第15話豚は筋肉質、動ける豚はただただ強い

 まずオークの姿をよく見てみる。


 豚と人を足したような姿をしている。

 比重としては豚が八割だろうか?骨格を人型に置き換えた豚にしか見えない。


 まずは鱗射撃を牽制がてらに撃ち始め、鱗再生で鱗を補充しながら防御力が下がらないようにしつつ様子見をする。


(うん、あんまり効果は無いな…まさに牽制用としか言えん火力だな)


 効果はあまり無くて、オークの皮膚に軽く刺さる程度である。

 時々弾かれる鱗もあるから相当効果は低いだろう。エアガンみたいな火力をしている。


(皮膚には軽くだが刺さるんだよな…なら眼球に刺さるか?)


 オークとはまだ距離があるがオークは飛んでくる鱗を気にせずにこちらに走って来ている。


 ハイオークだからか、それともゴブリンよりもかなり大きいからか普通に遠目からでも迫力が凄い。

 肉が迫り来るのって圧があるなぁと、まぁかなりどうでもいい事を感じながらも鱗射撃を顔目掛けて行う。


 鱗射撃自体は正直まだ練度が低い。とてもじゃないが正確に撃ち出せるとは思わないから顔に向けて大雑把に放つ。牽制はこれで良いだろう。


 すると流石に低火力と言えど顔はヤバいと思ったのか片腕で顔をガードし、相手の視界を防ぐ事に成功した。


 それを確認したら俺は一気に飛び上がり、オークの身体目掛けて滑空しながら思いっきり突っ込み噛みついた。


(…っ!牙が離れない!)

 確かに噛みついたし、牙も入ったはずだが致命傷にならないと判断してすぐ離れようとするが何故か牙が抜けないのだ。


(身体強化…いや硬化か⁉︎)

 この状況はまずいと感じて爪や氷ブレスを使ってみるがオークのその潤沢な肉に阻まれてあんまり効果が見えない。


 すると猛烈に嫌な予感がした。

(なんだこれ、このままじゃ非常に不味い!鱗強化!ただそれだけじゃ凄い不安…嫉妬の権能!スキル対象【硬化】!)


 鱗を強化し、更に硬化を施す。するとその直後にオークが俺の尻尾を掴んだと思えば急に牙が抜け、そのままオークは俺を地面に叩き付けた。


(ガハッ…!オークの攻撃力でこれは洒落にならない…!)


 だがオークはそれだけに留まらずに再度俺を振り上げ、地面に叩き付ける。


(うぐッ!俺は棍棒じゃねぇんだぞ…!)


 正直言って状況はかなり悪い。

 オークは一心不乱に地面や木、近場の岩などに俺を振り下ろして確実に俺を無抵抗のまま殺そうとしている。


(鱗射撃は元々狙いが荒いのにこんな振り回されてるとまともに狙えない…!残ってる方法はブレスくらいか…)


 そう思い一か八かに賭け、氷と毒の混合ブレスを思いっきりオークに向けて放出する。

 氷と毒の混合だからだろうか?毒と氷が混ざり、毒の氷結晶としてオークに突き刺さる。


 威力の確認はまともに出来ていないが、薄らと見えた感じでは鱗射撃と同程度だろう。


 ただ急な抵抗に、それとも急な冷たさに、もしくは毒に、はたまたその全てかは分からないが非常に驚いたのか思いっきり俺をぶん投げた。


(あっぶねぇ…あのまま持たれてるのもヤバかったが投げた先に岩とかあったら致命傷だったぞ)


 投げられた速度はかなり速く、もし金属であれば岩にめり込みそうである。

 とりあえず無事に解放された事から安堵し、ぶつけられた時に剥がれた鱗に再生を施しながらオークを見据える。


(ある程度戦い方は分かった。ただ次掴まれたら終わりな気がする。慎重に確実に削るしかないな)


 今回あのオークの握力から解放されたのは驚きが七割を占めるレベルだろう。2回目じゃ驚かずにそのまま振り続けるかもしれない。


(牙は使えないな。爪と体術、ブレスと鱗か…まぁ俺が仕掛けた戦闘だ、本当にヤバいと思ったら権能をフルで使おう)


 こうしてオークは軽い毒状態ながらも投げた俺を見据え、そして俺は体制を立て直して戦闘は第二フェーズへと移行するのだった。


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 オークが思いっきり走ってきて手に持った石斧を俺に向けて振り下ろしてくる。


 それを俺はゴブリンの時みたく横に避け、反撃しようとしてくるがオークはそのまま横薙ぎをして来たので後ろにジャンプして距離を取りながら避ける。


(明らかにゴブリンとは格が違う。ステータスもだが次にする攻撃をちゃんと考えている)


 振り下ろしに横薙ぎ、そしてもし真上にジャンプしたらそのまま掴むつもりだったのだろう。斧を持っていない手が開いていた。


(反撃しないとだが、どう反撃する?)


 全身を肉に覆われたオークに致命傷を与える様な手段は俺には無い。

 喉に突爪をすれば行けそうだがそんな隙は今の所無いのだ。


(…地道に削るしかないか)

 そう結論づけて再度斧での攻撃をしてくるオークを避け、そのままの勢いで足元を爪で切りつけ、オークの背後に退避する。


 そんな攻防を続けているうちにオークは我慢の限界からか、斧を振りかぶり思いっきり投げつけて来た。


 狙いは正確、確実に俺に当たる機動である。


(流石に避けれる速度じゃない…!)

 俺は爪牙体術を使い、身体能力と爪を強化し、斧に爪を当てて勢いを殺し、無効化する。


(斧はもう…使われたくない咥えておくか)

 相手の手札を少なくするには武器を奪う。そのためにも斧を咥えて牙で固定する。


 …ほのかに豚の脂味を感じた。前世で食べた豚の脂と同じ味である。


(致命傷にならないし嫉妬の権能を使うか)


 怠惰で無力化すればそれで終わりなのだが、それはあまりしたくない。ただの狩りであれば良いがこれは戦闘であり、良い経験の場だ。

 ならば怠惰は使わずに戦うべきだろう。


 そうして斧を咥え、怒りに呼吸を荒くするオークを見据えるのだった。




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