第12話 遭遇
再び『ミミック』を撃破したことで、『超衝撃吸収エアバッグ』をもう1枚入手した。
同学年が入手したばかりの★3モンスターとは訳が違う、きちんとダンジョン産の★3モンスターを倒して得られる経験値は決して低くない。
「なんだか、身軽になった気がするな」
恐らくボク自身のレベルも上がっているのだろう。
お目当てのカードが手に入ったので、さっさと『三つ穴の祠』を出ると、アナウンスが表示された。
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>初心者限定ステージ『三つ穴の祠』が初回踏破されました
>MVPが計測されます・・・
>入場者1名
>ユーザー『四辻聖夜』に初回踏破報酬『カードデッキEX』が進呈されます
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ステージ初回踏破……確かにそういったシステムは『サモテン』にも存在した。
しかし、まさかここがまだ未攻略だったことは意外だった。
『カードデッキEX★★★★』
永続型のアイテムカード……思わぬ収穫だ。
このアイテムは所持できるアイテムカードの枚数を大幅に増やし、重量を無視できる。
まさかこんなに早く入手できるとは……棚から牡丹餅だ。
「って、喜んでる場合じゃないな」
今から地上へ戻るのに、時間は充分余っている。
2組の生徒達が利用したダンジョンの入り口から出ればいいのだから。
しかし、あまり目立っていいことはない。
入って来たところまで、戻った方がいい。
できれば、1組の皆が散策しているであろうあちら側の2層を少し見ておくのもいいだろう。
そう考え、ボクは足早に戻ることにした。
レベルが上がったお陰か、スタミナに余裕が出てくる。
ランニングする感覚で、走りだした。
段々と、1層と2層クラスのモンスター相手に手応えを感じなくなってくる
とはいえ、ここ当たりで調子に乗ると、痛い目を見るのがダンジョンだ。
まだこの身体に完全に慣れた訳じゃない。
ゴブリンやコボルト相手でなければ得られない経験もあるだろう。
ボクは油断せず、撃破数を重ねていた。
そうしている内に、1組の連中のうち何人かとすれ違う。
昨日のことで、ボクは怖がられているみたいで、声をかけて来る奴はいない。
ボクもまたクラスメイトの連中に構わず、近場にあった階段を使って、2層へと降りる。
そして、今度はモンスターカードを呼び出してみた。
『ウォーターフロッグ★★』
ボクが生身での戦闘ばかりしたところで、浮いてしまうだけだ。
きちんとモンスターカードを使って戦う姿もアピールしておいた方がいいだろう。
★2ではスキルを持たない為、ウォーターフロッグは攻撃してきた敵にやり返す形で攻撃を繰り出す……受け身の戦法だ。
ハッキリ言って、効率が悪い。
それでも、放置していれば勝手に戦ってくれるのだから、暇つぶしに眺めるのも、悪くない。
という感じでモンスターを計30体程度撃破した頃だろうか。
1組で名前を憶えている連中と鉢合わせた。
「あ、お前マジでソロなのかよ、正気か?」
一ノ瀬壱郎が揶揄うように、そう言った。
彼と一緒にいるのは確か……君塚澪と、慈雨奏。
★3以上のモンスターカードを持つ者3人が結託して動いているようだ。
「正気だが」
「まっ、死にたがりに何言っても無駄か」
「ちょっと一ノ瀬くん……あまり煽るようなこと言わないで」
君塚澪が一ノ瀬を諭すが、彼の態度が変わる様子は見えない。
昨日のことがあっても、まだ自分の方が格上だと信じて疑わない態度。
どこからそんな自信が生まれてくるのか不思議だが、わざわざ訊くようなことでもないだろう。
「煽っちゃいねーけどよ。教室内で四辻が暴れたこと、俺は忘れてないからな……?」
終わった話を掘り返すなよ。
ボクのことが気に喰わないのはわかるが、どの道クラス内で上手くやるのは一ノ瀬の方だろう。
あまり構われたくないな
「……気分悪くなった。今日はもう寮に帰るから、君塚……先生にもそう伝えておいてくれ」
「えっ? えっと――」
「クラスへの貢献として、マナ石も5つ渡す……それでいいよな?」
一ノ瀬の方を見るも、彼は言い返さない。
マナ石は【学内序列】に直結する利益だ。
これで文句は言わせまい。
とりあえず君塚にマナ石を押し付けて、ボクは1層への階段の方向へと足を向ける。
ふと何も言葉をかけてこなかったもう1人のクラスメイト……慈雨奏の隣をすれ違う際、彼女の顔を一瞥した。
――深く絶望している顔していた。
まるで自分の死期を悟るような……そんな顔。
1組の中で、ダンジョンという何が起こるかわからない場所の危険性を最も理解しているのは、彼女なのかもしれない。
そう思いながら、ボクは一人で地上へと戻った。
୨୧┈••┈┈┈┈┈┈┈目録┈┈┈┈┈┈┈••┈୨୧
・『初心者限定ステージ「三つ穴の祠」』
ユーザーレベルが一定以下の時にしか入場できない特殊ステージ。
迷宮学園もまた把握しているものの、過去に謎の死を遂げた生徒がいるという危険性から、存在を公にすることはない。
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