第7話世界の重鎮たちは思惑を胸に、そして宗教は動く

???side

「陛下!大変です陛下!」


とある大国の謁見室にて表彰などの最中、国の重鎮達がいる中1人の情報伝達を任されている諜報員の1人が大慌てで謁見室に入ってきた。


「無礼であるぞ!事前の連絡も無く謁見室へと立ち入るなど何事か!」


そう良い近衛騎士が諜報員を摘み出そうと行動を起こそうとし…


「良い…して何事であるか、その様な急ぎの報告を告げよ。しかし現在は謁見中でもある。些細な事であれば承知はせぬぞ?」


そう威厳溢れる声と共に鋭い目を向ける玉座に座る1人の王、それは王者の魂の称号を持つ一国の主であった。


「ハッ!報告致します!

大教会にある理の間にて怠惰ノ権能、それと少し遅れてから嫉妬ノ権能の発現が報告されました!」


「...それは真か?」


「虚偽はありません」


その報告を聞くと共に国王は難しい顔をしながら対抗策を考える。


(怠惰と嫉妬の同時出現だと?いや、もしかしたらたまたまタイミングが合っただけかもしれん。だが危険な事には変わりない…とりあえず民に聞かれて不安を出させては行けない、とりあえず箝口令を出す事。そして軍による広範囲の調査をするべきか…大罪の能力は危険だ、一刻も早く処分しなければ…同盟国にも協力を仰がなくては)


「とりあえず分かった、これより厳命を出す。この事を知る者は今後我の許可無く怠惰と嫉妬に関する事柄を話す事を禁ずる。」


王者の魂に付属する能力の一つ、【厳命】自身の下に付くものへの支配命令であり、逆らうには公の場にて王者の敵であると言う宣言をするしかない。


(これで箝口令は終わり…次は対策だ)


「すまぬが緊急事態だ、公爵・侯爵・辺境伯以外の者たちは待合室、またはそれぞれの屋敷に帰られよ」


その言葉を聞き、貴族たちは少し不安げな、だがこの国の王ならばと信頼を元にそそくさと謁見室から立ち去っていく。


「諜報員よ」

「ハッ!」

「即刻第三、第四、第五騎士団長を呼んで参れ。至急である」

こうしてとある国は危険性を理解し、討伐を見据えたのだった。


???side


「皇帝陛下、どうやら怠惰と嫉妬の権能が検知された様です」


とある帝国の一室にて皇帝とその子供達、そして宰相の集まる場である。


「ふむ、我が子達よ、大罪の脅威については理解しておるな?」


その皇帝の言葉を聞き、第一皇子が口を開く。

「大罪の権能はレベルによっては太刀打ちできずに一国が滅ぶほど、特に怠惰は強制的に無抵抗にさせられると聞いてます」


次に第二皇子、

「嫉妬は能力の模倣だったか?とんでもないな…それにタイミング的にもし同じ個体が嫉妬と怠惰を持っていたら…恐ろしいな」


最後に第一皇女。

「しかし怠惰は基本動かないはず…不干渉をしていれば問題無いのではないでしょうか?」


それぞれの言葉を聞き、力を求める帝国のその皇帝はとある考えを提案する。

「ふむ、だが脅威は裏を返し従えれば強力な力となる。もし魔物であれば従魔、人種であるならば奴隷にすれば帝国の利になるであろう」


その言葉に慎重な第一皇女は

「...危険ではないでしょうか、一国を滅ぼす可能性のある個体に干渉など」

「はっ!そんなヘタレてどうするんだ?帝国は力を持って従えてきた国だ。ならば大罪如き従えて当然だろ!」

第一皇女の言葉を聞き、戦闘欲旺盛に発言する第二皇子。


その言葉を聞き皇帝は

「よし、大罪の存在である怠惰と嫉妬の権能を持つ生物を御せよ。卸した者には次期皇帝の座をくれてやろう」


その言葉を聞き、三人の子ども達の目が光る。


こうしてとある帝国は捕獲し、利用する…そんな武力行使な道を進むのであった。

そしてこの時の宰相はこう思っていた。


(もし大罪を見つけた、干渉したと言う報告が来たら亡命しよう…)知識豊富が故に弱気な宰相は大罪に絡む事を凶として判断したのであった。


???side

とある教会の理の間、そこで祈っている1人の若き女性が顔をニヤケさせた。


「クフッ、フフフフ…!」


「あぁ、大罪である怠惰と嫉妬の同時発現。これぞ世界の思し召し、同時発現ならばそれはきっと同一個体での保有…!素晴らしい!正に神の使徒!我らが教団の王に相応しい!」


