第37話母龍の力の片鱗

「まさか白龍が神の一柱として崇められていたとは…」


 まぁ驚きはしたが納得はしている。

 圧倒的な強者のオーラと浄化されるまでに感じる聖なる気配、目を奪われた美しき姿。


 神と判断されても仕方のない感じであった。

 むしろ俺がその子供だったのが驚きだ、聖なる龍の子が大罪を孕むとは…


 そんな事を考えながらなにか良い依頼はないかとギルドへと向かったがギルドが異様に静まっていた。


(なんでこんなに静まってんだ?ギルドってのは騒がしい物のはずなんだが)


 酒場が併設されてる事から何処のギルドでも割と騒がしいと言うのはセレスの街で聞いている。だが今王都のギルドが異様に静まっているのだ。


 そっと中を覗いてみるとそこは一人の美しい女性と地に伏している…と言うか頭から膝まで地面に埋まってる人が見えた。


(…何事?)


 足しか見えない人を無表情で見る女性、理解の出来ない状況だがそれよりも気になるのがその女性の放っている雰囲気だ。


 まるで白龍と同じなのだ。放つ気配が生まれた時に感じたのと全く同じだ。

 あの時の事はしっかりと頭に刻まれているから間違いない。


(鑑定したら種族名くらい見えるか?)

 そう思って鑑定をしてみるが全く見えなかった。あの森のハイオークキングでも種族名は見えた、だが何も見えないのだ。


(流石にこれは気になる…みんなの視線もあの女性に向かってるし、少しだけ権能を使うか)


 そうして嫉妬の力を瞳へと宿し、罪を纏った鑑定として使ってみると…


 …ステータスが見れた。


(なんだこのステータ——っ⁉︎)


 ステータスが見れたその瞬間、女性に見つめられ身体が全く動かせなくなってしまった。


(なんだこれ⁉︎金縛り?いや、恐怖か!)

 大罪の権能の二つが警鐘を鳴らし、俺の脳も即座に逃げろと告げている。


 即座に怠惰の権能で恐怖を和らげ、動ける様にしてあらゆるスキルを使って即座に逃げに徹する。


 龍武芸百般に内包された強化系を全部使い、機微技術で空中に足場を作り蹴って空中を飛んでいく。

 翼を生やして飛ぶより蹴った方が速いのだ、魔力の消費は激しいが今はそんな事を考えられないくらい焦っているのだ。


 空中に出した装甲を蹴り、王都の外へと出てそのまま森の中へと入る。

 もっと離れていきたいが何処へ行けば良いか分からない。


 とりあえず森を突っ切ろうと思った瞬間に全身が凍りつき、身動きが取れなくなった。


『人の目のない森に入るだなんて、私と話したかったのかしら?』


 そんな心地の良い声が前方から聞こえてきた。


 ……前方から聞こえて来たのだ。


「なんで…前に…」

『あら、成龍の貴方に遅れを取るほど弱くなった覚えはないわよ』


 そう言いながら先ほど見た女性が前の茂みから現れた。

 空色のさらに白く、それでいて銀色に輝く髪を片目が隠れるほど伸ばしたロングヘアの優しげな雰囲気を纏った女性。そして………


 白銀に輝く翼を生やしている。


「聖銀龍……」

『あら、ちゃんと私を知ってるのね。にしてもほんとに邪龍じゃないわね…それに異世界の魂だなんてね、あの森で生きて出て来れたのはそれのおかげかしら?』

「なんでっ、その事を」

『それは私だから、と言うしかないわね。とりあえず貴方の事を見させてもらうわよ』


 急に辺一体から感じる雰囲気が変わった。全てが鎮まり、さらに俺の大罪の権能が使えなくなった。


「一体何が起こってる…」

『静かになさい、無力化しただけよ』


 そう言って聖銀龍は俺の額に手を置く。しばらくすると俺の全てが見られてるかの様な感覚に陥った。


『あぁ、やっぱりそうなのね…それにしてもあの時の生まれてたのね、これは母親失格ね。それでなんとか生きて条件達成と称号変化で大罪を孕んだと…これ私が原因じゃない、流石にこれで殺すなんて出来ないわよ…』


