第36話聖銀龍が母親ってマ?
「うーん、まずなんの情報を集めようか?」
今俺は王都最大の図書館へと来ている。
割と貴族街と言う名の王都の中央付近に近いが冒険者証を見せれば問題なく通れた。
割と本の存在は貴重らしいが、どうやらC級以上は性格も判断基準でC級以上なら特に審査をしなくてもいいらしい。
その代わりC級の壁はかなり高いらしい。冒険ランクを気にしなかったから分からなかった。
(とりあえずこの世界についてだな。世界地図に宗教とか…とにかく情報が欲しい)
宿屋の店主から話を聞いてて思ったのだが俺はこの世界について知らなすぎるのだ。
もし母龍が居れば少しは教えてくれたかもだがをあいにくと産まれてから独り立ち状態だ。
(異世界にきたら情報収集。異世界転生物ならやらないといけない事上位に入る事だったのにしてないのは怠慢だったか)
とりあえず本を集めていく。
世界地理に創神の教え、世界を支える神達と必要そうなのを読んでいく。
まずは世界地理。
どうやらこの世界では南側にプライム王国、北側にリオン帝国とで二つの大国が争う様に存在しており、その他の小国などは東側に集まっているらしい。
北と東と南は割と地図がしっかりしている。詳細な地図は流石に軍事機密に入るから無いだろうが大まかにしては地名などがありしっかりとしている。
ただ西が全く書かれていない。西は魔族の領域で地図の作成が出来ないと書いてある。
(あんまり西には近づかない方がいいか?いや、恐れるくらいなら討滅するのもありなんだがな。混沌を楽しむのは良いが世界を巻き込んで混沌を呼ぶのならば正直いくら討滅させても心は傷まんしな)
いわゆる大義名分と言うやつである。自分自身の性格が悪とは思ってはいないが人を殺せないほど善と思っていない。
人を殺せないほどの善と言うのはレティの事を言うのだ。
そもそも魔族は人ではない狂った生物であると本に書いてあるから魔物と似た扱いだろうが。
次は創神の教えと言う本だ。
これはなぜか旧版と新版があった。
まずは旧版から。
教義が最初に書いてあり、【我ら生物は一つの神の元に産まれ、平等に愛されている。誰もが幸せになる権利が与えられるのである】と書かれている。
(なんとも綺麗事なこった…でも宗教ってのはそう言うもんなんだろうな)
一応他のページを見てみるが書いてあるのは神の寵愛を受けるための身の振り方や、聖なる魔物や神の使徒やそれらに関する逸話が書いてあった。
特に聖銀龍と世界樹の逸話がすごい。まずは邪神が現れて魔人族以外の種族に絶望を与えていたところに何処からともなく輝く龍が現れて少しの傷を受けるだけで邪神を滅ぼしてしまったのだとか。
そして邪神によって荒れた地は所々に生えた優しい光を放つ木々によって即座に癒されて復活し、人類への被害以外は何事も無かったような光景になったらしい。
次に世界各地で天変地異が起こる異様な現象が起きたらしい。大地は揺れ、空から炎が降り、溶岩が溢れ、津波が迫ってくる。まさに自然の暴威とも言える異常事態。
もはや大陸ごと終わったと思われたが気付けば大地が聖なる根によって覆われ、津波の水は根が全て吸収し、空からの炎は吸収した水で対消滅。溶岩も根が堰き止めていたのだとか。
そして目撃者は居ないが大陸中央で非常に激しい戦闘痕が残っていたらしい。
自然の暴威が入り乱れた様な地の中心で自然に侵食されたかの様なドラゴンが息絶えていたとの事。
こんな感じで聖銀龍と世界樹の逸話が絶えないのだ。
この事もあって子供に言い聞かせる言葉として「悪い事をしたら聖銀龍様と世界樹様から見放される」と言うらしい。
死が迫る脅威を除き、守ってくれる存在から見放されると言う意味だろう。
正直神の使徒とされてる生物が凄い。神器とも呼べる物を作り操る者や夜が来ない謎現象が起きた時に夜を作ったとされる深海に住むと言われる辰…
所詮逸話、作り話と言えばそれだけなのだが俺は本当の事に思える。
邪龍進化先にフォレストドラゴンの植物魔法、少しでも関係がありそうな事を見て来たのだ。
(ある程度強くなったとは思ったがまだまだだな。神の使徒…四神教の崇める対象か、そいつらからしたら俺もただの塵に等しいだろうな)
そう思いながらも新版の方を開く。
まず最初に書いてある教義を———。
「へぇ…これが今の教義」
思わず声が出てしまったがしょうがないだろう。旧版とはかなり違うのだ。
その教義とは、
【我ら人族は唯一神に寵愛された種族である。故に人族は他種族よりも優れた神人である】
なのだ。
他のページも読んでみるが神の使徒は我ら神人の味方であるべきだの、上納金を納めれば更なる寵愛を受けられるなどと書いてある。
(部外者から見れば腐ってるのがよく分かるな。まさに傲慢に強欲、スキルとかそう言うのじゃなくてマジの大罪。こうやって腐って滅んでいくんだな、人は)
逸話も人類の味方と言う部分が強調されて書かれている。旧版で見た感じでは世界を乱す存在を許さないって感じに見えたんだがな。
創神教が腐ってるのが分かったところで次の本、『世界を支える神達』である。これは四神教が出している本らしい。
四神に関しては挿絵有りでどんな特徴でどんな事を成したかが分かる様に書かれている。
まず闇と静寂を表す辰こと【海淵辰】、深海の深いところに住んでいて挿絵はたまたま海面に出て来たところを書いたらしい。
暗めの紫を纏った東洋の龍だ。逸話の有名なのは夜を作った事。
次に制作と創造を表す鬼こと【創造鬼】、とある山の洞窟の奥深くに住んでいて挿絵は6本腕に一本の美しいツノを持った女性…腕が増えてツノが増えたちょっと筋肉の逞しい普通の人に見える。いやまぁ、腕とツノの時点で普通ではないが。
逸話は真に助けを乞う物に対して適した神器を生み出し、下賜したとされる物だ。回数制限があり、誰も残さない事から人間界にはその神器は無いらしい。
次に安寧と平穏を表す樹こと【世界樹】、とある別大陸の強固すぎる結界の貼られた島に生息されているらしい。
これは挿絵が無い。世界的危機に現れた優しき聖なる木が世界樹の一部ではと言われている。
逸話は創神の教えに出て来たのと同じだ。自然の暴威を抑え、土地を癒す。大地の守護者とも言われている。
そして最後に光と希望を表す龍こと【聖銀龍】
とある聖なる森の奥深くに住むと言われており、挿絵では———
「えっ………白、龍…⁉︎」
その挿絵に書いてあるのはこの世界に生まれて初めて見た生物であり、憧れで目標である俺の推定母龍こと白龍であった。
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