「帰路」
トラックの荷台で
揺られていた
黄昏に染まる
流れていく街並みを
ただ眺めていた
ドーランが剥げた汚れた顔
泥だらけの戦闘服
埃まみれの89式小銃を小脇に抱え
精も根も尽き果てていた
わたしはいったい
なにをしているのだろう
施設科に行きたかったのだ
人を殺す道具を手に
山の中を走り回りたかった訳ではない
これまでの人生において
己の思い通りになったためしなど
ただの一度もない
小学校の校庭
楽しそうに屯している少年達
あの頃のわたしは
今の自分を想像さえもしていなかった
その中の一人の少年が
ふいに立ち上がり
わたしと目が合った
そしてわたしに対し敬礼をした
立派な敬礼だった
その時わたしは
敬礼を返さなかった
遠ざかっていくその少年を
わたしはただ
じっと見つめていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます