第45話第一師団長・蒼炎の魔女『ルミナ・アンブラル』

 飛んできた蒼炎の大渦は怠惰の権能で逸らす。

 怠惰の権能で打ち消せるのはかなりのレベル差がある上で出来る事なのだ。普通は逸らす事が多い。


「さすが大罪の龍、フレイミールストームを撃っても効かないだなんてね」

(女性か…割と強めか?)

「通じていないかもだけど名乗らせてもらうわ、私はルミナ・アンブラル…第一師団の団長よ。貴方が厄災の芽となる前に討伐させてもらうわ」


(へぇ、第一師団長…随分と大物が出たな)

 第一師団長、それは龍の単独討伐を成し遂げ忠誠心が高い事もあってプライム王国の最後の砦と言われている存在だ。

 姿は黒髪ボブで赤眼の優美な美女。美しくはあるがその瞳からは冷たさを感じる、討伐対象に何も思わないという事だろうか?

 二つ名は蒼炎の魔女、帝国との戦いで無表情で大勢の帝国兵を蒼炎の海で焼き殺した事から生まれた二つ名だ。


 1匹の龍相手に対してかなりな大物だ、相当に国は大罪の保持者を殺したいらしい。

(…この世界での人類の強者、どれほどか試させてもらおうか)


 俺は再度戦闘体制へと入る。戦いの火蓋は師団長が蒼炎を纏う事で切られたのであった。

 ------------

 ルミナ・アンブラル

 lv223

 体力:821/838

 魔力:2723/2731

 攻撃力:742

 防御力:771

 魔法抵抗力:1703


 スキル

 火属性魔法【蒼炎】lv100

 風属性魔法lv43

 光属性魔法lv38

 杖術lv62

 剣術lv53

 体術lv25

 自己回復(魔力)lv73

 魔力結界lv56



 耐性

 炎属性無効 魔法耐性lv73 精神耐性lv13 毒耐性lv21  大罪抵抗lv26


 称号

 魔女 蒼炎ノ支配者

 ------------

「流石に様子見なんてしない…全力で行かせてもらうわ!」


 目の前の女性、ルミナは初っ端から規模のデカい魔法を放つ。本気で討伐するらしい。

 辺り一帯が蒼炎に染まり、蒼き大地となる。軽くスリップダメージを受けるため俺は罪氷のフィールドを展開する。


(流石に相手の方がスキルのレベルが上なだけあって完全な上書きは出来ないか)

「本当に大罪の力って規格外、普通は抑えられないのに。でも消せてないなら私にも勝機はあるわ」


 罪氷フィールドは蒼炎を抑えて広がっているが上書きしきれずに抑えてるだけなので所々に蒼炎は残っている。

 青い氷と蒼炎…どちらも青色だがその性質は逆の凍結と燃焼、相反する属性での衝突が始まった。


「全力で…!【フレイムピラー】、【フレイムウェーブ】!」

(柱に波…縦と横の攻撃ね)


 蒼炎の柱が上空から降り注ぎ、蒼炎の波がルミナの居る方…前方から迫ってくる。

(流石に炎耐性持ってないのに当たるのは危ないかな)


 傲慢の権能によりルミナの斜め上へと瞬間移動をする、傲慢とは見下したりする態度だ。ならば見下すための位置を取るのは権能で出来る。


(初めての瞬間移動は慣れないな、だが攻撃は出来る)

「瞬間移動!?大罪ってこんな力があるの!?【魔力障壁】!」


 近めの所にいるルミナに噛みつく。何か硬い物を噛んだが相手のセリフ的に障壁だろう、そのまま嚙み砕く。

 嚙み砕いて障壁を突破した直後に俺は氷毒ブレスを吐く、だがその場にもうルミナは居なかった。


「障壁噛み砕いてそのままブレスとかほんとドラゴンってやばいわね。しかも毒も混ざっているとかシャレにならないわ」


 声は俺の斜め上から聞こえた。そちらの方に向くとルミナが浮いていた、多分だが風属性魔法だと思う。


「上は取らせてもらった。このまま畳みかけさせてもらうわよ!」

 そこからは蒼炎の数が暴力的だった。

 炎の矢に炎の槍、刃に礫、濃縮されえた炎の玉に炎の刃などひたすらに魔法が飛んでくる。


(装甲まで溶かしてくるのかよ…攻撃する隙がねぇ!)

 ひたすらに攻撃が飛んでくる、機微技術による装甲を錬成しても十数発の魔法で溶かされる。そして秒間に飛んでくる魔法は耐えれる量より何倍も多い。


 対抗する為の時間が欲しかったため、罪氷を混ぜ合わせた装甲で時間を稼ぐ。


(なるほど、これが人類の上振れ…確かに強い)

 流石は王国最後の砦だ、反撃の隙を与えないように動いてるのがよくわかる。魔法主体な事もあって攻撃させないことを大事にしているのだろう。


 まぁ、溶かされるなら溶かせないほど冷たくなればいい。

 罪氷で全身を覆う、その姿はさながら凍土に住む老練の氷ドラゴンである。


(ここで負ける程度じゃこれからやってけるとは思えない、勝利をつかみ取って見せようじゃないか) 

 氷装甲が耐えてるうちにどんどん準備をしていく、空間を冷気で満たして罪氷霧を辺りに散りばめる。


(ルミナに罪氷の瞬間凍結はあんまり意味ないか…大罪抵抗があるからか、それとも罪が少ないのか…)

 氷霧によって一応触れてはいるがあんまり効果が見られない。罪化の追加効果はあんまりアテにしないほうが良いだろう。

 そんなことを考えてるうちに氷装甲が砕かれる。温度の急激な変化によって装甲が脆くなったらしい。


「耐えれると…逃げれると思わないで、貴方は討伐されるのよ」

(反撃開始だ、簡単に勝てると思うなよ?)


 権能を発動する。傲慢による能力低下、怠惰による無力化、そしてそれらを寛容によって広域化する。


 これによって飛んできている魔法を完全無力化、ルミナは急に消えた魔法に驚いている。大方そのまま押し切れると思っていたのだろう。


 そして嫉妬の権能で魔力結界を模倣、罪化させた魔力結界と満ちた冷気と氷霧に対する氷魔技(冷気操作)に怠惰・嫉妬・傲慢・色欲・寛容の権能を合わせる。

 俺の現在持っている権能のフル活用だ、そしてこれによって起こる事象は────




 冷気に満ちた結界内空間の【完全支配】だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る