第50話無宗教の私には宗教の良さが分かりません

 ルミナと戦ったり大罪教の法皇と会ったりした日から数週間が経った。


 一応国の軍と戦ったわけだから国の動向などを見るために王都にて依頼を受けたり適当に観光したりと普通の生活を送っていたのだが特に何も変化は無かった。


 本当に何もなかった、黒龍の噂も大罪の噂すら聞こえなかったのだ。相当箝口令がしっかりしてるらしい…というより王様のスキルにそういうことに特化してるとしか思えないほどである。



 私的な感覚だが俺がルミナに勝ったからか余計な刺激を与えないために無干渉を決めたのかと思ってる。権能を使ってて分かるが国なんて言う集団が更に集団化した組織なんて容易に壊滅・殲滅・死滅出来る事が即想像できる。


 そりゃ軍隊を向けるのも分かるし勝てないならば国が壊されないように余計な刺激を与えたくない…そう考えるのは普通だと思う。


 とまぁ自分で考えただけの事だが納得は出来た、だからこの数週間で俺の周りで変わったことを整理しようと思う。


 まずは俺自身の進化だ、今のステータスはこんな感じ。

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 種族:氷炭相愛龍ヒョウタンソウアイりゅう

 名前:ゼノ・スノウライト

 lv:258/300

 体力:1781/1781

 魔力:1692/1692

 攻撃力:1503

 防御力:1592

 魔法抵抗力:1769


 スキル

 鑑定 言語翻訳 取得経験値量増加 

 身体構築変化 機微技術(錬成/収納/起動) 

 龍武芸百般lv90

 氷炎魔技lv82

 混沌ノ権能/四・一 lv85


 耐性

 氷耐性lv93 炎耐性lv43 毒耐性lv52

 物理耐性lv81 魔法耐性lv70 精神耐性lv53

 邪落化無効


 称号

 異世界の魂 突然変異 混沌の掌握者Ⅴ 長命種 龍殺し 聖神龍の聖印 混沌龍

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 進化先は氷炭相愛龍という種族であり、説明では


【氷炭相愛龍】

 氷属性竜種炎化特殊進化先。

 強烈な火属性の魔力により相反する属性である火属性に目覚めた氷属性竜種。

 本来相反する氷と炎を変異と混沌なる力により自在に扱う事ができる。

 熱を司り、時には灼熱、または極寒地帯を生み出す属性龍。


 となっている。他の進化先は氷属性竜種正統進化先の【フリーズドラゴン】や以前の進化先でも見た【タクティクスドラゴン】があったが氷と炎のロマンに惹かれて氷炭相愛龍を選んだ。


 氷炭相愛…それは性質が相反する物でありながらも特性を利用して助け合うと言う意味。

 まさに大罪と美徳や氷炎魔技のスキルを持つ俺にピッタリな言葉だと思う。


 そして氷炎魔技についてだが、元の氷魔技に火属性魔法と熱気操作が加わった感じなのだ。そして冷気操作と熱気操作により熱操作となっていて言わば一定量の熱エネルギーを操作するのだ。


 この熱操作が結構便利。氷属性魔法の温度の低下や火属性魔法の温度の上昇、更には日常生活のエアコン代わりにもなるのだ。


 …まぁ、エアコン代わりに出来てもそもそも氷と炎への耐性がある時点でよほどの劣悪環境でない限りは適温に感じるのだが。


 次に氷と炎の融合、これは相手の特性を持った属性を使うことが出来る。

 例えば燃える氷や固形化した炎などがある。ちなみにこれは氷炎魔技のみで出来ること。


 寛容や怠惰や色欲の権能を合わせればもっと色々出来るのだ。

 一例をあげるならば燃やした相手の温度の熱と冷を猛速度で切り替えて細胞を壊死させるとかだ。



 俺の進化はこんな感じだ。他に周りで変わったことがあるのだがそれは———


「おいおいこの宿は獣臭えなぁ!」

「誰がこんな宿に泊まるってんだ?無料にしてくれるなら俺らが泊まってやるぜ?」


 …こんな感じで差別が酷くなってる。

 これは最近創神教が積極的に教会前にて演説をしており、獣人は格下の存在という風潮が広がって強まってる感じだ。


 傲慢な考えに同調圧力…なんとも醜い。

 本来、人は差別ばかりするからこうなるのは当然とも言える。

 前世でも『肌の色が違うから』『生まれた地が違うから』と、そんな事で差別する。

 他にも『髪の色が違う』だったり『瞳の色が違う』とか、挙げ句の果てには『臆病』なだけで虐めになる程だ。


 そんな種族にとって獣耳や尻尾が生えた【自分達とは違う】存在はさぞ差別対象にしやすいだろう。


 最近は俺自身も差別対象に入ってきてる。まぁ理由は翼脚を生やしてるからである。

 …ところで今現在店主は居ない。そして目の前には傲慢な野郎が2人、そして店内には野郎に怯えるシィと敵視するスゥ…


 此処には世話になってるしシィに関してはよく甘えてくるのでもはや妹感覚だ。今もシィは俺に縋る様な目を向けている。

 此処数週間で知ったがシィは本来甘えたがりで人懐っこい性格の子だ、俺も例外なく絆されている。

 それに異世界に来ても好きな物はそうそう変わらない。ケモ耳娘は良いぞ。


 そうとなればやる事は決まっているだろう、追い返すだけだ。

 ちなみに『此処では』暴力沙汰にはしない、衛兵が飛んできたらめんどくさいからね。


 座っていた席から立ち上がり、野郎共の前に立つ。

「お?なんだその気色悪りぃ翼は。近寄るんじゃねぇよ」

「わざわざサンドバックになりにきてくれたんだろ?ならありがたく殴らせて貰おうぜ!」

「そうだったかぁwならありがたくっ!」


 そう言って右ストレートで殴ってくる野郎の手を受け止めてそのまま骨を砕く。

 この世界は治癒魔法で骨折くらいは治せるからこのくらい問題無いだろう、それに正当防衛だ。


 暴力沙汰で衛兵が飛んでくるのは公衆の面前での殴り合いか部位欠損ぐらいしないとだろう、そうじゃないといくら衛兵が居ても足りなくなる。


 にしてもコイツらは今まで以上に過激な奴らだ、どこの世界でも行動力だけは一丁前なバカクズはしっかりと存在するらしい。

 何か野郎が騒いでる気がするが気にしない。先に敵対してきたのはそっちだ。


 翼脚で野郎2人の首を掴んで氷属性魔法と錬成にて口枷を生成。

 ちなみに滅茶苦茶冷たくしているため低温火傷を起こすかもだがまぁ別にどうでも良いだろう。


 野郎2人の身体を持ち上げて宿の外へ、そして自身に怠惰の隠蔽を掛けてそのまま外へ。


 草原にて野郎を下ろして拘束を解くと早速キャンキャン鳴いている。


「ふざけんな」だの「治療費払いやがれ」だのなんだのと言ってるがもし生きていたら聞いても良いかもしれない。


「お前らの言い分は知らんがもし次に生きて会えたら聞いてやる」


 そう言い残して罪氷で作った釘を飛ばして足の甲に刺す。今日まで善良に生きていれば片方の足が使用不要になるが生きれるだろう…コイツらは心臓まで凍ると思うが。

 結果などどうでも良いので再度隠蔽を掛けて宿へと戻る。


「ほんと、創神教信者には困ったもんだなぁ…宗教の何が良いのやら」


 前世から特段宗教など気にしなかった俺はそう思いながら空を飛ぶのであった。

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