第25話 何者の仕業

 3人組が手と影を見たというのが、いま来ている技術室だ。俺等は中に入る。カーテンはひとしきりしまっている。見えたのは手と影。


「俺達の影は見えてるの?」


「窓の近くまで来たら見れるかな。遠くにいかれるとぼんやりする」


 梶原がカーテンから顔だけを出して3人組と会話をしている。この仮説が幽霊となれば、どんな結論も幽霊だからで済まされてしまいそうだ。それは勘弁してほしい。つまらないからだ。


「…ということは、遠くに行っても影はわかるのか」


 何かわからないだけで、影の有無は確認できる。ということで良いのだろうか。


 梶原は、俺の言ったことをそのままクラスメートに聞いた。そして梶原は引っ込んできて、窓の下へしゃがんだ。伊沢と千春は、3人組のいる方から見て奥にある、技術準備室を見ている。3人が見えるとしたら俺の影ということになる。


「うん。誰かいるのは見える」


「なら、影はどこにいてもわかるってことだな」

 

「そうみたいだね」


「そっちはどうだ」


 俺は腕を組み振り返る。技術準備室がどこにあるかと言うと、黒板を入口と技術準備室の入口とで挟んでいる形だ。


「誰もいない」


 出てきた二人は困り顔だった。普通の教室程度の広さだ。それを4人で探して誰もいないなんてあるのか。


 俺たちが3階にいた時にあいつらが見た影と手。技術準備室はくるりと回ることで技術室の外に出ることができる。それを利用して俺等をうまく巻いたのか?教室を出て、一応と思って確認しに行ったが、技術棟の鍵も閉められてる……。最後に入った俺は鍵を閉めずに上がった。誰かが中から閉めた……?ということはまだこの中にいる、何かが。


 第一外にあの3人がいる状況だ。外に出ることは不可能。4人の網を掻い潜って上に逃げたか?


 伊沢が技術室からでてきた。


「どないしたん?」


 俺が技術棟の閉められた鍵を指差すと、小さく驚いた。


 信じたくはない。だがあまりにもおかしい。4人だぞ。4人で、探して人がいないことなんて、ありえないだろ。この小さい教室で。俺はたまらずため息が漏れた。


「本当に幽霊かもな…」


 冗談だと半分は思いつつ本気にもなっている。そんな俺を、伊沢は肩を揺らしてふっ飛ばした。


「そんなのあるわけないやない」


 イメージ通り…といえばそうか。伊沢はあまり有等とかを信じるようには思えない。俺も信じてはいないが、こうなっては人間以外を疑わなくてはならない。


「隠れてるのか?」


「隠れてるって?どういうこと?」


「技術準備室の中に人が入れそうな物はないのか?その中にもしかしたらいるのかもしれない」


 しかしそのあと技術準備室を探したが、人が入れそうなだけのスペースはなく、俺らはあえなく撤退することになった。


 その後、全員で2階も探索したのだが、やはり何もいなかった。

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