第30話スタンピード終結。そして次なる進化

 フォレストドラゴンとの戦いが終わり、大体1週間。後片付けや魔物の処理などがやっと落ち着いてきた。


「じゃあゼノさんってもうそろそろ王都に行くんですね」

「色々見てまわりたいからねぇ。ここで過ごすのも良いけどちょっと黒龍の英雄視が凄くってね」

「それはしょうがないですよ。歴史的規模のスタンピードをほぼ1匹で解決したゼノさんが悪いです」


「受け入れるしかない…か…」


 俺は今レティと会話をしている。

 やはりこの子は善性に振り切った子にしか思えない。俺を魔物と知っても態度を変えずに接するのだから。


 そして俺はもうそろそろこのセレスの街を出ようと思ってる。

 せっかくの異世界だから色んな所を見て回りたいって言う気持ちがが6割ほど、あとの4割はスタンピードで大立ち回りしたせいか巷の話題が俺(黒龍)一色なせいで聞いててすごいムズムズするからだ。


「それで、王都ってどんな所なんだ?」

「プライム王国の王都はプライマルって言う名前で世界でも最大級の街ですね。王様の魂称号のおかげでここ数十年間は治安もとても良くて賑やかで過ごしやすい街ですよ」

「聞いた限りだと理想郷って感じがするな」

「あながち間違いじゃないかもですね。貴族の横暴みたいなのも無いですし犯罪が起きれば即座に衛兵が飛んできますし…一般人にとっては穏やかに過ごせる理想郷かもですね」

「なるほどなぁ、情報ありがとな。お礼は鱗で良いか?」

「いえいえ、どう致しまし…鱗は絶対にやめてくださいね?未発見種族の素材なんてどうすれば良いんですか」


 可愛い小動物っ子を困らせながらも次の行く街を決める。


(次は王都プライマル。世界最大級ってのはどのくらいなんだろうか…楽しみだな)


「じゃあ、俺はここら辺で」

「はい。また会う機会があったら話しましょうね!」

「おう、改めてありがとうな。街に入れるようになったのも全部レティのお陰だし」

「当然の事をしただけですから。それでは、また」

「またな〜」


 そう言って門付近でレティと別れて俺は森へと赴く。


(もうちょい奥深くまで行くか)


 翼脚を生やしてCランク圏ぐらいまで飛んでいく。

 今からやるのは進化である。


(フォレストドラゴンを倒してからずっと温かい感覚に包まれてたけどこれともお別れかな…結構心地良かったんだが)


 進化はやろうと思えばいつでも出来たがここ1週間はずっと街に居たりしたし、姿が少し変わるのもアームズ→アーセナルになった時に分かっていたから離れる時に進化すると決めていたのだ。


(進化を終わらせて少しスキル検証したら王都の方に行こうかな)


(まぁとりあえず進化先確認かな)

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 進化先を選んでください。


【フロストドラゴン()】

 氷属性竜種正統進化先…?

 アイスドラゴンの上位種。

 氷を巧みに扱い、自身の周りの温度を常に低下させる。


【フロストバイトドラゴン()】

 氷属性竜種特殊進化先…?

 フロストドラゴンの偶然変異種。

 得意属性(氷)をその身に宿し、ブレス以外のスキルとして発現させぬまま宿し続けてついに覚醒したドラゴン。

 魔法と冷気を自在に操り、自身のテリトリーを凍土と化す。


【タクティクスドラゴン】

 兵装竜種特殊進化先…?

 あらゆる兵器を生成して支配下に置き、集団戦に特化した種族。

 兵器の知識の有無で個体差が大きく変わる。

 個体によっては一国の軍にも立ち向かえる。


【禍罪呼ブ意識】

 異形大罪種正統進化先。

 罪の力を振り撒き、世に混乱をもたらし災いを起こす意識。

 現れれば最後、討伐されるまで災いは止まらない。


 --------------

「いつも通り正統進化はパスとして…氷属性の特殊進化?」


 今までずっと見慣れてきた「氷属性竜種正統進化」も勿論あるが今回は「氷属性竜種特殊進化」である。


「得意属性が氷なのに俺が使う氷ってブレスだけだからな…是非ともなりたい進化先だな。んで次は…アーセナルの上位種か?」


 次に出てきた「タクティクス」、これは確か戦術や戦略と言う意味だし進化の説明的にもアーセナルの機微技術を集団戦特化させた感じになるだろう。


「ただなぁ…そもそも前世の兵器自体殲滅とか破壊を追い求めたやつだからな。特化してる物を特化させてどうするって感じがするな」


 絨毯爆撃とかもやろうと思えば今の俺でもやれるのだ。

 爆撃機を自律起動させて自身の爆鱗射撃すれば大範囲を殲滅出来るしスタンピートの時と同じように装甲車を走り回せばそれだけでも集団には大ダメージになる。


 わざわざ集団特化させる意味もないだろう。


「最後に禍罪呼ブ意識だが…もはや龍じゃないな」


 もはや「異形大罪種」なのだ。「竜種」ですらなくなっている。


「メタモルフォスの進化も進めば種族が消えるのか…流石に無しだな。俺の求める姿は龍なのだから」


 いくら「龍の姿」になれどそれは「龍」ではないのだ。

 わざわざ「龍」である今を捨てて違う存在にならなくても良いだろう。


 俺が思い焦がれて来た龍への想いは偽物で満足出来ないのだ。


「よし、進化先はフロストバイトドラゴン!この世界初めての属性龍だ!」


 そうして進化が始まる。

 正統進化せずに溜め込まれ続けた得意属性の能力が遂に開花するのだった。

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