第11話 違うあいつ
「矛盾?」
「パンフレットに不備があったと気づいたのは、恐らくこの休み時間だろう。今朝ならまだ、コピーの原稿があればそれに科学技術部を加えてコピーするだけでいい。でもボールペンで書かれているということは、コピーができない場所だったか、コピーする時間がなかったと考えるのが自然だ」
「それで昼休憩だってことね」
確認してきた梶原に俺は頷く。
「昼休憩に気づいたとて、先生はあの人数いるんだ。全員で急いで書けば300人分くらいすぐに書けるだろ」
あの体育館にいた先生は、部活の顧問の先生と、司会の先生のみ。少なくとも30人近い先生がいたはず。部活によっては2人、3人の顧問がある可能性があるからそれ以上だろう。
「ボールペンの数は?足りなかったとか?」
「十分にありえる。ただ気付いた先生がその場にいた全員に、不備を伝えたなら、口頭で紹介するはず」
「わす…」
梶原の言わんとしていることを、俺は遮って続ける。わからなくもないが、ありえないことなのだ。
「30人以上いる先生が全員忘れていたと思うか。高々1時間半だぞ」
「確かにそれは考えづらい」
高梨は手を顎に当てながら下を向いていた。納得してくれているようで何よりだ。
こんなにベラベラと喋っていたが、喋る必要はなかった。今までのは悪魔で補足にすぎない。
「第1ボールペンで、書かれていたんだ。ゴシック体と人の書いた字では、違和感がありすぎる。生徒が気づかない時点でおかしいだろう」
「じゃあ、誰かのいたずら?」
そう考えるのが妥当だ。俺は腕を組んだ。高梨は足元を見ながら考えている。時折誰かにぶつかりそうになって謝る姿が見受けられた。
「紹介されなかったんだから、科学技術部はないってことでいいんだよね。なら生徒のいたずらに違いないよ」
ふたりの中で結論はついたようだ。……ん?俺は人混みの中で、ある人物に目が行った。立ち止まり、パンフレットを開いて見つめる人物。
「生徒が?なんでこんなことをするの」
「そりゃ悪戯心にも火がつくさ。高校生活だもん。それに1年生のこの時期は何をしても罪が軽いからね」
「違う」
「ん?どうしたのつばちゃん」
納得していないのは梶原の顔だ。疑問を持つ顔をしていたのは高梨だった。
「ん、あー。そうだな」
その異質な人物は、人混みに紛れて見えなくなっていった。
「俺と梶原は生徒で一番最初に体育館に入ったんだぞ。生徒がいたずらをする間はない」
先生は既に何人もいたが。
「トイレにでも隠れてたんじゃないの?」
ふてくされた顔だ。なぜそんな顔をするんだろう。
「それは違うよ」
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