第41話数があれど大罪の前には意味など無し

 30体程だろうか?弓兵ワーウルフが柱の上に立って無数の矢を撃ってくるがそれら全てを怠惰の権能により逸らす。


 弓兵を認識したところで全員に怠惰を付与する。これにより完全無力化、後衛から潰すのは基本だろう。


「さて、どうせなら罪化の重鱗射撃でも試してみるか」


 罪を纏わせた重鱗射撃、言うならば罪鱗射撃だろうか?罪鱗を弓兵めがけて撃つ。


 弓兵は牽制のための行動だったらしく前衛のワーウルフはまだ来れてないため狙い放題だ。


 普段の重鱗よりも鋭利で重く、回転が加えられた鱗が罪を纏いながら弓兵の眉間へと飛んでいく。


「へぇ、罪鱗射撃は追加攻撃…どう言う原理か分からんな」


 弓兵に罪鱗が直撃した瞬間にその直撃したワーウルフの1メートルくらい離れた所からどことなく鱗が現れてワーウルフに追撃したのだ。


 最初の罪鱗で脳天を貫いたから即死だったがお構いなく追撃鱗が飛んでいったので死体撃ち上等と言う事だろう。


「純粋な手数が増える感じだな、と言うか弓兵全滅したんだが」


 一応のために一体につき三枚ほどの罪鱗を飛ばしたが一枚の罪鱗につき4枚ほど追撃鱗が出てたため実質一枚の罪鱗だけでワーウルフ一体は確実に死んでいる。

 残り二枚は完全なる死体撃ちだろう。


「4枚の追撃…敵を前にした戦意喪失による戦闘放棄、脱走はしてないが敵前逃亡は重罪だったか?」


 多分だがこれに逃亡が加わっていれば7枚ほどの追撃が飛んだだろう。

 もしかしたら二桁枚数だったかもしれない。


「おっ?やっと前衛のお出ましか…後衛は全員居なくなったが大丈夫か?」


 完全に敵意を瞳に染めたワーウルフが何十体も柱から顔を出す。


 自身の爪、剣、槍、斧、双剣…様々な武器を手に突撃して来るが攻撃をこちらに届かせる気など毛頭無い。


「さっきの罪氷を見てやってみたかったんだよな、罪化のフロストフィールド」


 自信を中心とした一定範囲を全て罪氷の霜によって覆われる。


 勿論それを踏みつけたワーウルフ達は足が即座に凍り付き、うまく動けなくなってそのまま横転する。


 そして横転したワーウルフ達は抵抗虚しく罪氷の霜が着いた身体から凍っていき、生命活動を終える。


「広範囲の温度を下げる程度のフロストフィールドが罪氷となると化けるなぁ、触れた瞬間から凍結すると恐ろしいね」


 足が動かなくなって転ぶのは大抵の生物なら必然、だが転んだらもう終わりなのだ。足という身体の末端なら罪を重ねてなければ凍る程度で終わるが転んで身体が罪氷の霜に付けばそこから凍る。


 生命の核となる…所謂心臓や脳に近い部位が凍ればそのまま心臓や脳も凍るのだ、つまりこの罪化フロストフィールドはかなり凶悪なのだ。


「にしてもやっぱり酷い絵面だなぁ、俺に向かってワーウルフが伏せて凍死してるってのは…とりあえずフロストフィールドを解除するか」


 魔法ってのは基本解除とかは無い。魔法で生み出した物は自然の摂理に従って残り、魔力へと戻るのだ。言わば氷を魔法で生み出せばいずれ水となり、

 徐々に魔力へと戻っていく。


 だが今回のフロストフィールドは罪氷なのだ、生物が足を踏み入れれば無差別凍結して死にいたらしめる。


 だがまぁ、罪化した物は割と解除が容易だ。

 罪化した物から罪の力を操って抜くだけで終わる。


 罪化した反動か、それとも罪の力が構成の主軸だったからか分からないが罪の力を抜けば氷も鱗も塵のように消えるのだ。


 そしてフロストフィールドが消えた瞬間に猛速度でこちらに走ってくる存在を検知する。


「ん?速いな、ワーウルフの親玉か?」


 猛速度でこちらに突撃してくるので装甲を錬成して突撃を防ぐ、どうやら爪で貫こうとしたらしくギャリギャリのちょっと耳障りな音が鳴っている。


「お怒りだな、仲間が倒されりゃ当然か」


 突撃してきたのは二回りほど大きいワーウルフ、元のワーウルフ自体人より一回りほど大きかったからその二回りほど大きいとなればかなりの迫力となる。


 そのワーウルフの表情は完全に怒りの表情だ、仲間を大勢殺されたからだろう。


 そんな怒りに染まったワーウルフは次なる攻撃を仕掛ける。

 速度に物を言わせた柱を使った立体起動、動体視力が悪ければ見失った可能性がデカい。


(とりあえず怠惰付与でもしてみるか)


 鑑定で出た名前はワーウルフキング、あの群れのリーダーだったのだろうか?とりあえずワーウルフキングに怠惰を付与する。


(ん?効きが悪い…動きが鈍くなったが動かなくなるほどじゃ無いな。…あー、怒りに染まってるからか)


 動きは鈍くなったし怒りの気配も薄くなったがそれでも戦意は失っていない。どうやら強すぎる感情である程度対抗出来るらしい。

 ただまぁ、仲間・家族含めた群れの殺戮によって生まれた怒りでも割と怠惰が効いてるからやはり恐ろしい物だ。



 何度も飛びかかってくるワーウルフキングの攻撃を避けてそのまま翼脚で地面へと叩きつける。素早さの狼ならばこちらはオールラウンダーな龍だ、こちらが有利なのは当然だ。


「柱で立体起動してるが空中に放り出されたらどうする?」


 そう言って叩きつけたワーウルフキングを掴んで空へと投げ飛ばす。


 即座に罪氷の矢を数本展開してワーウルフキング目掛けて放つ。


 空中で身動きの取れないワーウルフキングは手を、足を、腹に心臓を罪氷に穿たれて即座に凍る。

 そして息絶えたワーウルフキングが目の前に落ちる。


 その顔は最後まで怒りに染まっていた。



「…まさに大罪だね、俺はこの場から動いてないのに全滅しちゃってさ」


 そうして先程ワーウルフキングが戦っていた俺が水色の霧となって消え、少し離れた場所で死んでいるワーウルフキングのすぐそばに俺の姿は現れる。


「久しぶりに実戦で権能を使ったけど前使った時とは全然違う。あの時はレベルが低かったからか?」


 セレスティア森林奥深くで過ごしてた時以来の実戦での権能だ。進化で権能のlvも上がったからかいつの間にか、かなり凶悪な性能になっていた。


「確かに大罪を扱う龍がどう人間に怯えればって感じだな…」


 そんな事を考えながら自身を黒龍の姿へと戻す。温かい進化の合図の感覚を感じながら。


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