第24話 第1の目撃

「キャーー!!!!」


 俺らはみんな「なんだ?」という感じでキョロキョロとしだした。これは、女子の叫び声?


「外から?」


「だな」


 梶原が窓の外を確認しに行った。そして窓を開けて下を見る。風が吹いてくるのを感じた。梶原は外にいた人を確認したあと、俺らに振り返った。


「同じクラスの人だ」


 そしてその下にいるクラスメートに向かって梶原は大きく声を出した。


「どうしたの?」


 下の様子が気になったのか、伊沢と千春も席を立って窓を開けて見に行った。俺も2人についていく感じで窓の外を見に向かった。すると下にいた女子の3人組が怯えてしゃがみこんでいた。震えた声でこちらに応答してきた。


「い…今、手が。この窓から手と影が…!!」


 3人とも顔を覆ってしまった。


「手?影?」


 3人組が指差すところを考えるに、技術室だろうか。噂は本当だったのか?3人とも見ていることを考えると幻覚も考え難い。


「君たちはこの棟の噂知ってるの?」


「…噂?……知らない」


 知っていたなら、ただの思い込みとして解決できたのだがな。3人が同時に見ている時点で思い込みという観点はずれる。


「この棟、出るらしいねん、幽霊」


「そんなに大きな声で言って大丈夫なものなのか?」


 俺は梶原に耳打ちをした。


「大丈夫さ。上級生の間では有名だよ」


「お前はなんでそんなに上級生の間のことに長けてるんだ」


「そりゃ!俺は生徒会に入るからね!先輩とも仲良くなっちゃうってこと」


「それも好きな人助けをするためか?」


「ああ。ボランティアもあるみたいだしね」


 正義野郎が。否定はしない。それを否定したら世界は終わる。

  

「ゆ、幽霊?!う…嘘…私達見ちゃったってこと?」


 3人の混乱はさらに大きくなっていく。


「いうべきじゃなかったろ」


「しくじってしもたかな」


 頬をかきながら苦笑いをした伊沢。気まずそうに、視線を3人からそらすように俺に向き直った。しかしよく見るとその顔は苦笑いと言うより笑っていて反省しているようにはみえない。


「今日は梶原が1番だったな。鍵は閉まってたのか?」


「もちろん。だって昨日は全員ででて閉めたところを見てる……」


 確信が消えたとき、人は思慮のために黙り込む。それは今はの梶原にぴったりだ。


「そう言えば今日、鍵借りた時に『ちゃんと戸締まりしてくださいよ』って、湯浅先生に言われた」


「戸締まり?」


「それはおかしいだろう。俺らは金曜」


「そうだろ?もちろん抗議したんだ。でも最後に戸締まりをした時には技術棟は開いてたと言うんだ」


 俺たちが部活を終えて帰ったのは6時前。本来部活は7時まで活動可能だ。だから恐らく教師たちの最終戸締まりは7時半とかだろう。その時に技術棟は開いていた……。


「行けばいいねん。自分ら以外おらんのやったら、誰もおらんはずやろ」


 その誰もいなかったときが怖いんだよ。こいつはアホなのか。


「僕も気になる」


 正直俺も気になってはいるが、行く気にはなれん。信じてはないがおばけは怖い。


「ちょっと確認してみるからー!」


 梶原も行くつもりなのか。ならどのみち連れて行かれるだろうな。

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