第19話森の姿
スキルを鍛えるのと久しぶりの人の身体に慣らすためにゴブリンやウサギ、オークを狩っていきながら森脱出の方法を考える。
「正直この森は周りの生物が強すぎる。ここは白龍の巣の近くだからマシだけどオークの生活圏を超えた瞬間雰囲気が変わる」
この森はかなりやばい。多分だがオーク達もこの元白龍の巣の強者が寄らない場所でギリギリ生活できる生物なのだろう。
オークの生活圏を超えた瞬間空気が変わるのだ。ピリピリとした空気が身体に刺さり、「弱者は帰れ」と言う圧がとんでもないのだ。
さながら世界中の猛者達を一箇所に集め、その猛者達を不仲にさせたかのうような空気である。
「やっぱ空かなぁ、一度飛んで確認したけど結構森が続いてんだよな。出るなら朝か」
そう言いながらオークの後頭部を翼脚で掴み、地面に叩きつけ、そのまま抑えたまま錬成剣で首を突く。
「オーク討伐も簡単。進化ってのは凄いな、この前苦戦してた相手に余裕持って勝てるんだし」
「ただまぁ、良い感じの敵が今居ないんだよな。オークの上位種たちはオークより何倍も強い感じだし完全に格上。そいつら以外のやつは生活圏外のやつだけど戦う気すら失せるわ」
そうして考えながら夜になり、巣に戻る。
「よし、決めた!明日の朝に空飛んで森を抜けよう!人型なら小回りも効いて目立たなさそうだし、最悪ヤバそうなら微生物にでもなってやる」
変幻自在は案外どんな生物にでもなれる。
自分が知っている生物なら自身の大元より体積が大きくなければ問題無いのだ。微生物どころかウイルスにもなれる。増殖性能は無いが。
そうして夜になり、龍の姿に戻って食事をして眠りにつく。
人での生食と岩肌で寝るのはキツいなぁと思ったからである。
------------------
「さて、いざ森からの脱出だ!」
既に食事と人化(翼脚有り)は終わっている。あとは飛び立つだけだ。
「俺に持ち物は無いし、食事も終わらせた。よし、行こう!」
そうして翼脚を広げ、羽ばたく。
「高度は出来るだけ高く!落とされたらたまったもんじゃない」
人型と言えど龍であるのは変わらない。それに氷属性があるのだから高高度特有の低気温や気圧、風圧は特に問題無い。
「今までありがとな、洞穴と白龍の領域さんよ。結局白龍に頼ってる感じがしたが…流石にしょうがないか」
そう言って比較的弱目の(それでも格上)の方角に一直線に進んでいく。
(こう見ると広大な森な事で)
一面森である。遠目に山脈も見えるがそれ以外は森しか見えない。
(…圧は無いな、雲近くで飛んでるからか?)
そう思いながら滑空しながら飛んでいく。普通に飛ぶより滑空の方が速度が出る。
この森を出るのは出来るだけ早い方がいい。もし強者に目をつけられたらキツイのだから。
(にしても上空には鳥すら居ないな。そう言えば巣の周辺も鳥が居なかったっけか?)
…一切鳥が居ない。風圧によって起きる風切り音しか聞こえないし、生物の姿が見えな…遠目に見えるデカい一目の巨人は見える。
(あれサイクロプスって奴か?ここからみても強者感がすごいなぁ)
そう思いながらもひたすら一直線に飛んでいく。さながら飛行機になった気分だ。前世では飛行機も乗ったことはないが。
そうして飛んで数十分…いや数時間だろうか、陽が完全に真上に来ている。それだけ飛んでいる時、平原が見えてきたので一旦その平原へと降りる。
「良かった、強者の圧は無いな。にしても翼が疲れた…飛びながら変幻自在で足とか腕を翼脚にしながら飛んだけど疲れた。」
腕も足も翼脚もクタクタである。
「グギャ!」
「んあ?」
なんか声がしたのでそちらを振り返るとゴブリンが居た。なんか腰布が今まで見てきたゴブリンよりかなり汚いが。
「なんだゴブリンか、邪魔しないでくれ」
休憩中なのだ、邪魔しないでほしいと強く思いながら龍技の一つ、重鱗射撃でゴブリンの頭・首・胸
に向けて鱗を飛ばす。
「…は?」
ゴブリンに効かなかったわけじゃない。むしろ逆だ、鱗一枚だけでも殺せてた現状に驚いてるのだ。
(頭は貫通、首と胸は穴が空いてる…どうなってんだ?)
