洞窟へと変化させる。


 だがその程度じゃ凍土の洞窟とあんまり変わらない気がするので更にアレンジする。気分的にはゲームの宿舎システムだ、キャラ達が住む場所を飾り付ける感じが正に今やってる事と同じである。


 まずは罪化錬成にて洞窟の形を変形させていく。

 柱を作ったり形を整えたりしてどんどん形を変えて行く。

 青い氷で出来た神殿みたいに出来て満足した所へ次へと移る。


 柱や壁の一部や、飾りの篝火や壁掛け松明の罪氷に寛容の権能で炎を組み込んで青く煌めく炎へと変化させる。

 これは蒼炎みたく高温な炎ではなく、凍る炎である。蒼炎との見た目の違いは煌めいてるか、いないか程度である。


 これによって青炎による灯りが追加されてさながらダンジョンと言った感じの見た目へと変化する。

 兵器要素を追加したいが内装に兵器は無理があるので断念する。


(ん〜氷属性ダンジョンって感じだな。この世界にダンジョンってのは無いらしいが…魔力濃度の濃い洞窟とか結構近そうな奴はあるっぽいけど)


 自身の特色が現れた内装が出来たところで次は巣の入り口とその周りの環境を変化させる。


(やっぱ氷と炎と兵器だよな、今度は兵器要素を強くしようかな?)


 とりあえず周囲一帯…今の力で出来るギリギリまで氷のフィールドを生み出す。

 そこに寛容と怠惰にて不規則に氷と炎を変える様にして気温も不規則に変える様にする。


 ちなみに怠惰の権能にて氷の維持は全て罪の力にてできる様にしている。

 木々などはちょっと離れたところにあって範囲外なので山火事の心配はない。ついでに怠惰の権能にて植物に燃え広がらない様にしている。燃えるのは動物のみである。


 下地が出来たところで錬成にてどんどん装飾を重ねていく。

 鉄条網に機銃、砲台などを生み出して乱立させる。

 怠惰の権能にて敵対反応に検知して自動攻撃をする様にしてある。


 所々に廃車や廃戦車なども生み出していく。これはあんまり実用性は無いだろうがちょっとした遊び心だ。まぁもしもの場合はこれらは投擲して使えるのでアリだと思う。



(うん…良い感じ、なのかな?)


 出来上がった環境は言わば野戦地域である。

 所々に兵器が置かれており、鉄条網で守られている感じが正にそう。


 更に炎状態の時はもはや野戦後と言った方が良い見た目へと変化している…

 そして内装を見れば罪氷と青炎で出来た神殿の様な洞穴…俺は何を作ったんだ?


 まぁそんな創造欲が終わって正気に戻った時に生まれた疑問は適当に捨てて巣の中央部にて座る。

 自身の得意属性に囲まれた環境だから落ち着きはする。気温も実は罪氷や青炎のせいで氷点下だったりするのだ。


 洞穴の周囲は不規則に冬と夏を入れ替えている様な感じだが洞穴の中は極寒の地へとなっている。

 やろうと思えば灼熱の地へと変化させれるがまぁ、気温が低い方が私的には落ち着くのでこのままにする。


(ちょっとテンションに任せて変な物を作った感じがあるけどいいか…防衛力も環境も申し分ないだろうし)


 野戦地帯の中にある氷遺跡みたいな感じになってしまったが防衛力も住み心地もそこまで悪く無いのでこのままにする。


 どうせなら試運転とかをしてみたいので(巣の試運転とは…?)少し森へと入って良さそうな獲物を探す。


(どうせならある程度耐えれそうな奴が良いよな。ウサギやゴブリン程度じゃ触れれば殺せるだろうし)


 そう考えながら良い感じの敵を探していると…クマを見つけた。


(クマだな。ちょっと大きいクマ…こいつでいっか)


 傲慢の権能にて後ろ斜め上に瞬間移動してそのまま首元へと噛み付く。

 このまま顎に力を入れれば即絶命させれるだろうが今回は巣の試運転のために巣の方向へ投げ飛ばす。


 投げ飛ばすと同時に巣の方向に向かって走り出す。どうせなら動いてる姿を見てみようと思う。


(うわえっぐい…これ砦とかにしたら要塞化になりそうだな)


 クマが敷地内に入るとまばらに置かれた兵器からひたすら弾や砲弾が打ち出されてクマを貫いている。

 クマのステータスじゃ弾丸一発でも致命傷だろうに今ので数十発は撃ち込まれている。


 案の定瞬殺されたクマはその場で崩れ落ちて、静寂が訪れる。

 何事も無かったかの様に静まり返っているのだ。


(普通の巣では無いけど…まぁ、良いか。俺っぽいし)


 こうして山岳の一角にて兵器の自動迎撃が存在する異質な龍の巣が出来たのであった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ただの平らな土地と洞穴が主人公の手によって氷と炎が不規則に切り替わる野戦地と氷神殿に…なんて事をしてくれたのでしょう。


 ……劇的どころじゃないですねぇ、原型がほぼほぼ無いなってる。

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