第10話 ラクガキサマ
科学技術部という部活が、俺の手元のパンフレットの左ページ下の真ん中には載っている……というより書かれている。ボールペンでだ。
「科学技術部って?」
「だってここに書かれている……」
「ちょっと待って。僕たちのパンフレットに科学技術部なんてないよ?」
どういうことだ?
流石にそう言われると怖いし焦る。
「梶原。1度パンフレットを見せてくれ」
気づかないということは、どちらかのパンフレットはおかしい。奪い取るようにしてパンフレットを取る。そして開く。……
「どういうことだ」
高梨が、心配そうにみている。
俺はパンフレットを梶原に渡した。そして開けたパンフレットを見て一瞬でおかしいとわかったのか、「…!」
と目を見開いた。覗いてみた高梨も以前には気づいたようだ。そうだ。一目見ればわかるおかしさなのだ。
「これが手書きであろうと、全員のパンフレットに書かれていたならおかしいとは思わない」
「どうして」
「単純に印刷ミスで科学技術部が抜けていたってことだろう」
そして俺は強調して「全員のパンフレットに書かれていたならな」と続けた。
俺は手に持っている梶原のパンフレットを指差す。
「梶原と高梨の分だけ書いていないのもおかしいし、例えそうだとしても、周りの反応はおかしい」
2人だけのパンフレットに科学技術部がなかったのなら、他の生徒がざわざわするはずだ。「なんで科学技術部の紹介はないのか」と。それに、梶原は俺の次、すなわち二番目にパンフレットを取った。対して高梨は4番目だ。そんな序盤のパンフレット、書き忘れていたとして確認する手間を惜しんだとでもいうのか。
自分より周りを疑った。俺ではなく、おかしいのは周りだと。俺のパンフレットを見た高梨の反応で確信した。俺のパンフレットはおかしいのだ。
「科学技術部があるのは、俺のパンフレットだけだ」
「ならこういうことじゃない?」
梶原は空に指を指した。
「みんなのパンフレットに科学技術部は実際あった。この部活の量なんだからみんな何が紹介されたか覚えてなかったんだよ。印をつけるペンとかを持っている生徒を持っている人も少ないだろうし。先生のパンフレットにも科学技術部は書き忘れで、載っていなかった。だから紹介されなかったんだ。先生たちのミスってわけ」
俺のパンフレットには、部活動紹介で紹介されなかった、科学技術部が載っている。しかもボールペンで、人によって書かれたものだ。そしてそれは教室で騒ぐ奴のように、悪目立ちだ。ボールペンで……
「納得してないでしょその顔」
また頬を膨らませてきた。
「矛盾があるからな」
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