第6話 入学記念カードパック

 ところでボク……四辻聖夜の顔つきは、多分怖いんだと思う。

 いや、顔はカッコいい。

 前世と比べても申し分ないと言える。

 ただ、目つきが怖い……自覚がある。


 これでは人も寄り着いてこない。

 ボクのコミュニケーションはどちらかというと、聞き上手という感じらしいので、こちらから話しかけることはしない。


 というか、慣れ合うつもりもないのだから、ボッチで構わない。


 1年1組では、どうにも既にいくつかのグループが出来上がり始めていた。

 多分、早くに寮へ引っ越した連中が、入学前に仲良くなっていたのだろう。

 クラスは、入学手続きの時点で発表されていたからな。


 クラス内で一番目立つのは、やはり君塚澪。

 学年代表らしい彼女は、あっという間にクラスの中心だった。


「わたくしのことは、入学式で発表した通り。実はあまりわからないことも多いけど、1組代表として、頑張るわ」


 クラスごとに代表を務める生徒がいる。

 1組の場合、それが君塚という訳だ。


 それにしても『実はわからない』か。

 もしかすると、彼女は転生者であることを仄めかしているのかもしれない。

 ……どうでもいいけど。


「俺、一ノ瀬壱郎って言うんだ。よろしくな! 代表さんとは逆で、この世界について知ってることも多いんでよろしくぅ! 」

「何々世界の秘密でも知っちゃった感じ~? おもろ! 私は長瀬菜々花、1年よろしく~」


 君塚を中心に、数人が集まりだした。

 全員が初対面だと、この瞬間が友達の作る最大のチャンスである。

 よって、グループ形成が瞬く間に広がっていく様を見た。


「1年って……まるで来年は別みたいじゃの」

「三枝、学園長の話聞いてた? 来年からは【学内序列】でクラス分けするって言ってたよ。あ、俺は二宮双真ね」

「ええ。みんな、よろしくね」


 それぞれが挨拶する中で、情報を擦り合わせるような言い方をする奴もいれば、わかりやすく転生者っぽいのもいる。

 そんな中――ボクも話しかけられた。


「えっと、あなたは――」

「四辻。ボクには構わないでくれ」


 話しかけてきた君塚澪は、眉を八の字にして困った顔を見せる。

 次いで、小声で話を続けた。


「……そう。じゃあ最後に聞かせてほしいことがあるの」

「なんだ?」

「『千日草』って何処にあるか知ってる?」


 千日草……それはこの世界で1年前にダンジョンから発見された、あらゆる病気をも治すアイテムカード。

 そして貴族なら知っていて当然のこと。


「固定ステージ最深部……10層の何処か。明確な場所は誰も知らないはずだが?」

「うん。ごめんね、変な質問して」


 ……ふう。

 どうやら今の質問……ボクが転生者か試されていたようだ。

 『千日草』の場所は貴族の誰かが情報を秘匿しているという噂もあるので、質問自体はおかしくないが……知らずにいたら危なかった。


 しかしこれで確定した。

 君塚澪は――転生者だ。

 前世の誰なのかはわからないが、これからの学園生活で、転生者同士の戦いに巻き込まれるのはごめんだ。


 続いて、教室内では自己紹介が続く。


「――あ、私……慈雨奏、と言います」


 最後の女子が自己紹介した瞬間――一部の生徒から、どうにも微妙な空気を感じとった。

 しかし、次の瞬間に教室の扉から担任教師が入ってくると、それも立ち消える。


「1組を担当する清原恭二だ。さて早速だが、お前らには『入学記念カードパック』が配布される。1年生はクラスの格付けなんてものがありもしないだなんて言われてはいるが、このパック一つで、大体決まっちまうからな。

 だから――出たカードは秘匿するものいいが、クラスに貢献したい奴は公開することを勧めておくぜ」


 清原先生が話すと同時に、教師補佐の数人が『入学記念カードパック』を配る。


 カードパックは、特殊なジョブに付く一族が、ダンジョンが力を吸い取った結果出来上がった……という設定だ。

 だから誰も中身を知らない。

 ただこのカードパックを独占しようとした国は、悲惨な目にあったという歴史だけが存在する。


 まあ……たかがゲームの設定だし、リアリティなんてものはこちらも求めていない。


「それじゃ、お待ちかね。お前ら初の相棒を引く時だ。ここで、お前らの運命が決まる」


 ボクはあまり期待せず、パックを開けた。


 前世で売られていたトレーディングカードゲームのパックを思い出す。

 最後のカードが最もランクの高いものが入っているとか、重さで中身がわかるとか言われていたっけ。


 けど、『カードパック』の中身はざっと見た感じランクに順番は存在しなかった。


 ★2モンスターカードが2枚に、★2アイテムカードが8枚。

 残念ながら、初の運試しは、大ハズレもいいところだった。

 精々モンスターカードは出たものの、装備カードがないのだから。


 しかし……しかしだ。

 ボクは内心でほくそ笑む。

 これからの計画に必要だと思っていた★2アイテムカードが2枚も余分に手に入ったのは大きい。


「お、おいおい……マジか……! どんな確率引いてんだよ、お前」


 清原先生の驚いた声に、皆の注目が集まった先は、またしても君塚澪だった。

 どうやらボクとは違い、当たりを引いたのだろう。


 そして彼女……君塚は立ち上がり、そのカードを――公表した。













୨୧┈••┈┈┈┈┈┈┈目録┈┈┈┈┈┈┈••┈୨୧


・『排出率:入学記念カードパック編』

 ★5モンスターカード:0.001%

 ★5装備カード:0.004%

 ★5アイテムカード:0.005%

 ★4モンスターカード:0.09%

 ★4装備カード:0.3%

 ★4アイテムカード:0.6%

 ★3モンスターカード:2%

 ★3装備カード:3%

 ★3アイテムカード:4%

 ★2モンスターカード:20%

 ★2装備カード:30%

 ★2アイテムカード:40%


୨୧┈••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••┈୨୧

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