「父」
どのような人かと聞かれれば
己にも、家族にも、他人にも厳しく
己以外、全て他人なのではないかと
おもわせるほどの
時に冷たさがあり
それゆえに
誤解も招きやすく
自分のやりたいことがある時は
すっといなくなり
それゆえに
家族から反感を買うこともあり
気にいらないことや
納得のいかないことには
一切妥協せず
自分が無駄だとおもうものには
金銭をつかうことを許さず
誰になんと言われようとも
ひとり曠野を行くがごとく
生きていくあの人のことを
こころよくおもわない人達がいることも
わたしは知っている
わたしがまだ幼い自分に一度だけ
父の仕事についていったことがある
車に電気部品を積み
県外をまわる卸売である
郡上八幡、飛騨高山から
舞鶴、丹後半島へ
孤独な仕事である
行く先々の店で
様々な人々と会話し
笑顔で頭をさげている
わたしの知らない父の姿をみた
夜はタタミ四畳の
障子はやぶれ
クモの巣の張った
川沿いにあるカビ臭い宿で
二人で眠った
あの人のことを
悪く言っていいのは
わたしたち家族のために
必死に生きる
その汗を
その背中を
見たことのある人間だけである
わたしだけである
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます