頑張って名前を聞く日々

「ほら、これまたたびの木だよ。名前は何て言うの?」

「またたびの木。そんなの食べないわよ」


「これ、ネズミのおもちゃあげるから名前を教えて」

「そんな汚いおもちゃいらないわよ」


「これ、カリカリを持ってきたんだ。今から開けるから」

「どこのカリカリよ。私は、フランスのしか食べないわ」



何度も何度も足を運んで、ようやく名前が聞けたのは、1ヶ月前の出来事。


ようやくだ。

名前を聞くのに一年もかかった。



「こんなに冷たくされてるのに嫌じゃないのあんた」

「あんたじゃないよ。ショコラだよ」

「ショコラ、変わってるわね」

「君の名前何て言うの?」

「私の名前は、パールよ」

「パールかいい名前だね。どこに住んでるの?」

「この近くよ」


名前を聞いたら、恋は急展開するものだ。

僕とパールは、それから一緒にいるようになり……。

隣にくっついて座れるようにもなった。


そして、僕は告白した。


「パール好きだ!僕と付き合ってくれ」

「無理よ」

「どうして?」

「ショコラの飼い主が私の飼い主を振ったからよ」

「えっ?お母さんにはお父さんがいるよ!」

「お母さん?違うわよ。もう一人いるじゃない」

「まさか、陽一?」

「そう。そいつ」

「陽一は、僕の飼い主じゃないよ」

「一緒の家に住んでるんだから飼い主でしょ。私の飼い主を泣かせて傷つけたのよ。許せないわ!さよなら」


パールは、怒って帰ってしまう。

陽一!!!

お前は、僕の恋を邪魔しやがって

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