そうして目に軽く狂気を宿しながら理の間を出て、すぐそこに居た教団員へと告げる。


「大罪である怠惰様と嫉妬様が同時顕現されたわ」

「なんと!それは我らが教団を是非とも導いてほしいですな」


そう言いながらそこに居た教団員の目は喜色に染まる。


「えぇ、ですから全教団員に通告を。『怠惰様と嫉妬様が同時顕現なされた。各自出来る限りの捜索をし、決して害さず我等を導いてくれる様にお願いなさい』とね。」

「了解しました、即座に通告してきます」


そして女性は理の間を再び見て目を狂気に満たす。


(あぁ、私の聖女の魂が疼いています…大罪権能の持ち主は魂の称号持ちなのでしょう。必ず探し出し、会いに行かせてもらいます、使徒様)


そうここは大罪教の本部、大神殿。

その一室で大罪に惹かれたまだ少女と言える女性は想いを馳せるのであった。


【とある穏やかな盆地】

白龍side


美しくも威厳のある龍の姿がそこにあったがその表情や感情を表すオーラは少し悲哀が混じっていた。


(結局、最後の1匹の我が子は孵りませんでしたね...他の子達とは違う、灰色の卵…だけど間違いなく私の子)


そうこれは怠惰ノ幼龍となった主人公のその母龍であった。


(もしも孵った時のために食べ物だけは置いておきましたが…もし孵っているのであればごめんなさい)


そう思いながらも白龍は元いた森の方へと目を向ける。


(しかしあの森は年々魔力が上がっていってる…きっとこれからは子供達にとっては厳しい過酷な地になるでしょう…流石の私とて、そこで育児など出来る気がしません)


この世界には空気中に魔力が漂っており、その濃度によって魔物の強さや種類が変わってくる。


(しかもこの盆地と昔の巣ではあまりにも遠い…灰色の卵の子だけを優先する訳にはいきません、他の我が子達も大事なのですから)


そう思いながらもまだ罪悪感を感じながら過ごす日々。そこへとあるレッサードラゴンがやってくる。

『ママー狩りに行きたい!』


(あぁ、もうそんな時間なのね…元気出さなきゃ、子ども達の前で暗い顔おしてはダメだわ)

『分かったわ、それじゃあ今日はホーンラビットでも狩りに行きましょうか』


そうして白龍は1匹、大罪の龍となった灰色の子の事を頭の片隅に残しながら、狩りの監督役として動くのであった。


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所々の用語説明


【大罪の権能】

魔法や通常のスキルとは格の違う能力。

最大レベルの最高練度で使用すると理にすら干渉するのではと言い伝えられている。


【王者の魂】

付属する能力の判明している物は一つは「厳命」

基本的に下の者を従えてこそ発揮する能力が多い魂系の称号。

今代王者はとある王国の国王。


【聖女の魂】

付属する能力は不明。

しかし系統はサポート系、回復に能力補助、魔力の受け渡しなどが挙げられる。

今代聖女は大罪教に魅せられた1人の少女。


【大罪教】

様々な国から逆賊、もしくは異教徒など取り締まり対象にされており、割りと肩身の狭い思いをしている。

しかし展開地域はほぼ全国に渡り、教団員も一国の人口を上回ると言われている。

大罪教の言い分は『大罪は人の本質である。故に人に本質を授けた大罪様は神の1柱である』

異教徒扱いながらも4大宗教の一つである。

他の4大宗教は創神教・四神教・魔神教である。

それぞれ人間族・亜人族・魔人族が教徒に多い。


【白龍】

主人公の血縁上の母。

世界最強の一角であり、二つ名は聖銀龍。

森の魔力濃度の増加に伴い、仕方なく森を去る決意をした。

灰色の子こと主人公の孵化を待ちながら子供達の輸送をしていたが、流石に他の子をこれ以上待たせれず罪悪感を強く感じながら新天地へと旅立った。

いつか主人公と合うことがあるかもしれない。

ちなみに一話にて目があったとされるがあれは最後の確認であり、その時主人公は孵っていたが主人公が灰色の身体をしているのと、他の卵に比べて小さく、卵と完全に色合いが一致していて孵化したのに気づいていなかった。

ちなみに主人公が驚いて一切動いてなかったのも気付かなかった要因である。

ちなみに卵のまま移動させなかったのは龍の卵は割りと脆く、更に最強の一角である白龍では触れると中の子を殺してしまう可能性があったから。卵の温めは魔法でやっていた。

現状主人公と敵対させる気は無い。

作中1番のお気に入り龍。白龍っていいよね、属性は聖・氷・水・風を現在予定している。

ちなみに手加減は苦手、狩りの手伝いの時に子供に危機が迫って手助けした時に勢い余って地面を陥没させた。

さらに独身龍である。子供欲しさに魔法で自身で精子を作り子を産んだ。

分類はメスである。求婚する龍は後を絶えない(龍の個体数は少ない筈なのに)

人化も可、人化した姿は美人である。

作者が思い描く姿は陰実の559番の病みと狂信者属性が取れている感じ。


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あとがきと言う名の作者の一言


…白龍の説明長ない?

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