第35話宗教って…怖くない?

「………客か?」


 かなりの時間が空いた後に男性の…多分セリフ的に店主が短く聞いてきた。


「おう、良い宿屋がないかなと思って見かけたここに来たんだけど…何事?」

「客か…客だったのかぁ…それはすまんかった。ちょっと最近獣人差別が酷くなってきていてな。とりあえず料金は4000ライムだ」

「んー、じゃあとりあえず1週間程度は泊まろうかな」

「お、おぅ…分かった。さっきはすまんな、包丁も投げてしまったし」

「あぁそれは大丈夫。俺にとっちゃ特に問題ないよ」


 本当にそこまで問題は無かった。刃が折れるか折れないか程度の話だ。


 とりあえず夜食と朝食の予約をして宿の鍵を貰う。

 鍵を貰う前に少し質問をされたが。


 お前さんが崇めてる宗教はなんだ?とかそこの娘二人をどう思う?だとか。


 宗教と言われてもこの世界の宗教など知らない。セレスの街は冒険者の街だからか宗教とは無縁だったのだ。

 日本の宗教は…仏教国とも言えないチグハグ宗教だからよく分かんない。無宗教って事で大丈夫だと思う。


 猫耳娘二人組に関しては普通に可愛らしい。あの動いている猫耳など触ってみたいものだ。

 素直にそう伝えたら「人族は知らんが獣人の耳はデリケートな部分なんだ、あんまり触りたいとか言うなよ」と店主に注意を受けた。


 注意を受けて猫耳二人娘を見てみると二人して顔を赤くして耳を手で隠していた。

 その姿も可愛いと思うのは罪なのだろうか?


 そんなこんなでちょっとピリピリとしたエンカウントの果てに王都で過ごす宿が決まったのであった。


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「それで…なんで最初はあんなに俺を敵対視していたんだ?」

「ん?お前さん、獣人差別を知らないのか?そう言えば無宗教だったか」

「あいにくと俺は森育ちなもんで。生まれてから初めて他人と関わったのもつい最近だしセレスの街に居たから宗教とは無関係でね」

「そうか…だからお前さんからは差別や悪意の色が一切見えないって事なのか」


 猫耳二人娘は店内の仕事へと戻り、特にやる事もなさそうな店主と俺は今、雑談をしている。


 ちなみに猫耳二人娘の白猫の方はスゥという名前で、銀猫のほうはシィと言う名前との事。二人とも看板娘の様だ。確かに可愛らしい。


 そして目の前に居る大柄な猫耳生やした男はシィの父親でソルと言う名前だ。どうやら猫獣人の名前は短い事が多いらしい。


「そうだな…この王都で過ごすと言う事なら宗教とかについて知っておいた方がいいだろう。知らないともしかしたら危ない事が起こるかもしれんからな…客にはそんな目にあってほしくないし」

「随分と優しいんだな、店長」

「まぁ、初っ端から敵対した罪滅ぼしみたいな物でもあるがな。とりあえず説明するぞ」


 そう言って店主ことソルは宗教について説明し始める。

 纏めるとこんな感じだ。


 まずはこの世界での主要な宗教は4大宗教と呼ばれてるとの事。


 一つは創神教。

 これは創造神を唯一神として皆平等に神に愛されていると考えられていたらしい。

 ただいつの間にか人族が神の寵愛を受けているという教えになっており、差別をする宗派に変わってしまったらしい。

 人族の信者が多いとの事。


 二つ目は四神教。

 これは四つの現神を崇める宗教であり、崇めてる対象は

 光・希望を表す【聖銀龍】

 制作・創造を表す【創造鬼】

 安寧・平穏を表す【世界樹】

 闇・静寂を表す【海淵辰】

 を崇めているらしい。

 決まった崇め方とかはなくて、宗教として教えられる事は崇める神と【世を支えるのは四つの神。四神を崇め敬う事により更なる世の安寧がもたらされる】と言う教えのみであり、人によって崇め方は千差万別だとか。

 獣人の信者が多いらしくて、店主もこの宗教の信者らしい。特に聖銀龍と世界樹を強く崇めていると言っていた。


 三つ目は魔神教。

 これは混乱をもたらすためだけに生まれた魔族特有の宗教との事。

 …やっぱり魔族とか居るのね。

 この宗教は世を憎んだり、混沌を楽しむ魔族達が集まった宗教で邪を行く神を生み出す事が目的との事。

 基本的に魔教国に籠って神を生み出すために魔物で実験をしてるとかなんとか…


 …えっ、魔物の俺からしたらクッソ怖いんだが?しかも進化先に罪禍とか明らかに邪龍ルートあるんだが?


 そして四つ目だが、これは特に店主は何も言わなかった。関わらなければ無害だし、関わってもあんまり意味の無い宗教と言っていた。

 闇に潜む宗教とか言われてるらしく、関わりのない人にとっては名前もあんまり知らないらしい。

 でも信者は多いらしくて闇に潜む宗教なのに4大宗教に入ってるらしい。



「なるほどねぇ、差別してくる創神教の信者の多い人族だからあんなに敵対してたのか」

「それは本当にすまんかった…娘も差別に晒されて人族を怯える様になっちまってな。それもあってピリピリしちまったんだ」

「娘想いのいいお父さんって証じゃないかそれは。俺は問題無かったからそう気にするなよ」


 そう言った後に少し雑談をした後に夜食を取り、宿屋の部屋へと行く。


 部屋はしっかりと整備されており、質素ながらも程よく安心出来る雰囲気がある。

 それに酒場などが近場にあるわけでもないので心地よい静かさがある。


「にしても差別ねぇ…龍の俺は差別対象なのかね?いや、討伐対象か」


 そんな事を呟きながら就寝へとつく。

 こうして王都での1日は銀猫亭との出会いと宗教の情報を入手して終わったであった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、冰鴉です。


 今回は龍とドラゴンと辰についての説明を。


 まずこの世界では龍とドラゴンは同じ物を指します。竜については感覚的には龍の劣化と思っていただいて構いません。


 そして辰ですが、これも言わば龍なのですがこの世界ではドラゴンとは別物ですね。

 性能や強さとかはドラゴンとほぼ同じですが骨格が違い過ぎると言う事で別種族扱いです。


 辰は言わばポケ◯ンのレック◯ザやギャラ◯スと言った骨格だと思ってください。

 現実で言えばデカいリュウグウノツカイ…ですかね?

 いわゆる東洋の龍をこの世界では辰とさせて頂きます。

 西洋龍をドラゴン・龍と表記

 東洋龍を辰と表記

 この感じで行かせてもらいますのでよろしくお願いいたします。

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