「帰路」

トラックの荷台で

揺られていた

黄昏に染まる

流れていく街並みを

ただ眺めていた

ドーランが剥げた汚れた顔

泥だらけの戦闘服

埃まみれの89式小銃を小脇に抱え

精も根も尽き果てていた

わたしはいったい

なにをしているのだろう

施設科に行きたかったのだ

人を殺す道具を手に

山の中を走り回りたかった訳ではない

これまでの人生において

己の思い通りになったためしなど

ただの一度もない

小学校の校庭

楽しそうに屯している少年達

あの頃のわたしは

今の自分を想像さえもしていなかった

その中の一人の少年が

ふいに立ち上がり

わたしと目が合った

そしてわたしに対し敬礼をした

立派な敬礼だった

その時わたしは

敬礼を返さなかった

遠ざかっていくその少年を

わたしはただ

じっと見つめていた

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