第28話男装麗人と龍、レティを添えて
(…俺はどれだけ戦ってるんだろうか?)
もうかれこれ数時間を戦ってそうだが一向に数が減らない。
森の何処にこれだけの魔物がいるんだっていうほどである。
(Dランク圏の魔物が出てきたからやっと後半戦か?)
つい数十分前くらいからやっとちょこちょこDランク圏に生息している魔物が出て来たのだ。後方にCランクのハイオークが居たのは確認済みなので多分後半戦だろう。
(にしてもめんどくさくなってきたな…)
序盤が終わって中盤に差し掛かる頃までは自分自身で動いていたがあらかたスキルの確認も終わったので今はもう敵の大群を見ながら佇んでいる。
ちなみに今の処理方法は重鱗射撃と爆鱗化の同時使用で絨毯爆撃しながら装甲車っぽいのでひたすら轢き殺している。
流石に冒険者も疲弊し始めてるから俺の前に有刺鉄線みたいな感じで柵を張り巡らしてるから魔物もそんなに入って来ていない。
…人類の味方感がすごい。偶然現れて魔物殺して立ち去る事が無理なくらいに人類に加担している…大罪の龍でもあるのに。
(にしてもあとどれくらい続くんだろうなぁこれ。歴史的に大規模とは聞いてたがここまでとは…森林の生態系壊れてそうだな)
「少しよろしいだろうか?」
ぼんやりと大群を眺めてるとなんか後方から声を掛けられた気がするがまぁ気のせいだろう。魔物の一種に入る龍に声を掛ける物好きは居ないと思う。うん。
…魔物にしては人類の味方感が凄いけど。
「あの…ドラゴン殿、少し話をしたいのだが」
どうやら俺だったらしい。なんとも物好きな…
とりあえず声を変えられた方に顔を向けると数人の冒険者とレティが居た。
(えっ、なんでレティがここに居るの?レベル的にも役割的にも後方でしょ貴女…)
「…話が通じるらしいな。急に失礼した。私はこのセレスの街のギルドマスターをしているシルビアだ。色々と聞きたい事はあるのだが…その前にまず喋れるだろうか?」
冒険者っぽい人の1人の男装の麗人さんはどうやらギルドマスターらしい。
(うーん…どうしようか。話すには人の姿にならないとだけど正直今後街とか都に行くとなるとあんま人型を見せたくないんだよな)
自分が今や希少な存在なのは理解しているし目立ち過ぎると俺の中にある大罪もバレる可能性がある。
ただ事情を話しておきたいのも事実なので…
(レティとギルマスさん以外は引いてもらおうかな)
殺傷力がほぼない鞭を作り、ギルマスとレティ以外の冒険者を押し除けてそのまま鱗で壁を作る。
「んなっ!隔離だと⁉︎」
(ヤッベなんか誤解してるわ)
即座に壁を作って人化する。
「人化なんて事が出来るのか…底が知れないな」
「よし、これで喋れるな」
「えっ…ゼノ君…のお兄さん?」
「いや、ゼノ本人だぞレティ」
ギルマスは隔離した瞬間に攻撃体制をしていたが俺に敵対するつもりが無いと分かったら即座に体制を解いた。
…無闇に討伐しようという訳じゃ無いのがありがたいね。
「それでレティ、この人本当にギルマス?」
「えっ?あ、うん。正真正銘のギルドマスターだよ」
レティが言うなら間違いないな。善性に性格を割り振った様なレティが言うのだから大丈夫だろう。
「それでギルドマスターが俺になんの様だ?」
「あぁ、まず街の防衛に手を貸してくれた事の礼がしたいのと…何故手を貸してくれたのか見当がつかなくてな」
「なるほどね、礼は言葉だけで良いぞ。何か渡されても困るからな」
「そうか…出来れば盛大にお礼をしたいのだが…この周りに見られないための壁を見る限り人の姿と龍を関連つけさせたくなさそうだから言葉だけで済まさせてもらおう」
「その方がありがたいからな。それで、何が聞きたい?」
とりあえず立ったままなのもあれなので椅子を作る。
機微技術錬成の応用幅が凄い。兵器の中にも椅子とかあったりするから作れるのだろうか?
「…あぁ、色々聞かせてもらいたい。まず大前提に、君に敵対の意思はあるのか?」
「無いな。全く無い。と言うか人間は2番目に敵に回したく無い相手だからね」
「君ほどの力を持ってても敵対したくないとは…それは何故だ?」
「俺は人間のいざという時の団結力ってのを知ってるんだ。この大災害を前にして立ち向かおうとしてるんだからほんと恐ろしいったらありゃしないね…それに母体数の多い人間だと強力な奴が居ても不思議じゃ無いしな」
「な、なるほど…思った以上に人類を脅威と見てるんだな…それじゃあ次だ、何故この街に味方しようとしてくれたんだ?」
「そりゃそこのレティが居たからだな」
「えっ私?」
「レティが居るから?」
俺はギルドカードを取り出しながら言う。
「人の世について全く知らない俺に対してああも親切にしてくれたレティを見捨てるのは流石に心苦しいってのが9割であと1割は一応ギルド会員だからって言うのが詳細な理由だな。一応俺の鱗を渡したが希少すぎてどうしようもできなかったらしいし」
「あの鱗は君のだったのか…いや、確か君の種族はアーセナルドラゴンなのだろう?あの鱗はアームズドラゴンのだったはずだが」
「それは俺が進化したからだな。今日進化したから種族が変わったんだろうな」
「なるほど、アーセナルはアームズの進化種だったのか…それじゃあ次は——」
『ガアアアアァァァァアァア』
「…誰の咆哮だ?」
そう思って壁に穴を開けて覗いてみると俺が森に居た頃のフォルムをした深緑の龍がいた。
「フォレストドラゴンじゃん」
「フォレストドラゴンだと⁉︎そいつが今回のスタンピートの原因か…!即座に冒険者達を退かせな——」
「丁度いいね、物足りないと思ってたんだ」
「——いと…丁度いい?」
とりあえず龍の姿に戻って壁を鱗に戻して回収する。
壁を解除して見た景色は死体の山である。何処を見ても死体しか見えないし、装甲車に押し出された死体は小山となっている。
…後処理が大変そうだ。
(龍を見るのは白龍以来だが白龍とは比べ物にならないほどオーラを感じないな。やはりあの白龍は別格か…!)
意気揚々と武器を展開しながら前に出る。
(初めての龍戦だ。楽しませてもらおうじゃないか!)
こうして龍生初の竜種戦が始まる。
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種族:フォレストドラゴン
lv:146
体力:611/621
魔力:620/631
攻撃力:812
防御力:741
魔法抵抗力:584
スキル
龍技lv7 毒ブレスlv62 植物魔法lv23 毒魔法lv26
耐性
物理耐性lv43 魔法耐性lv21 毒耐性lv58
称号
植物の守護者
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