異世界コント➀ 呪文詠唱
賢者「くっ、まずいぞ。このままだと全滅だ!」
戦士「魔法使いは何してるんだ!?」
勇者「今、精霊を召喚している。俺達で呪文詠唱の時間を稼ぐんだ」
魔法使い「我、求めん 時の鐘 魔の眷属 四十九の柩 無垢なる魂よ
(訳︰精霊募集します 時給49MP、未経験者歓迎)」
賢者「魔法使いはまだか!」
勇者「頑張れ! もう少しだ!」
魔法使い「冥府の馬を駆り 血を喰らえ 和して踊れ
(訳︰交通費支給、賄いあり、アットホームな職場です)」
戦士「呪文詠唱は終わったはずだろ! 精霊が呼びかけに応えてくれないのか?」
勇者「なんでも今の時期は、精霊が期末試験期間に入っているらしい」
戦士「き、きまつ……? なんだそれは?」
勇者「俺にもわからん! だが魔法使いを信じろ!」
魔法使い「えっと、黒王の衣を戴き
(訳︰制服貸与)
……えっと、それから……終末の黄昏に眠り
(訳︰土日が休日)
……あとは……あっ、月一ボーリング大会
(訳︰月に一回、職場の皆でボーリング大会もやってます)」
戦士「もうだめだ!」
勇者「魔法使い! 急いでくれ! これ以上はもたない!」
魔法使い「こうなったら、
魔法使い「――冬の調べを奏でよ!
(訳︰年齢不問)」
勇者「精霊だ! 召喚に成功したんだ!」
賢者「しかも、あれは魔神アグニだ!」
戦士「アグニ?」
賢者「神話の時代に、精霊王に仕えたという十二魔神の一柱だ。伝承によると精霊王の元を去ってから姿を消していたはず。もうかなり昔の話だから、虚無界に還ったものと思われていたのだが、そんな伝説の精霊を呼び出すとは、やはり魔法使いは凄い奴だ」
戦士「しかし、召喚されてから、ずっと煙草吸ってばかりいるぞ」
勇者「火の精霊なんだから、煙草くらい吸うだろ」
戦士「だが、まったく働く気配がない」
賢者「そうか! 経験値が足りなくて魔法使いの器では、アグニを制御しきれないんだ!」
魔法使い「汝に五帝を与えん
(訳︰時給5MPアップ)」
モンスター「ぐわあああぁぁあぁぁあぁ!」
〇
勇者「魔法使いはどうだ?」
賢者「ああ、まだ目覚めん。アグニを召喚した代償はそれだけ大きかったということだろう」
勇者「くそっ、魔法使いには無茶させちまったようだな……」
~魔法使いの精神世界にて~
アグニ「ゴクゴクゴク、ぷはー。かーっ、仕事あがりの一杯は最高やな。このために生きてるようなもんやで!」
魔法使い「お、お疲れ様でした……(訳:早く帰りたい……)」
アグニ「さて、今日一日仕事させてもろてやね、まあワシも、こうみえて若い時には精霊王のもとで十二魔神までやっとったわけやから、やっぱり色々言いたくなってまうんよ。まあ時代が悪くてリストラ――あっ、リストラいうてもあれやで? あんな職場、ワシからあんな辞めてやったようなもんなんやけどな、とにかくワシから言わせてもらうと、ちょっと君らの職場はあかんね。今の言葉でいうたら、ほらアレや。ガバメントいうやつ。それが全然なってないわ。いくら小規模なパーティーやいうても、もうちょっと、おっきな視野で物事見てかなあかん。わかるか?」
魔法使い「はい……はい……はい……(訳︰だから、あの
アグニ「結局な、適材適所ってのは、管理野球じゃなく、ワンフォア・ザ・チームの精神やないとあかんわけや。ドラマで見たことあるやろ? 熱血先生が、こう生徒の頬をばーんって殴って。えっ、観たことない? 今の若い子は知らんのかー。あんな名作も知らんのかー。はーん、そーか、そーか。どうせイケメン俳優が出てきて、恋がどうたらいうドラマばっかり観とるんやろ。今の若いん言うたらな。なっ、そうやろ。――あっ、お姉ちゃん、生中おかわり!」
魔法使い「う、うう……(訳︰そりゃあ、先輩も
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