episode1-21 スキルポイント②
スキルポイントをどれに振るかというのは大変悩ましいところだが、実を言うと召喚士の場合スキルポイントの使い道はもう一つある。それに使うつもりはないから選択肢から除外していたが、参考までにそちらも見ておくとしよう。
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【Name】
ゼリービーンソルジャーズ・ブラック
【Level】
10
【Class】
召喚獣
【Skill】
闇属性耐性 Lv2
闇渡り Lv1
【Tips】
ゼリービーンズの黒い兵隊。
蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。
お菓子のお姫様に仕えている。
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ゼリービーンソルジャーズのステータス画面のうち、【Member】という項目にあった名前をタップすることで個別の能力を確認することが出来る。
内容はほとんど同じだが、レベルとスキルは個体ごとにバラつきがある。コボルトやゴブリンを倒した数による違いだろう。全員分確認してみたところ、今表示しているブラックだけが七体のゼリービーンソルジャーズの中で唯一レベル10に到達していた。
召喚獣は冒険者と異なり、レベル10になってもスキルポイントは獲得できない。その代わり、一定のレベルに到達することで新たなスキルの獲得、または、既存のスキルのレベルアップ、若しくはその両方が発生する。
この一定のレベルというのは召喚獣によってまちまちで、沢山のスキルを覚える召喚獣も居れば一つしかスキルを覚えないようなタイプもいる。
どうやらゼリービーンソルジャーズはレベル10で新しいスキルが解放され、同時に属性耐性スキルのレベルがあがるらしい。他のゼリービーンソルジャーズは未だ属性耐性スキルのみで、それもLv1のままだ。
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◇闇渡り Lv1 +
闇の中に潜み、半径20m内の闇へ移動することが可能。
移動する闇は地続きである必要はない。
一定範囲内に闇がなくなった場合強制解除される。
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闇渡りか。隠密や暗殺者などのクラスが覚えるスキルだが、効果は一旦置いておく。
スキルの名前とレベルが並んでいて、その右隣に『+』というボタンが表示されているのがわかる。
これをタップすると、またウインドウがポップアップする。
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◇闇渡り Lv1→Lv2 『SP 1』
解放する権能を選択してください。
▶範囲2倍
▶移動速度2倍
▶潜伏対象+1
▶隠密強化
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もう一つのポイントの使い道とは、つまり召喚獣のスキルをレベルアップさせるということだ。
召喚獣は一定のレベルに達することでスキルレベルが勝手に上がるとは言え、それだけでは全ての効果を最大まで強化することは出来ない。特定の召喚獣を限界まで強化しようと考えるのなら、自身の召喚スキルをレベルアップさせる際に召喚獣強化を選び、さらに召喚獣のスキルも個別に強化していく必要がある。
そういう方向で伸ばしていくのも悪いとは思わないが、それをやるならより強い召喚獣にするべきだ。スキルレベル1相当の召喚獣であるゼリービーンソルジャーズは恐らくある程度の段階で頭打ちになる。スキルポイントという限られたリソースをこいつらだけに注ぎ込むのは、あまり賢い選択とは思えない。
それに、召喚獣強化の際にも考えたとおり今のところこいつらの戦力に不安はない。少なくとも今は、この選択肢はなしだ。
ポチポチとウインドウの右上にある×を押して閉じていく中で、ふと思い出す。
そういえばこの『+』のボタン、如月たちの異能にもついてなかったか?
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◇星杖起動 Lv1 +
如月りりの異能「星の杖」を強制起動する。
▽星の杖
星の記憶を読み取り魔法を再現する装置。
使用には星の記憶を書き込んだメモリーカードと、
魔力を蓄えた魔石が必要となる。
【魔力残量】
99/100(m)
【カードスロット】
・Fly(1m/1m)
・StrongFirst(1m/1m)
・Lightning(1/5m)
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……ある。よく考えれば異能にレベル表記があるのもおかしな話だ。スキルやスキルポイントというのものはあくまでも冒険者に紐づいたもので、他の異能に影響を与えられるなんて考えてもみなかった。だからすぐに気づけなかった。
まさか、ホルダーの異能を俺のスキルポイントで強化できるのか?
たしか姫系のクラスは、自分のスキルポイントで配下のスキルレベルを上げられる特性を持っていたはずだ。スキルの強制起動が異能の強制起動に置き換わっていることを考えれば……
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◇星杖起動 Lv1→Lv2 『SP 1』
解放する権能を選択してください。
▶魔力自動回復 1m/1h
▶連続詠唱+1
▶スロット解放+1
▶魔法強化
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マジかよ……。
あり得るのか。こんなことが、あり得て良いのか。
ダンジョンの中で異能を使えるようにするスキルというだけでも前代未聞だというのに、スキルポイントで異能を強化するなんて最早反則だ。万が一この強化が異能強度を上げるほどのものだとしたら……
異能強度。それは個人の持つ異能の出力や影響力を基に決定される強さの指標。
ノーマルの場合は一律に0で、ホルダーは1~10の段階に分かれている。
例えば一般人に毛が生えた程度の弱い異能であれば1となり、逆に単独で大規模な殺戮を行えるような異能は5と、数字が高いほど強力な異能であることを示している。
異能の種類によって異能強度を上げる難易度は違うが、大半のホルダーは5を超えられない。沖嶋のフレームなんかも全ての部位を解放したとしても平均的な異能強度は5だ。
だからこそ戦闘に従事するようなホルダーの多くは異能強度を高める方法をあれこれと模索している。強度5の壁を超えられれば、自身の命を脅かせる者は相当減る。そのために金に糸目をつけない者もいれば、手段を問わない者もいる。
もし俺のスキルポイントで異能強度が上がるほどの強化が見込めるとしたら、一大事だ。俺自身にとっても、人類社会にとっても。
……いや待て、早まるな。ダンジョン内で異能を使えないのと同じように、ダンジョン外では冒険者の力は著しく弱まる。それこそ普通の人間と変わらないほどに。だとすれば、このスキルポイントによる異能の強化はダンジョン内限定という可能性も十分に考えられる。むしろそう考えた方が自然だ。俺のスキルの影響で異能が強化されるのなら、外ではそもそも俺のスキルは機能しないはず。
だとすれば、いやそれでもとんでもないことは確かだが、だとすればまだ常識の範囲内だ。だがそうじゃなかった場合、もしもこれが場所や状況を問わない永久的な強化だった場合、この力はダンジョンというちっぽけな戦場で収まるものじゃなくなるぞ。
……ブレるな。それを考えるのは、今じゃない。
それにどちらにせよこいつらの異能の強化は選択肢に入らない。
繰り返しになるがこいつらとは今だけの協力関係だ。異能の強化を出来るかどうかじゃなく、やるべきかどうかで判断すれば答えは明白だろう。スキルポイントは有限なのだから。
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