第33話キマイラとかって結局魔改造生物って事よね?
「うーん、やっぱり出てくる魔物は弱いな。経験値の足しにもならないし実戦練習にもならない…適当な氷の礫一個で倒せてしまう」
今俺はセレスの街から王都に向かっていく道を歩いている。
出てくる魔物はゴブリンやボア、ウルフにラビットと脆い種族ばかり。どうせならスモールドラゴンぐらいの奴でも出てこないのだろうか?
馬車に乗ったり飛んでいかないのか?と思うだろうがここは特段危険ではないので人型生活を満喫する為に歩こうと思ったのだ。
「今は人型生活を満喫しているが…いつ龍型の生活を送ろうかなぁ。どうせなら龍型でも人と関わっていきたいんだよな」
ずっと1人で過ごすのも寂しいから私的には人と関わって過ごしたいのだ。それは人型でも龍型であってもそうなのだ。
森での生活も少し寂しかった。味方は居らず、話し相手も居ない…異世界と進化と言う新鮮味のある事があったらあんまり気にしなかったが寂しかったのは事実だ。
「スタンピート止めてなんか英雄視されてる感じあったしいっその事人類の味方の龍って印象付けるか?それなら敵対もしないだろうし」
そんな事を考えていると右と左の二又に別れた道に着いた。
「おぉ、ここか。右が学園都市で左が宗教都市だったか?んで道のない真ん中が冒険地帯ね…」
この二又に別れているのはこの先にある森がセレスティア森林で言うAランク圏の魔物が最奥に出るため危険地帯として一般人は入らない様にする為である。
「まぁ真ん中行くよね。近道だしまだスキルも使い慣れてる感じしないし」
そう言って堂々と真ん中の道を歩いて森の中へと入っていく。
森の中に入り木によって周りから見えなくなったところで1人の青年は黒龍へと変わった。
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デッドベアと呼ばれる熊型のBランク魔物を翼脚で殴り飛ばし、仰向けになった所で翼脚を振り下ろして頭部を地面へとめり込ませる。
『グォ…ガァア』
どうやら今の俺の爪はフロストバイトの名の通りに切り付けたらそこを凍らせて凍傷にするらしく、切り付けたら傷に霜が付いていた。
そこから氷魔技の冷気操作をして体内から凍らせていき、絶命させたのだ。
(便利だな、傷さえつけれれば敵が硬くとも倒せるのは)
傷が肉に入り込めばそこから冷気操作で連鎖的に凍らせていけるのだ、感覚的に言えば自由自在に操れる毒である。
(にしてもここの魔物は結構手応えがあるな…人型のが少ないっぽいが)
セレスティア森林とは違ってここは動物や虫が多いらしい。
森の浅い所にはゴブリンやスライムが居たがかなり奥に入るとアーマードビートルや風刃鎌鼬、先ほど倒したデッドベアなどが出てくる様になった。
(にしても熊肉って割と脂身が多いんだな…汁物とかに良さそう………うん?)
熊肉を少し味わっていると背後からガサガサと音がしたのでそちらを見てみると——
『グオオオオ!』
(あっぶねぇ‼︎)
急に襲ってきたのでアイスウォールを発動しながら後方へと退避、改めて襲ってきた魔物を見てみると中々不思議な姿をしていた。
ライオンの頭に羊の身体、そして蛇の尻尾。前世ではキマイラとか言われていたが改めて見ると魔改造された生物にしか見えない。
(熊よりも強そうだな、今回は氷魔技と爪縛りをするか!)
そうして相手を見据える。
まずはフロストフィールドで周りを霜で覆い、幻想的な景色へと変化する。これは冷気操作で多量の冷気を操作する為の準備的なものだ。
『ガァオオ!』
キマイラは気にせずにこちらに向かってきて走り出し、前足で切り掛かってきた。
もちろん横に避けるが避けた先で蛇が噛みつこうとしてきたのでアイスアローを放っておく。
すると即座に反応してアイスアローを避けるのではなく、アイスアローに蛇の身体を巻き付けてそのまま弾道を誘導してこちらに飛ばしてきた。
(そんな事出来るの⁉︎器用すぎない?)
とてもじゃないが俺には出来ない芸当である。
そんなふうにどっちつかずな攻防をしていると尻尾の蛇の動きがだんだん悪くなってきた。
(…そっか、蛇は爬虫類だもんな。変温動物の弱点は環境だよな)
今の環境は一面の霜に俺が操作している冷気が纏わりついてる。動きが鈍るほど体温が変化しても仕方ないのだ。
さぁどうしようかと思っていると尻尾の蛇がキマイラの胴体に巻き付いた。どうやら本体の体温で体温調節をするらしい。だがかなりの悪手だ。
再びキマイラが突進してくる。
俺はそれを見据えてキマイラの目の前にスノウウォールを展開、雪の壁である。
勢いを殺せずにそのまま雪の壁へとキマイラは激突し、雪の壁に埋まる。
(ここまできたらチェックメイトだな)
冷気操作をして口から冷気を入れてそのまま身体全身を凍らせる。
羊の身体のため、表面は冷気が効きづらかったが体内はそこまでの様であっけなく凍りついた。
(物理特化な魔物だったな。炎とか吐かれたらちょっと面倒だったかも)
冷気操作でスノウウォールから冷気を抜いて水へと変化させて出てきたキマイラの心臓を貫いておく。
(属性って言うのはかなり強力だなぁ、相手が属性の耐性を持ってなかったらかなり楽だし。だがまぁ、俺自身も気を付けないとな。属性の耐性って氷くらいしかないし)
相手に耐性がなければ即座に凍らすことが出来るしこちらもダメージを受けやすい。
風刃鎌鼬と戦った時は風魔法がかなり痛かったのだ。
(今は魔法抵抗が妙に高いから大丈夫だけどこれより先の強いやつと戦う場合は属性耐性が大事だな…耐性はその属性に対する魔法抵抗に補正が掛かるって感じで結構大事そうだし)
そう思いながら森を進んでいくとどんどんと出てくる魔物が弱くなってきた。どうやら森の中心部は抜けたらしい。
(流石にもうそろそろ人型に戻るか…王都の冒険者とかと遭遇する可能性あるし)
討伐依頼を出されない為にも人型に戻っておく。
そのあとポツポツと初心者冒険者らしき人達が戦ってるのを遠目に見ながら森を抜ける。
「さて、王都はどんな所かねぇ」
近づいてきた魔物は重鱗射撃で撃ち抜いてそのまま鱗ごと死体を収納しながら平原を歩く。
こうして遠目からでも王都が見える場所へと来たのであった。
ちなみにだがキマイラの肉は普通に美味しい羊肉の味だった事をここに記しておく。
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