「おれの名前はイッパイアッテナ」

掃除機をかけながら

階段をおりていく

ふと窓を見やると

一匹の真っ黒な子猫が

じっとこちらを見つめている

「見かけない顔だな。どっから来たんだ?」

掃除機を目で追っている

「これがおもしれえのか」

掃除が終わってもまだいる

「なんだおまえ、腹減ってんのか?」

シーチキンを目の前に置くと

おもむろに食べだした

「腹減ってるならニャーとかなんかいえよ…」

黙々と食べている

いつもの場所に横になり

海を眺めた

眠気がやってくる

食べ終わったのか

隣にやってきた

そいつに話しかける

「おまえ…名前は?」

「ぼくははルドルフ。おじさんは?」

「おれか、おれの名前はいっぱいあってな…」

「ふーん…イッパイアッテナっていうんだ。へんな名前だね」

—— 名前じゃねえよ…ま、いっか

ん……

なんだ…もういっちまうのか

また来いよ

   「ルドルフとイッパイアッテナ」より

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