第3話 ワタシ愕然とする。
その後、鹿のような生き物は、スクッと立ち上がると、もう一度、お辞儀をするかのように、大きく頭を前後させると何事も無かったかのように去っていった。
食べられるのかと思って、ちょっとビビったのは内緒だ(笑)
それにしても何だったのだろうか。
自分の姿が確認できたのは収穫だったけれど…えっ、ちょっと待って?まさか、ワタシが自分の正体がわからないって言ったから?
いやいや、まさか、ね?ワタシの意思なんてどうやって伝わるのよ。
それも態々自分の瞳を鏡代わりに見せてくれるとか、どれだけ親切な鹿さんなのよ。
もう行ってしまったから、お礼もできないけど。
君のことはお礼も兼ねて、水晶鹿さんって呼んであげるよ。
木の枝のような立派な角と、水晶のような綺麗なツノ2種類を持った不思議な君。
もうその名を呼ぶことも会うことはないかもしれないけどね。
そんなことを思っていると、ビュッと傍を何かがすごい勢いで通り過ぎた。
思わず振り返ると、何か鳥だった。
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