第3話 佐藤ミライに人格が増えた。

 朝の会では担任の先生がひとりひとりに成績表を渡す時間となった。いわゆるテスト結果ってやつだ。そしてそこには点数だけではなくて各教科の順位、そして5教科合計の順位も載っている。『一位ですよね多分。』と3教科100点を取ってくれたカルシファーが言う。『多分な。』

 「佐藤ミライ。」名前を呼ぶ先生の声。先生の顔は目を細め渋い顔でミライを見ている。立ち上がり教卓の前へ向かった。

みんなは何位だったとか話していたが、ミライが前に行くと教室内は静寂に包まれた。「ミライ。今回も一位だおめでとう。」とミライにしか聞かせる気がなかった先生の声はクラスメイトが作り出した静寂によってクリアに教室中に響いた。「だが前回は全部100点だったが、今回はどうしたんだ?」ミライは澄んだ顔で「何かあったんでしょうね。」といった。『ありがとなカルシファー。』『はい!手伝えて光栄です!』

 

 

 

 学校の中ではあまり話しかけてこないでくれとは伝えたもののカルシファーはたまに話しかけてきた。ミライはそれにのって休み時間は周りから見るとぼーっとして座っているいるだけだがミライはカルシファーと会話していた。『思ったんだがカルシファーってなんで今まで黙ってたんだ?』

『あぁずっといたのにってことですか?』『そう。』

『えーとまあなんでしょう自分で気づいて欲しかったんですよ。だって自分から出てきて色々言われたら頭おかしくなるじゃないですか。』別に自分で気づいてもおかしくなると思うけどな。『う、うん…まあそうだな。全然僕が気づかないからいいタイミングだったし出てきたってわけか…でもさ結果として僕を倒れさせてるじゃん。』

『そうですね。申し訳ないです。』『反省はしてるんだね。別にいいけど。面白いし。』『そうですか…』

 

 

 

 昼休み、走ってミライのクラスに突撃してきたのは学年同率一位のカルマだった。「おいミライ!一位だったな!」「結局喜んでんじゃねーか。」カルマの顔は絵に描いたような笑顔でミライに微笑んでいる。「そうだね。やっぱ嬉しい。でも同率一位ー。」そういうカルマの声は垂れ下がっていた。「次は勝ってくれよ!?負ける気ないけど。」カルマはそれを聞くとさっきの笑顔はどこかに投げ捨てられた。


「悪い。嫌だったか?」「いや違う。もちろん勝ちたい。でも転校が決まってさ。」

突然の出来事にミライは固まってしまう。

「えそれって今どうこうって話じゃないよな?」現実から目を逸らし、ミライはどんどん逆の方向に気持ちが向いていった。

「もうすぐだ。」カルマもいうのが辛そうだ。「え。どこに?」「お父さんがいるところ。」「なんで?」立て続けに聞いた。そうでもしないと悲しくてしかたなかったから。

「んーと、お母さんも職場変わるらしくてたまたまお父さんと近い場所で一緒に住めるようになったから。」カルマの両親はお父さんが単身赴任しているためお母さんと別々だった。昔のように3人で暮らしたいというおもいを前からカルマは訴えておりミライが止める筋合いなどなかった。「そっか…」ミライはそう呟くことしかできなかった。

 

 

 ミライはフラフラしながら家に帰り、「ただいま。」と声を細くしていった。「おかえり。」と少し心配するお母さんの返事。小学校から仲の良かった、親友が転校するなんて中学一年生のミライには耐えられなかった。『なあカルシファー。僕はどうすればいいんだ?』『そうですね。どうもできないんじゃないですか。』『そうかもな。そうだよなぁ。』ミライはカルシファーが見守っていてくれていることに安心しながらご飯を食べることを忘れそのまま眠った。

 



 一ヶ月後

 

 『ミライさん大変です。』「コケコッコー」ニワトリ目覚ましよりうるさいそれはとてもミライのストレスになっている。

『なんだよカルシファー。起こすなって。』『いや起きるべき時間です。』

『ちょっと早かっただろ?アラームより。』『細かいですね。ていうか!なんか新しい客が来ましたよ。』ミライは周りを見渡す。『違います。何か違和感はないですか。』

『特にないけど。』『私がいるのに違和感がないとはね存在が薄くなったもんだ。』『誰?』

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