第24話手応えのない人生活

 初めてこのセレスの街に来てから一ヶ月ほど経った。


 この一ヶ月間、基本的にクエストを受けたりしながら街を散策したり買い食いしたり武器や防具を見てみたりしながら過ごしていた。


 その結果もあって冒険者ランクはEランクになっており、今ではオークとかを狩っている。

 まぁオークと言っても森で戦ってたハイオークでは無いから首を飛ばすだけで終わる戦闘だが。


 まぁそんな特に苦戦も無い人の生活をしてるからかlvもそんなに上がっておらず、スキルレベルの上がり具合も緩やかだ。


(なんか手応えが無いなぁ)


 今日も今日とてクエストボード前でクエスト内容を吟味する。


(オークにツインホーンラビット、ゴブリンエリートかぁ…変わり映えしないな)


 最初の1週間程は人間生活を謳歌してた。だが最近はあまり手応えを感じていない。

 原因は分かってる。人の生活圏の近くは魔物が大体弱いのだ。


 そんな風に思っていると受付嬢が慌てながらクエストボードの横に目立つボードを立て掛けた。


(緊急クエスト…突然変異オーガの討伐か)

(そういえばオーガとは戦ったことがなかったな。)


 参加条件はEランク以上で俺も行ける。

 ならばと思いながら場所を見てみる。


 場所はセレスティア森林の少し奥、強さでいえばDランク系の魔物が多い所だろうか?ハイゴブリンが居た気がする。


(よし、行くか)


 討伐証明部位は角らしい。街の外に出て森に入ってから翼脚を出して目的の場所まで飛んでいく。


 翼脚は便利なのだ。実質腕が二本増えるし飛ぶ事も出来る。畳んでおけばマントに見えるからそこまで怪しまれないのだ。一応を考えて普段は出してはいないが。


「おっ、あれがオーガか」


 遠目から見てもよく分かる特徴をしている。

 人型骨格に大柄な身体に鬼のツノ、鮮やかな緑の姿をしており、ゴブリンを成長させてツノを生やし、ムキムキにした感じだ。


「よし、今回は格闘縛りだな」


 最近のブームは縛り戦闘である。あまりにも退屈な狩りをしていて練習にならないと思い、戦闘方法を縛って戦ってるのだ。


 例えば重鱗射撃縛りや飛び道具縛り、打撃縛りや鞭縛りなどしている。

 …ステータスのせいかあんまり縛りの意味なくすぐ倒せてしまうのだが。


 とりあえず今回は格闘と決めてオーガの背後に降り立ち、武器錬成で拳大ぐらいの大きさの球を作り出して軽く投げる。

 この軽く投げた球でもゴブリンだと気絶まで行くのはどうにかしてほしい。


「グォ?」


 球が背中に当たったオーガはこちらを向き、俺を見据えた。


「グォ…ガアァァァアア!」


 俺を獲物とでも見定めたのか手に持ってた大剣を俺に向かって振り下ろしてくる。


「うーんこの程度か、強く殴ったら気絶しそうだな」


 その大剣を翼脚で受け止め、そのまま翼脚の龍爪で大剣を全力で掴んで…砕く。


「さて、武器を失ったお前はどう動く?」


 アームズドラゴンになってから思うのだが武器の重要度はかなり高い。剣だと殺傷力が上がるし弓矢を使えば遠距離もできる。鞭ならば拘束と自前で即席武器を作れる俺にとって武器は重要な手段となっている。


 さて、そんな重要な武器を失ったオーガだが俺を強く睨みつけている。かなり警戒しているから多分もう餌とは見ていないだろう。


 すると一際強く睨むとオーガの足元が盛り上がり、そのまま弾となってこちらに飛んできたので横に軽く飛んで避ける。


「おぉ、あれが魔法ってやつ…うぉっと」


 避けた先に向けてパンチを繰り返してきたので受け流してそのまま翼脚と腕を使って背負い投げの要領で地面に叩きつけてそのままオーガの顔を翼脚の片手で押さえつけてそのまま地面にめり込ませる。


「まぁDランク圏の魔物じゃこんなものか」


 俺が森で食料としていたハイオークはCランク魔物である。

 ちなみにCランク魔物はCランク冒険者のパーティで同等近くの戦力であると言われている。


 そんな奴を食料にしてた俺からするとオーガと言えどそこまで脅威じゃ無い。

 ちなみに今現在頑張ってオーガが起きあがろうとしているが押さえてけているから全然起き上がれていない。

 うつ伏せで駄々捏ねてるみたいに見える。


「特に縛っても苦戦しなかったな」


 そう一言言って空いてる方の翼脚を使って首を掴んでそのまま折る。

 ステータスがある世界といえど生命活動の重要器官を壊せば体力が一気に減って殺せる。前世での致命傷はこちらでもちゃんと致命傷なのだ。


 とまぁ、最近の戦闘はこんな感じだ。もうそろそろ依頼とか関係なく森の少し奥に行っても良いかもしれない。あまりこの生活をしていると戦闘の感が鈍りそうである。


「まっ、とりあえず依頼報告だな」


 即席でナイフを作ってツノを剥ぎ取ったあと、街に向かって見かけた魔物にナイフを投げながら帰路へと付く。

 帰宅と投擲練習の合わせ技だ、素材回収できないのは惜しいが別に良いだろう。

 お金にはそこまで困ってないし最悪住めるほどお金が無くなっても森で生きれるからな。


 こうして街へと戻る。俺が通った道には死体が散乱してるのであった。

 …森に過ごしてた時を思い出す惨状である。





「ほっ、よっ!…あぶねっ!そこぉ!」

 あの後ギルドに達成報告をした結果俺はDランクへと上がったのだ。どうやら異例の速さらしいがあんま実感は無い。

 だってあの程度を倒してD級と言われても…である


 そして今現在はリハビリがてらハイオークしかいない集落にて多対一を楽しんでいる所だ。

 縛りは大罪の権能だけを縛っており、権能以外の能力をガンガン使いながら戦っている。


 ちなみにただのCランク圏であり、森を出る前に見つけてた集落ではない。そもそもあの住んでた森の場所は多分未探索領域だ。Sランク圏とも言われている。


 まぁだから今俺は久しぶりのまともな戦闘を楽しんでいるのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る