 目を瞑りながらボソボソと言ってる聖銀龍の言葉にビクつく。

 目の前の存在が母親なのも確定したし、殺すと言う選択肢を持ってた事に恐怖を感じるしかないのだ。


 少ししてから手を額から離した聖銀龍は少し罪悪感を感じている様な表情をしている。

『ごめんなさいね、貴方に気付いてあげれなくて。これはせめてもの償い、貴方が求めてるかは分からないけど受け入れてくれるとありがたいわ』


 聖銀龍が俺の胸、心臓部分に手を置き目を閉じて集中する。


『判決を下す、対象:ゼノ・スノウライトを善とする。善なる主に対しての大罪の蝕みを禁じる』


 そう言われて俺の中で何かが変わった。詳細に言えば気にならない程度だが今まで大罪の感情が燻って居たのだがそれが完全に無くなった。

 権能もより扱える感じになっている。さながら今まではほんの少しだけ自由意識のある様な感じだったが能力だけ残して大罪の意識を消し去った感じである。


 にしても蝕み、ねぇ…掌握しても大罪に呑まれる可能性もあったのか。まぁ魂称号で出来るのはレジスト、つまり抵抗だ。無効ではないのだからよくよく考えればわかった事かもしれない。


『神龍が理に命じる、ゼノ・スノウライトの邪龍化を禁ずる。また大罪以外の邪落化スキルの所持を禁ずる』


 次は俺自身の中にある何かが消えた。聞いてる感じ邪龍進化先が消えたと言う事だろうか?

 それと変幻自在のスキルが変質した気がする。変幻自在は邪落化スキルだったらしい。邪落化スキル…邪に堕ちるための条件的なスキルだろうか?


 そうして自身の何かが変わる感覚が終わり、聖銀龍も胸から手を離した。

『次の進化する時にかなり毛色の違う進化をすると思うわ。それとこれはオマケ』


 俺の首を両手で包み、包んだ両手から光が出る。

 少しして手を離してそのまま抱き寄せられて聖銀龍の胸に顔を埋めさせられる。


「何っ⁉︎何してんの⁉︎」

『生まれた事に気付かずに見捨ててしまった私が言える事じゃないけど…少しは母親らしい事をさせて。罪滅ぼしって面もあるけどその前に貴方は私の子なんだから。それに、私が人型で貴方ぐらいのステータスがないとステータスの関係上まともに触れ合えないのよ、私だって子供との触れ合いをしたいわ』

「そ、そう…」


 神の一柱とされてるとは思えない母親な面を出して来て戸惑ってされるがままにされている。


 そうして抱きしめられたり撫でられたりしながら段々と俺も緊張が解けて来てた。俺がこの世界での成長に干渉が無かったと言えどやはり母親だからなのだろうか?本能の部分で安らぎを感じているらしい。


 …安心はするが俺からしたら美人なお姉さんにしか見えないのでどうすれば良いか困るが。


 とりあえず緊張も恐怖もある程度解けて来たので聖銀龍ことフィリアさんの雑談に少しずつだが応じていく。


 フィリアさんと呼ぶのは母親にしては美しすぎるというか…うん、母性は感じるが高嶺の花なお姉さんにしか見えない。


 雑談内容は例えば子供が育って成龍になってもステータスが低くて抱きしめたらそのまま圧死させちゃいそうとか『龍の卵って、脆いわよね』とか言ってた。


 …それ貴女が強過ぎるだけだと思いますけど。

 あとついでに圧死とか言われると抱きしめられてる今の状態が怖いんですけど。



 そうして半日ほど静かな森で白龍と黒龍、美徳の龍と大罪の龍が仲良く過ごすのであった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、冰鴉です。


 フィリアさんが力の制御をうまく出来ずに子供を殺してそうな表現が出てますが子供は殺してないですね。

 友人に頼んで特定のステータスとか卵の殻の強度を模して創られた物で力の制御をしてたんですけど無事に全部壊したって感じです。


 補足説明が終わった所で今回は主人公が見たステータスを見せます。主人公視点の聖銀龍と言う高みを感じる鑑定結果をどうぞ。

 *レベル差がある程ステータスは見れません、罪の力により緩和されています。



 種族:世—希望———神龍(最終進化種)

 名前:フィリア・スノウライト

 lv:測定不能

 体力:???/???

 魔力:???/???

 攻撃力:測定不能

 防御力:測定不能

 魔法抵抗力:測定不能


 スキル

 ———理【—徳】

 ?・?・?・?・?属性魔法lv0

 ?魔法lv13

 ?魔法lv83

 ?魔法(微)

 聖———技lv0

 ?????

 ?????

 ?????

 ?????

 ?????

 ?????

 ?????


 etc…


 耐性

 ?・?以外の全属性無効

 ?耐性lv100

 ?無効

 ?無効

 大罪抵抗lv90

 ?無効


 称号

 勇聖女の魂

 ??? ???? ?????? ???? ??? ????? ??? etc...


 まともに見れる情報は大罪抵抗と名前程度…とんでもない高みという事をお知りくださいな。

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