第8話 部活動紹介①


 「そろそろ行くか」


 少し早すぎるくらいかと思ったが、梶原は右手を突き上げ元気よく


「うん。そうだね。じゃあ行こー!」と言った。


 意気揚々と立ち上がった梶原。本当に同級生かと疑いたくなるくらい子供っぽい。まだ誰も動き出してない教室の中を動くのは少し嫌だったが。


 俺の教室は2階。体育館は階段を降りて職員室を通り過ぎた次の曲がり角を左に。そうすると右に下駄箱が見える。それを横目に進むと外に出る。眼の前の棟は、技術棟だとか。そう聞いた気がする。その棟には入らず入口直前で左に曲がると、体育館が見えてくる。校門を入って左手に見える位置にある。入り口付近には桜の木や、花壇には四季を彩る花が植えてある。花の知識は蓄えていないので名前は知らない。そして中に入ると、受付のごとく置かれた机に部活動紹介のパンフレットがあった。2つにわけて置いてあるあたり、混雑回避が目的だろうか。そして入口のすぐ近くに先生がいた。案内の先生だろうか。パンフレットを1つ取って、自由に座るように促された。


「いっぱいあるんだね」


 梶原がパンフレットを開く。俺も自分のを開くが、パット見てでは数え切れない。見やすいゴシック体で描かれている。デザインや背景には手書きらしさが見える。美術部だろうか。……なんだコレ。


 科学技術部、サッカー部、野球部、バスケ部、陸上部、バレー部、吹奏楽部、軽音部、バドミントン部、卓球部、テニス部、料理部、園芸部、文芸部、剣道部、柔道部、水泳部、囲碁部、将棋部、手芸部、サブカルチャー部、茶道部、箏曲部、生徒会執行部、オカルト研究部、ダンス部、新体操部、美術部、放送部……。


 どういうことだ?


「ハル遅いなあ。もう先来てるって言われたのに」


「ハル…?ああ高梨か。そう言えば高校入ってから見てないが。いつの間に話したんだ」


「あー。ご飯食べてる時にメールしたら、先に体育館に行くって言ってたけど。まだ来てないね」


 あのときスマホを触っていたのはそういうことだったのか。


「なんだ、クラスは同じじゃないのか」


「ハルはE組。隣なんだ」


 へえ。と返す。そして用意されていた敷畳に腰を下ろした。どうやら俺達は一番乗りだったようだ。


 ふと後ろを向く。来た人は、伊沢だった。3人目の客だが、こちらには気づいていないようだ。今まさに体育館に入って来て、パンフレットを取って敷畳に歩いてきている。


 待つこと数分。


「ごめん海斗。トイレ行ってたら遅くなった」


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