第23話格上でなくとも圧は出せる

 俺は鱗をレティに渡した後にとりあえず常設依頼の所を見て、簡単そうなのを記憶して。レティが追いかけてきてるかもと思って急いで街の外に出てそのまま走りながらゴブリンやラビットを狩りまくった。


 感覚的には森でのスキル練習と似ている。変幻自在を使いながら鱗で剣を作り出し、ゴブリンの首を刎ねる。


 ナイフを作り出して少し離れたところに居るラビットに投擲する。


 龍武芸百般スキルは何気に万能で戦闘系に関してはそつなくこなせるし、どんな戦闘でも龍武芸百般スキルを必ず使用するからスキルレベルも鍛えやすい。空を飛ぶだけでも少しレベルが上がったりした。


 そうしてある程度狩って満足して、ギルドに戻り換金してそしてさぁ宿屋を探そう!と言った所だったのだが…


(どうしてこうなった)


 今現在、俺はレティにギルドを出るところで捕まり、宿屋に連れ込まれたのだ。

 断じてえっちなのでは無い。そんな事を考えれない。


 だってギルド出た後に捕まえられた時から今現在までレティが凄い圧を放ってるんだもの。

 森での強者の圧力が「さっさと失せろ」であるならばレティが放っている圧は「絶対に逃さない」である。


「さて、なんであんな物を渡したのか説明してもらおうか?」


 非常にニッコニコである。側から見れば可愛いのだが当事者からすると圧が滲み出てるのが分かる。


 …なんか身体が震える。恐怖しているのか?俺割と強くなったよな。

 そんな考えと同時に君ほんとにlv9…?と言う考えも持ってる。圧だけならあの森の強者達と渡り合えそうである。


「えっと、何故渡したかなんて…あれぐらいしか渡せる物無かったし」

「ねぇゼノ君、あの鱗の希少性って知ってる?」

「希少性?」

「…分かってなかったのね。じゃああれはなんの鱗か知ってる?」

「ドラゴンの鱗でしょ?」


 俺の鱗だ、ドラゴンの鱗で間違いない。


「えぇ、そう。ドラゴンの鱗。じゃあそのドラゴンの種族名は?」


 これは少し言うのに迷った…けど種族名程度なら大丈夫か。


「えっと、アームズドラゴンだね」

「あぁそう、分かってたのねアームズドラゴンの鱗なのを…じゃあその発見例は?」


(えっと、鑑定結果だと確か過去に数体だっけ?でも確か俺って記憶喪失の設定だったよな?なら知らない方がいいか)


「えっと…15体くらい?」

「二体程度ですよ、二体程度…そんな

 …そんな魔物の…!こんな世界に数個しか無いような素材をどうして渡してるんですかぁ⁉︎」


 そう言い放って肩を掴んで凄い揺さぶってくる。

 視点がブレるブレる。空を飛んだりする以上酔う事は無いが視点が定まらない…常人なら酔いそう。


「えっと、売ればいいんじゃない?」

「王族でも欲しがるような素材を売れと⁉︎」


 王族⁉︎俺の鱗ってそんな貴重なの⁉︎めっちゃ即席武器に使用してますけど!まぁ今後も使用するけど。だって鱗再生すれば幾らでも出てくるし。


「もうどうすればいいのあの鱗…ギルドも買取不可だし…ちなみに返すのってダメ?」

「お礼の品だから返されても困る」

「はあぁぁぁ…もういいや、家宝にでもしとこう…」

「かっ、家宝…」


 どうやら俺の鱗が家宝になるらしい。なんか変な気分になる。前世で言うなら切った爪を渡したら喜ばれた、みたいな…ヤンデレかな?


「あの…それでなんで俺はここに連れてこられたんだ?」

「えっ?あぁそうだった。ゼノ君記憶喪失だし宿屋とか知らないかなぁって思ってね。あとはなんて物渡しちゃってくれてんのさって言いたかったのとほっぺムニムニしてやろうと思って」

「あぁ、それは確かに。ありが…ほっぺムニムニ?」


 確かに宿をどうしようか悩んでたし、最悪龍の姿になって森で寝ようかとか考えてた所だ。


 にしてもほっぺムニムニとは?そう聞き返そうと思ったらレティが俺のほっぺに両手を伸ばしてムニムニしてきた。

 …なんかめっちゃ感情が伝わってくる。「なんて物を渡してくれたのさ!」と「あの鱗どうすればいいのよ…」って言うのが凄い伝わってくる。


 …なんかごめん。そこまで悩みになる様な鱗だとは思わなかったんだ。


「本題を忘れてたけど宿に関してはここが良いよ。治安も良いしご飯も美味しいしお手軽な値段なんだよね」

「確かにそれが良いかもな…じゃあこの宿屋にしようかな」

「うん、それが良いと思うかな」


 そう言ってレティと別れて宿を取る。

 ちなみにレティと話してる時はずっとほっぺをムニムニされていたが何も言うまい。子供のほっぺってプニプニしたくなるもんね…


 そんなこんなで龍生初の調理済み飯を食べたり、しっかりとした寝床で寝て初めて人と出会った日を終えるのであった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あとがき

 はい、作者の冰鴉でございます。


 ちょっとレティの口調が統一されてない気がするけどまぁ、多めに見てくださいな。鱗のインパクトが強すぎて接し方がズレたとでも思っててください。


 正直人の世編ではどう進めようか迷ってるんですよね。普通に冒険者として成功させるか、それとも大罪教と接触させるか…

 まぁ今の所は冒険者として人の姿でいろんな敵と戦って行きたい所。あと定番イベントのスタンピートとかもね。


 とりあえず今後の展開にご期待ください!

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