第44話国軍と黒龍、狩られる側はどちらか
黒龍の姿のまま人の大群に向かって歩いていく。
向かっている途中に姿を確認したが進化前とあまり変わっていなかった。変わったところと言えば身体にアクセントっぽく付いてた霜が取れて身体が少し大きくなった程度だろうか?
ある程度歩いて俺は止まる。
泊まった場所はある程度開いた場所だ。道中にあったゴーレムが出て来たところだ、ここは比較的平らで開けていて動きやすい。人間を恐れるなとは言われたが警戒はしても良いだろう。
そうして待つこと数分…急に氷や炎、水の魔法が飛んできたので全て怠惰の権能で打ち消す。
(へぇ、話す気もなく攻撃してくるんだ)
どうやら無条件で討伐をするらしい。大罪って言うのはそこまでの物だったのか。
数秒後にまた様々な魔法が飛んでくるので今度はそれを寛容の権能にて受け流す。
(初めての実戦使用だが、どうなるかな?)
飛んできた魔法を全て上空へと受け流す、受け流しだからか微量のダメージは受けるがそこまで気にならなそうだ。
そして上空へ受け流した魔法は急に方向変化し、飛んできた方へと飛んでいく。
(色欲の味方化…魔法にまで通用するのは凄いな)
魔法が飛んで行った方から悲鳴が聞こえた気がするが気にしない。戦うと決めたのは人間側なのだから。
正直殲滅するのは割と簡単っぽそうである。ワーウルフ戦で分かったが嫉妬の権能を使えばそれだけで終わるのだ。
だがそれはしない、もっと分かりやすく敵対しないほうが良いと分からせた方が今後動く上で楽になりそうである。
それに同士討ちで終わらせたら今度は少数精鋭でってなりそうなのもあるのだ、かなりめんどくさい。
魔法が飛んでこなくなってから数十秒程だろうか?人の前衛らしき人達やバリスタ兵っぽい人達が見えて来たので俺は身体を起こす。
「アレが大罪の…」
「ドラゴンだなんてただでさえ討伐がむずいのに」
そんな言葉が聞こえてくる。
ちなみに今の姿は普通の龍とも言えるだろう、四脚の足に翼、鱗に覆われた身体と言わば聖銀龍と同じ骨格だ。
翼脚は出していない。
俺は人の軍を睥睨する。怯えてる奴もいれば気合たっぷりな奴も居る。
やはり俺が元人間なだけあって感情をよく読み取れる。
少しやりずらいがやらなくては先に進めない。「戦闘の開始は咆哮から」これは俺の好きな開始の合図だ、そして咆哮にも大罪の力を乗せる。
『ゴアアアアァァァァアアアアア』
「ヒッ!死ぬっ…!」
「アレを倒せって言うのか…?」
「なっ⁉︎力が出ない⁉︎」
傲慢の権能による威圧を咆哮にも乗せる。それと同時に傲慢のステータス低下を寛容によって広域化して検知できた人全員に掛ける。
大体一個師団ほどの人数…つまり7000人以上のステータスを低下させたのだ、傲慢は低下させた分のステータスを自身に加算するのだ。現状の何十倍ものステータスとなっているだろう。
本来傲慢のステータス低下と加算は一対一で使用される物だ。だが寛容の広域化で化ける、特に大人数であればあれほど顕著である。
上がりすぎたステータスをうまく制御できずに軽く踏み込むだけで地面が凹む、これは身体を使った方法は控えた方が良さそう。
(機微技術:罪化錬成…モデル、ゼノ・スノウライト)
罪化させた錬成…その一端である生物の擬似錬成。完全支配された錬成生物を数匹生み出す生命への冒涜と言われていたクローン技術だ。
錬成生物はモデルとなった生物の一部スキルとステータスを引き継いでいる。
今回生み出した錬成生物は2匹、氷毒ブレス+龍技の龍と氷魔技+龍技の龍だ。
「増えただと…これが…大罪の力だとでも言うのか⁉︎」
「ドラゴンが…3匹…こんなの勝てるわけ…」
「弱音を言うな!討伐しなければ未来は無い!全隊戦闘開始!」
指揮者だろうか?随分と勇ましい事を言っている。
弱音も聞こえるが気にしない。敵対、俺の命を奪おうとするのであれば容赦はしない。それは決意した事なのだ。
(錬成龍、起動)
二匹の龍が動き出す。ブレスの方は近接しながらブレスを吐いている。これでもう前衛は阿鼻叫喚。
氷魔技の龍は後衛の兵に向かって氷の槍や矢、剣に氷柱と様々な形の氷を放っている。
勿論これで後衛も阿鼻叫喚。
(呆気ない…人ってのはこの程度なのか?)
欲に忠実で、知能が高く、創り出す物は便利でありながら凶悪でもある。
それが人間のはずだ。だがこれはなんだ?前衛も後衛も壊滅、中衛もどうすれば良いか分からずあたふた。恐れていたのが馬鹿らしくなる惨状だ。
(お帰り頂こうか、この戦闘で学べることはなさそうだ)
傲慢の権能で更に強い恐怖を植え付ける。さながらトラウマとなるように…
『『『………ッガアアアアアアァァァァァァアアアアアアアアア』』』
錬成龍2匹と俺による咆哮と共に更に強力な恐怖を植え付ける。
(…この程度なんだな)
国軍ともあろう存在がただの龍1匹に全員顔を青くして震え固まっている。本当に、何を恐れていたのだろうか。
勿論警戒する存在は居るだろうが少なくとも目の前の存在達は気を張るほどでは無かった。
広域化させた罪化フロストフィールドを展開して大半の人間を凍らせて錬成生物を鱗に戻して傲慢のステータス加算を解いて立ち去る。
他の魔物でも相手にしよう———そう思った瞬間、人族側から蒼炎の大渦が飛んでくるのであった。
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