そうして鑑定してみる
【ゴブリン】
最弱の生物の一角。道具を使ったり他ゴブリンと協力する知能はあるがそれだけである。脅威は数である。
lv:10
体力:0/13
状態:死亡
鑑定結果を見て納得した。
(そっか、今まで戦ってきたゴブリンは【ハイゴブリン】。ただのゴブリンじゃこうなるのか。確かに最弱の一角だろうな)
そう納得してまた休憩に入る。
草原に大の字に横になって、周りを変幻自在+武器錬成で鱗で作った防護柵みたいにする。
武器の定義もかなり広いものだ。攻撃出来るならなんでもいい感じがしている。
(多分だがここの敵は相当弱い。多少油断しても大丈夫だろう)
そうして目を瞑り、休憩がてらに仮眠を取るのであった。
「あの〜…あのー!こんな所で寝てたら死んじゃいますよー!」
何やら人声が聞こえてきた。身体を起こして周りを見渡すと1人の少女、女性だろうか?高校生くらいの子がこちらを見て立っていた。
「…誰?」
「あっ、レティです。…じゃなくて!なんでこんな所で寝てるんですか!死にたいんですか⁉︎それにこのトゲトゲした柵なんなの⁉︎閉じ込められてるんですか⁉︎」
なんか凄い大ぶりな仕草で動いて色々言ってる。小動物感がすごい。見た目の身体年齢はあちらが上なのに。
「あぁすまん、疲れてたんで寝てたんだよね。あと死ぬ気は無いしこの柵は俺のスキルの一つだから気にしないでくれ」
ある程度疲れも取れているから俺は起き上がり柵に変幻自在を使って身体に戻す。武器に錬成しても身体の一部である事に変わらないから動かせるのだ。
「いや、死ぬ気が無いならなんでこんな所で寝てるんですか。ホーンラビットもゴブリンとか…も、もしかしたらウルフとか出るかもですよ?」
「いや、ラビットやゴブリン程度じゃ相手にならないからだけど」
「それでも外で寝るのは危機感が無いと言うか…と言うか貴方の名前は?」
そう言えば俺には名前がない。ステータスを開いても【未設定】なのだ。
前世の名前でもいいが異世界に来てまで前世と同じは面白くない。
(俺はこの世界での異物と言ってもいい。それに罪の力と言ったヤバめの力もあるし、姿すら変える…これは異質に感じるな。称号に異形種にもあってるし異質を表す【ゼノ】とでも名乗ろうかな)
------------------
名前が設定されました。
アームズドラゴン()の名前が【未設定】からの【ゼノ】となります
------------------
(あっ、自分で設定出来たのね。誰かに付けてもらわないとなのかと思ってたわ)
あとついでだ、記憶喪失と言う事にしておこう。これまでの経緯とか言われても困る。実は龍とか言いたくない、邪龍じゃないけど討伐対象かもしれないし。
「ゼノ、と言う名前だと思う。」
「へぇ、ゼノって言うのね。…だと思う?」
「記憶喪失でな、ゴブリンは相手にならないからここで寝たと言う事は覚えているんだが他は名前以外は思い出せないんだ」
(これで騙されてくれると良いんだがな)
「そっ、そうなの⁉︎どうしよう…こう言う時ってどうすれば良いの⁉︎」
中々に良い子そうである。小動物感も相まって騙されないか非常に心配だ。頭撫でたい。
「あー…そうだな、近場の街に案内してくれないか?今後野外で過ごすのもアレだしな」
「そっそうだね!私の住んでる街に案内するね!」
かなり混乱して慌てながらなんとか街へと歩き始める。
記憶喪失と言うだけでこんなに慌てるとは…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます