「懐郷」

照りつけるような

暑い日差し

白く聳える入道雲

燃やし尽くすように鳴く蝉

甥と手を繋いで歩いた海岸

風が通り抜けたあとの

森のざわめき

斜め下の山田さん宅から聴こえる

風鈴の音色

束の間の休みにはしゃぐ

近所の子供たちの声

台所の蛇口から一滴

静寂に響く水の音

もう見ることのない

わたしの故郷

もう二度とこの目で

見ることはできないが

瞼を閉じ

おもいを馳せれば

その風景が

なつかしい声が

ありありと浮かんでくる

こころの故郷がある

それさえあれば

これからさき

なにがあろうとも

生きてゆけるような

そんな気がする

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