第2話 佐藤ミライはカルシファーと仲良くなる。


 『私はあなたの中にいる、人格です。』人格。それを聞いて思いつくのは一つだけ。解離性同一性障害。ミライがそんなに追い込まれていたなんて。

『僕ってそんなストレスたまってましたっけ?というか普通人格とは話せないでしょ。』

『正しく言えば私はあなたを助けるガイドです。でもミライさんが望めば体の権限を誰に持たせるのかも決めれますよ。なので人格と言った方がわかりやすいかなと。』ミライは何かわかったように目を瞑り、変わるようにカルシファーに指示した。するとミライの意識は体の中に入り、カルシファーが見ている景色が見えた。『どうです?変な感じがしませんか?私は久々に体を持ったので変な感じです。』『ひさびさに体を持った?なんですかそれ。』『私は神に作られた存在なんです。それでいろんな人の体に入ってガイドをしてきました。2000年振りぐらいでしょうか人の体に入ったのは。』『なるほど。』


カルシファーはカバンから道具を出して勉強を始めようとする。『勝手に出すなよ』ミライはカルシファーに戻るように指示した。すると体の主導権はミライに戻った。『テストのことは黙っておいてくださいね。』『そうです。そのことを話したかった。』ミライは親に出す手紙を一つにまとめて持っている。

『ちなみに私には無理やり体の主導権を握る権利はありません。なので言えることとしてはミライさんはもともと成績優秀でずっと100点でしたが、いつしかそれがプレッシャーになってテストを受ける時には私と変わるように勝手に指示を出していたんだと思います。』それもそうかもしれない。小学校からテストで順位をつけられて毎回一位だったけどミライはそんなことよりそこから落ちてしまう方が怖かった。二位、三位と。『ただ僕はにげたかったってことでいいんでしょうか。』

『そうかもしれないですね。なのでそのご期待に応えまして全教科100点を取らせていただいてました。』

『余計なお世話だな。もう順位なんて気にしないって思えた日から頼るのはやめて俺は自分でテストを受けていたんだな。』そうなったのはテスト1日目が終わった日だった。カルマの点数が今までで一番よくて焦っていたが、もうそんなことで一喜一憂してたらどうしようもないと考えて次の日の勉強を頑張っていたあの日。



『そんでカルシファーさんはなんで勉強しなくても100点取れるの?』『まあ全知全能に近いですから基本的なことは知っています。』『なるほどねーやっぱテストの時は代わりに受けてほしいなあ。』『聞こえてますよ。』『あやべ。』

 

 


 ミライとカルシファーの冒険はこんなあっさりとした空気で始まった。

「コケコッコー」一度で起きる。布団からでて立ち上がる。『カルシファーいるか?』ミライは即座に確認したくなった。返事がない。「やっぱ夢だよな。昨日のは何かの間違いだ。」『夢だと思ってたんですか!?だからあんなに落ち着いてたのか。』ガイドとは思えない声だ。

「うわぁびっくりー。ほんとにいたのかよ。なんなんだこいつは。」ミライはその調子でリビングへ行こうとする。

『なんか喋りましたか?ちなみに声に出したことは聞こえないですよ。』『そうなんですね。』『あのーテストの時以外経験したことないので代わってもらってもいいですか?』とどうせ断られるだろうと言う態度で言ったがカルシファーは文句言わずに代わってくれた。


『おおーすげー。そのまま学校行ってよカルシファー。』『あぁはい。わかりました。』文句を言ってこないだけで少々嫌そうだ。

 カルシファーが朝食を食べ、準備をし家を出る。「行ってきまーす。」「はーい。」お母さんの声。『僕はいっつも言わないですよ。そんなの。』『いや言った方がいいです。挨拶は大事ですよ。』長年生きていてのご意見だ。素直に聞いた方がよさそう。


『ところでさカルシファーはいつから俺の中にいたの?』

『えーと、言いづらいですが生まれた時からです。』

『じゃあ僕がしてたこと全部見てたって言うのか?』『まあそうなりますね。』賑やかな街を歩きながらカルシファーはいう。

『うわーすごいやだな。』『ごめんなさい。』『恥ずかしいことしてるかもしれんじゃん?』『それで言いますと、、』『いや言う必要ないから。』『ああそっか。』


『というか反応薄くないですか?』カルシファーの綺麗な声が聞こえる。なんのことだろう。恥ずかしいことを見られてのことに対することか?『なんのこと?』『あぁあれです。私がここにいることについてです。普通に考えておかしいじゃないですか。人の中に人の意識があってそれ同士が会話できるって。』『いやおかしいことはないと思うけど。確かに反応が薄いのは自分でもわかってるけどさ、だってどう反応すればいいかわかんないし、そもそも誰が決めたんだ?変だって。』『ええ?おかしいことじゃないってミライさん正気ですか?』

『勝手に入ってきといてそっちがありえないっておかしな話だな。』

『前の宿主に言われたんです。お前は病気だ。おかしいって。さらには排除しようと病院に行って診察を受けたところ異常なし。そんなわけないっておかしくなるのも無理はない。だって明らかに話しかけてきているんだから。』

『だからカルシファーはガイドなのにこの状況がおかしいって言うんだ。変なのー。何かしらの役割があってきているんだろ?だったらそれを達成してさっさとその宿主から抜ければよかったのに。』

『まあそうですね。役割はありますが、それを叶えたことは一度もないです。』『それってどうなるんだ?』


そろそろ学校に着く。また前みたいにカルシファーとの会話とカルマの会話が同時におこなわれて頭がパンクすることはあってはならない。『叱られるだけです。』『誰に?』ど同時に体の主導権を戻した。カルシファーは会話に集中しておりそのことには触れない。

『親です。私を生み出した。』『じゃああんたは失敗作か?』と言い笑った。『うるさいですね!別にいいでしょうが。』『悪いとは言ってないぞー。歩いてくれてサンキュ。』『は…い。』

 

 

 

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