ゴブリンのエルフブリーダー

ぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺしぺし

第1話「売られたエルフの女」

 私の名前はララ。魔界にある、とある森の中で暮らしているエルフだ。

 今日は私の成人の日、晴れて一人前のエルフとして、集落の仲間の一員となる日だ。


「じゃあ、ララ。私は用事があるから留守番をお願いするわね」

「うん!今日は私の成人の儀式があるんだから、早く帰ってきてよね!」


 そう言ってママは出て行った。用事とは何のことだろう?今日は私にとっての大事な日だ。早く帰ってきて、立派になった私を見てほしいものだ。





 しばらくして、ママが戻ってきた。そんなに時間も経っていないけど、たいした用事でもなかったのだろう。


「おかえり、ママ……」


 私に向けられた冷たい視線。今まで見たこともない冷めた顔のママが、私を見下ろしていた。

 そして、ママの後ろから私を覗く緑色の矮小な身体が一つ、私を見ていた。ゴブリンだ。


「ゴブリン…?どういう事……?」


 頭の中が真っ白になる。どういう事か理解ができない。どうしてゴブリンが私のお家に……?っていうか、どうしてママとゴブリンが一緒に……?どうしてゴブリンなんかがエルフの集落に入ってきてるの……?


「ヘヘ、コイツがそのエルフカ?」

「そうよ。さ、早く連れて行ってちょうだい」

「ヘヘヘ、イわれなくても。さあ、オマエ、ハヤくコイ!!!」

「え!?なに!!?いや!!!ママ!!!」


 ゴブリンがおもむろに私の腕をつかむ。必死になって助けを請おうとママの顔を見た時、私の思考は固まった。


「ママ……?」


 ひどく冷たい目をしていた。まるで汚物でも見るかのような、ひどく冷たい眼だった。


「オマエはウられたんダ。クルミイッコ分のネダンでナ。オレにとってはケッシテヤスくはないカイモノだったが、トモカク、オマエはイマからオレのモノダ!」

「そんな……!いや!!!ママぁ!!!助けてえ!!!」

「………」


 ゴブリンに無理やり家から連れ出される。怖くて必死に抵抗するけど、その様子をママは黙ったままじっと見ていた。

 私は売られた……。けど、どうして……?どうして私は売られたの……?しかもクルミ一つ分って……。何か悪い事でもしたって言うの……?


「イヤだ!!!放してっ!!!誰か……!!!誰か助けてよお!!!ママぁ!!!」


 私の声が村の中に空しく木霊する。集落のヒト達も物珍しそうにぼーっと私たちの様子を見ているだけだ。


「そんな……!どうして私が……!うっ……うぅぅぅぅ……!」


 ゴブリンに引きずられながら、私は集落から連れ去られていった。私は、ゴブリンに売られたのだ。

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